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「うだーーーーーー!!!!」
あー、イライライライライライライラ!!
もう、早々にリタイヤしちゃろうかしらー!!
「ほらほら、落ち着け、主殿」
OTL状態の俺に、優しく声を掛けてくれる白蓮さん。
「主殿の我慢が切れるのも、判らなくはないですな」
「其処を、星ねえちゃんが言っちゃうのも、どうかと思うのだ」
したり顔で頷く星さんに、すかさず突っ込む鈴々さん。
「いやいや、確かにアレは私ではあるのだが、それを私に言われても困りますぞ」
確かに、この周回の趙雲さんが原因なので、ここに居る星さんに文句をいうのは筋違いだが……言わずに居れる程には人間出来てないんじゃー!!
「星殿、此方に来て下さいませんかな?」
天幕の中、火を囲み、車座になって座っている中、対面の星さんを手招く。
「何かな? 主殿」
うん、いやね、ちょっと八つ当たりしたいかなと思って。
んなことを考えつつも、表情を固めている俺の傍らに来て、腰を下ろし顔を寄せてくる所を、腕を掴んで乱暴に引き寄せる。
「あん」
バランスを崩しつつも、勢いをそのまま受け入れ、こちらの腕の中に収まる黒衣の柔肌を、力任せに抱き潰すと、胸に潰れる双球と両の手に背から腰への艶かしい曲線を感じる。
「急にどうしたのですかな? 慌てなくとも「すみません。 ちょっと八つ当たりさせて貰いますね」それはどういうこ、ひゃん」
背に回していた手を、ソロリと腰の横手に回し、手のひらを開いてサラリと撫で上げた。
「ちょ、くすぐるのはだめでひゃん」
反射的に跳ねようとする体を抱きしめつつ、腕を交差したまま、指先で背をなぞり上げた。
どうやら相当、くすぐりには弱いと見える。
背中、脇腹を指でさすり上げ、項と耳に息を吹きかける。
面白いように反応する体を、数分堪能しただけで、星さんの体はグッタリと、力を失っていた。
いつもの余裕を見せつつ、チェシャ猫のような、謎めいた笑みを浮かべる表情がアッサリと崩れ、淡い涙を浮かべて、此方を非難するように睨み上げてくる。
うわぁ、ヤバイくらいに可愛い。
拗ねて油断してる所を、最後に一撫でしたら、おこりのように身を震わせて、果ててしまったらしく、ガチ泣きして「このような使われ方は不本意ですぞ!!」と説教された。
慌てて平謝りすると「判って頂ければ宜しい。 この身を使って頂くのは結構。 ただし、片手間の戯れに慰み泣かされるのはたまったものではありませぬ。 使い手たるもの、道具に対する礼儀というものがあるのです!!」と、まあ、何処を突っ込んだらいいのか判らない超理論を、こんこんと述べられた。
ようは、抱くなら抱け、ただし面白半分ではなく、ちゃんと気持ちを入れろということだろうか?
これを、女心といって良いのか、激しく悩むが、女心は難しいといっておこう。
という事を、やっていると、天幕の外が騒がしい。
何事かと様子を見に立ち上がろうとした所で、無遠慮に布を引き上げ、夜気を放り込んできながら、ここ最近のイライラの原因がやってきた。
「満腹殿!! 賊の連中の根城を突き止めたとの報告が、やって参りましたぞ!!」
おいおい、まだ次に行く気かよ。
ぶっちゃけた話、この一月ほど、遠征を続けている。
当初、この部隊の合流に不本意を唱え、此方に対して敵意に近い物まで撒き散らしていた趙雲さんだが、此処に至って満面の笑みを浮かべて、此方の名を呼んでくる。
一体何が起こったかというと。
補給>俺が面倒を見る。
指揮>俺が面倒を見る。
情報>俺が面倒を見る。
つまり、一人で部隊を率いていた、趙雲さんの面倒が、ほぼ完全にフリーと化した(まあ、今までも面倒の多くは、副官の人でも立てていたんだろうが)
しかも、将の数が増えたので、無茶してもフォローが入る。
やらかしても、責任は俺持ち。
つまり、思う存分バトルジャンキーというか、ウォーモンガーというか、やっていられる訳だ(敵さんの歯応えについては、色々と言いたい事があるようだが)
お陰で、アッと言う間にご機嫌度は急上昇。
満腹殿、満腹殿とばかりにやってくる。
それはいいんだが……!!
いい加減戻りたい。
遼西郡の周囲から雑魚い連中が居なくなり、大きめの賊集団を求めてこっち、冀州が目の前、并州もそう遠くないとこまで来るとか、どういう事だよ。
南郷さんとも連絡をとっては居るが、こんな州境まで来るはずもなく(おまけに攻略対象をかっさらって、連れ回しているように見えるので、色々と言葉が痛い)
郡を越える度に、賂やら寄付やら袖の下やらで、役人だの偉いさんだのに鼻薬を嗅がせつつ、賊の情報を聞いては潰し、違う土地への繰り返し。
本気で、風呂に入りたいし、先程のくすぐりの一件もそうだが、ぶっちゃけた話、欲求不満がたまってる。
ついこの間、お猿さん状態から脱したばかりで、いきなり禁欲生活とか、出来るわけ無いじゃん。
いや、何度か気分が盛り上がって、そういう事になりそうになったよ!!
でもな!! その度に、今みたいに割り込んできやがるんだよ!!
本気で殺意が湧いてくるんですが……。
因みに、白蓮さん、鈴々さん、星さんの三人は、チョイチョイでも触れ合うことで、ある程度満たされてるそうですが……俺にとっては蛇の生殺しですよ!!
丘力居さんは、外の土地だと面倒だからと、居残り決め込むし。
「満腹殿!!」
「あ、ああ、すみません。
少々疲れが出ているようでして。
それよりも、賊の根城を突き止めたと?」
「ええ、その通りです。
その数も4000を越えるとの事、いやあ、腕が鳴りますな」
ちょっとまてい!!
倍越えるような相手と正面から殴りあいとかしたくないわぁ。
しかも、そいつらの根城を突き止めたって、攻め手が少なくてどうするんだ。
本当にどうしたもんだろうなぁ。




