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この際だから、冷たい視線対策をしてみようと思う。
唐突に、何を言ってるのかと思われるだろうが、本気で視線が痛い。
次の周回にも、好き好んで此処に来る事はないと思うが、この先の事を考えるに、行く先が段々と限られていくのは、辛い訳で。
多少の不便はあっても、何とかできないかと考えた訳だ。
まあ、最初にそういう事を考えたのは、あるアイテムを見つけたのが切欠であるのだが。
そのアイテムとは糸目・チョイ鼻眼鏡・なまずヒゲというラインナップの代物で、説明文には『あなたのエロい視線もマイルドに、ただし胡散臭くなります』とある。
これらを使って、この後来るであろう張飛さんに試してみようと思う。
目と目があった瞬間から氷点下よりは、胡散臭いおっさんと思われつつも、挽回の効くレベルで収まるなら、その方が良い。
ただ、マイナス修正がない相手にも、無駄に胡散臭い印象を与えるのが、デメリットといえばデメリットなんだろうけど。
「どうでしょう?」
「何を考えているのか、読めないが……胡散臭いぞ」
「おっちゃん、006みたいなのだ」
鈴々殿は、なんで張々湖なんて、知ってるんですか。
「なかなか、カッコいいのではありませんか!!」
うん、星殿、あなたの感覚は信じないことにします。
さて、試しに太守殿に、何かしら用事を持って伺ってみますか。
どうやら、太守殿は執務室にいらっしゃるようで。
「太守殿、此方の決済を、お願いしたいのですが」
竹簡木簡を、幾つか抱えて声を掛けてみる。
「うん? 誰かと思えば満腹か。
なんだか印象が変わったな、その方がいいんじゃないか?」
「左様でございますか?」
「ああ。 あ、決済の必要なものは、其処に置いといてくれればいいぞ」
「では、失礼致します」
おお、なんか当たりが柔らかいぞ!!
これはあれか? 印象マイナス90相当の、凄まじくエロい目付の二枚目と、チビ・胴長・短足の印象マイナス30相当の三重苦(合計マイナス90)を比べたときには、三重苦の方は合計でマイナス90には、なってないということか。
俺で云うなれば、エロい目付き-100が緩和されて、エロい目付き-50・胡散臭い-50くらいになっているというべきか。
マイナスのベクトルが違うとでも云うのか、とにかく-100よりは緩和されている!!
単純に言い切ってしまうのは危険とはいえ、少なくともマシにはなっているのは間違いない!!
「となれば、これで行く事にしよう」
「えーと、満腹さんでいいのかな?」
うわあっ!!
「な、な、南郷さんですか」
「そんなにビックリしないでも……って、また凄い事になってるね。
ああ、もしかして006?」
「張々湖は、そんなにメジャーなキャラクターなんですか?
あんなに鼻でかくはありませんし、あれは糸目じゃないですし、メガネも掛けてません。
共通項はナマズひげと太鼓腹と胡散臭い中国人ってだけでしょうがぁ!!
って、げっほ、えっほ!!」
「まあまあ、そんなに息を切らすまで叫ばなくても……」
いや、どうしてもツッコミを入れないと、いけないような気がしたんですよ。
くそう、無駄に息が苦しいわ、こんなとこに拘り入れるなよな。
「それはともかく、なんでまたそんな微妙なアクセサリを?」
「いえ、太守殿の視線が痛いので、何とかならない物かと」
「ははぁ、なるほどね」
でもさ、気にしないのが一番だよ。 とか言われても、キツイんだからしょうがねえじゃん。
とりあえずの劉備さん一行がやって来るまで、時間を潰すにしても、ある程度――黄巾が盛り上がる程度まで――時間がかかる訳だし。
「まあ、似合ってるし、いいのかな」
という、南郷さんの去り際の一言は、それとなく俺の心をえぐりました。
そんなこんなで、多少は緩和された環境の中で、仕事に勤しんでいたんですが。
『金満腹は、趙子龍を補佐とし、賊を討伐すべし』とかな、辞令が出ました……。
「いや、普通に兵力増強してくれればいいですよ。 将の数は足りてますので……」的な事を太守殿に申し上げようと参上したら、先に趙雲さんが居たりして。
「伯珪殿、これはどういう事ですかな?」
ニヤリ笑いも引き吊りつつの、余裕のない趙雲さんの姿。
「これはも何もないだろう? この所の賊は、一群の規模が大きくなっている。
それに対応する為にだな」
「ほほう、私だけでは心許無いと」
「そういう事を言っている訳じゃない」
うわぁ、入りつらいわぁ。
とはいえ、放置もできないしな。
「失礼いたします。
おお、趙将軍もいらっしゃいましたか」
「ああ、満腹か、どうしたんだ?」
なんとなくホッとしたような、太守殿の声。
趙雲さんに困っていたか?
「いえ、今後の方針について、お伺いしたく、まかりこしました次第」
「なんだ、お前も不服とか言い出すんじゃないだろうな?」
苦い顔して、そう睨まなくても。
「とんでもない。
趙将軍にご助力いただけると有れば、万軍の助勢を得たも同然。
むしろ、補佐について頂く相手が私等で良いのかと、気が気ではございません」
「くっ」
趙雲さんは、踵を返し、足音を響かせながら退出していった……こええ。
で、さっきみたいな事を言った上では、やっぱり趙雲さんの助力は遠慮しますなんて、言えませんので、結局は兵を合流させ、2000に足らずという程度の陣容で、賊討伐に励むことに。
とはいえ、近隣の細かい連中は大概狩りつくし、領内の整備はポイント任せにしては、よく治まっている。
こうやって、客観的に見て、やり過ぎ感が半端ない位に。
いや、太守殿の態度の変わり方が半端ないと感じてたが、こんだけやってて、目付き一つで避けられてた方が、おかしいんじゃないかと思えるくらいだ。
そうだよな、こんだけ働く相手だったら、毒になっても使い所を考えるのが普通ってもんだ。
っていうか、考えたからこその、この始末なんだろうなぁ。
そうじゃなきゃ、いくら客将とはいえ、趙雲さんを補佐に回すとか無いわな。
普通なら、趙雲さんを主に置いて、俺をお目付け役に、とかになるだろう。
それがどうしてこうなった……ああ、頑張りすぎたせいで、ご覧の有様だよ。
しかし、これから当分、キツイなぁ。
俺は内政をちまちまやっておくので、あとは任せた。 とかっていうのは……ダメなんだろうなぁ。