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「さて、どうしてこうなっているのでしょうか?」


 あれから「イケナイ事を覚えたばかりのお猿さん」状態で、一月程の時間が経ってしまい、これではいけないと、なんとか立ち直って、本来の攻略に頭が回るようになって来ましたが「時、既に時間切れ」とでも言わんばかりの様子に、先の台詞が漏れてしまいました。


 例えば。


「満腹殿、此方を頼む」


 部隊の装備を受領したという、確認の木札を、こちらに持ってきた趙雲さん。


「あ、承りまし、趙将軍?」


 俺に木札を渡すと、此方をからかいも挑発もなく目を逸らし、そそくさと立去って行く。

 で……。


「満腹、この間の話は、そちらで進めて貰えるか」

「烏丸族との交流により得た、良馬の選別ですが、此方については太守殿にも「任せる」畏まりました」


 普通の人に、蹋頓さんの所との交流を深めて貰おうと、企画・進言してみた献策を、そっくりそのまま、此方に任せると投げ返される。


 こういう事が続き、これはどうも、俺が何かをやらかしてしまったのかと、色々考えてみたが、立場や権限は南郷さんと同じく、仕事した分だけ持ち上げられてるので、仕事上での問題はない筈……だというのに、何だ? この排斥感は。


「そりゃ、色ボケた目で見られ続けりゃ怒るよ。

 満腹さん」

「これは南郷殿、お疲れ様です。 って!? それは一体!?」


 ブツブツ言ってる所を見つかったのか、南郷さんに後ろから話しかけられ、その内容にちょっと固まった。

 色ボケた目って……。


「いやさ、推測での話だから間違ったら悪いけど。

 満腹さん……パートナーで連れて来てるの、白蓮さんで、こっちでなんというか、やっちゃったんじゃない?」

「……」


 そんな直接的な話を振られると、返答に困るんですが。


「単純な話、自分のとこの白蓮さんを連れてきて、イチャイチャしながらで、こっちの白蓮さんに顔を合わせる時、普通の顔ができてると思う?」


 いや、それは……。


「基本的に、付き合いが深くなると、同じ人物って維持が難しくなるんだよ」


 そうなんですか……。


「たとえば、忠誠の質ってのもあるんだけどさ」


 金銭等の報酬による忠誠>利害・目的の一致による忠誠>友情・信頼による一般的な忠誠>愛情・盲信等による、半ば依存的な忠誠ってところでしょうか。


「うん、そんな感じ。

 でさ、ある人物をパートナーとして深い付き合いになると、次の同じ人物に対する視線は、必然的に違う物になるし、そういう視線を向けていると、初対面の相手から、そういう目を向けられる、その周回の人物にも、自分に向けられる筈の視線を他人に奪われる、今隣に居るパートナーにも影響が大きくなる。

 だから、ある程度の付き合い以上になっちゃうと、同じ人物って維持するのは難しいんだよ」


「ゲットするしないに関わらずさ」と、南郷さん。

 確かに。


「よく言われてることでさ、白蓮さんはゲットしやすいって話があるけどさ。

 返して見ると、ゲットしない・出来ない層が多いからでの話でも有ってさ。

 初期の時点で、白蓮さんをパートナーとして、深い付き合いをする率が一番大きい。

 つまり、二人目を得ようとする人数が少ないがゆえに、愛着のない人間にとっては、ライバルが少なく、ゲットしやすいって話なんだよ」


 それは、そう言われて見ると、確かにそういうことか。


「だから実際のところ、俺も、ここの太守殿には、割と突き放された態度されてるんだ」

「私が特に、という訳ではないと?」

「まあ、俺は第一っていう所までは、付き合い深くないからね。

 あー、彼女欲しさに女友達に、手伝って貰っているくらいの感覚が近いかね。

 完全無視とかされてるわけじゃないけど、馴れ馴れしいと思われてると思うよ。

 だから、もしも満腹さんが、パートナーの白蓮さんと、この周回で恋人っぽい事になっちゃったんなら、ここの太守様の視線が一層キツイ物になったとしても、それはドコモおかしくはないよ」


 ぐはぁ。


「一人のキャラクターで維持できる人物の人数なんて、そう多くは無いんだから。

 狙いは絞って、行動するのがいいね。

 あと、パートナーにはキッチリ話をしておかないと、不安要素になって忠誠下がりやすくなるからね」

「ありがとう御座います」

「でもなぁ、普通は最初に身をもって思い知る類の話なんだけどな。

 よっぽど、満腹さんは運が良かったのか、マメにケアするタイプの人なんだね」


 あ、あはははははは。

 い、言えない!! 金にモノを言わせた結果だとか、言えない。


「て、事だけど、満腹さんの役に立てた?」

「充分に。 感謝いたします」


 立ち去る南郷さんに一礼しておいた。

 なるほど判りやすい話だった。

 ……しかし、不味いことでもある。

 付き合いが深い程に、周回で関わる同じ人物との関係に影響が出る。

 パートナーが、女友達レベルの友情というレベルで、周回の同じ人物に、馴れ馴れしいと疎まれるということは、パートナーと関係しちゃったレベルなら「なにコイツ? 変質者!?」とかになるのか?

 なんか、某荀彧さんとなら、通常運転な気もしないでもないが。

 今の暴走状態で、ズブズブの関係になってる、この現状ではどうなるんだ?


 うわー考えたくねー。

 次の周回じゃ、このあたりには近寄らないほうがいいかもしれないな。




「ということが御座いまして」

「もしかして、後悔しているのか?」


 白蓮さんの強い視線。


「いえいえ、全く。

 単に、これからの事を、ご相談させて頂こうかと」


 相談は大切らしいしな。


「どう言うことなのだ?」


 擦り寄ってきた鈴々さんを撫でくりつつ。


「現状、太守殿と趙雲殿に、冷たい視線を頂いておりますが、趙雲殿の場合、丘力居さんの関連で、色々と外聞がありますので、そう目立ってはおりません。

 ですが、この先、劉備殿一行がやってきた際に、恐らく張飛殿に睨まれるのを考えると、劉備さん、関羽さんにも、余り良い影響はなさそうで、この陣営に居るメリットというものが、余り無さそうなのですよ……あと、私の精神衛生的にも」


 腕を組みつつ、ため息一つ。


「それでは、別の陣営に移るということですかな?」


 面白げに星さんがニヤリと。


「いえ、流石にそれは不義理かと思いますし、蹋頓さんや丘力居さんのこともありますので。

 できれば、お二人をゲットした時点でリタイアするのも手かなと」

「なるほど、花廊のお二人は諦めると」

「えーと、そちらも前向きに検討いたします」


 微妙に締まらない答弁だった。




「そして、早速ここに居ると……」

「どうかなさいまして?」


 酌をして貰いながら、曖昧に笑ってごまかす。


「いえ、相変わらず、お美しいなと」

「まあ、相変わらず、お上手ですね」


 さあ、もう一献と、逆の手から盃に酒が注がれる。

 通い始めて、かれこれ二月ほどになるが、やっとこ酒の味が楽しめるようになった。

 まあ、最初はプロの人に云々というつもりで通っていた訳だが、必要なくなったので、普通に料理と酒を愉しむ為に通っている。

 とはいえ、態々この二人を指名しているという事もないのだが。


「最近は、お話にも出なくなりましたが……私どもの事は、もう宜しいのですか?」


 楊氏さんが、ふんわりと笑う。


「いえ、焦らされるのも楽しみかと、そう思えるようになりましてな」


 焦る事もないかと……と盃を干す。


「あらあら、ではこちらが焦らされる事になりますのね」


 ころころと李氏さんが笑う。

 実際の所は、そういう格好のいい事でもなくて、ここの太守さんと趙雲さんを狙うのは無理かと、諦めたせいで余裕ができたと云うか、吹っ切れたと云うか。

 仕事の経験値を優先にしてたりと云うか。

 丘力居さんやら蹋頓さんからの、烏丸族関連の要望や仕事に、ポイント投げまくったり、領内整備にもポイント投げまくったりして成果を増大している。

 また、雑魚部隊だった筈のうちの部隊が、いつの間にか騎馬になってて、800程度の部隊(輜重もくっついた)の癖に、部隊長が、強化白蓮さん、強化星さん、強化鈴々さん、丘力居さん、そしてヤス(伝令)なんていう無駄編成で、賊を狩りまくってたりする。

 ぶっちゃけた話、補佐が白蓮さん(恐らく)と他の将がいて、更に兵力が2000近い南郷さんはともかく、兵力1000程度で将が趙雲さん単独の部隊よりも、小回りの分で戦果を稼いでいる感じだ。

 お陰様で、丘力居さんの機嫌は良いのだけど、この周回の趙雲さんの機嫌は急降下している。

 さらに言えば、丘力居さん=金満腹派閥と思われているようで、不機嫌がこちらに飛んでくる。

 それを見て、丘力居さんは大笑いしていたり……勘弁して欲しい。

 ぐっと、盃を干して天を仰いだ。




「そのお陰で、私に酌をさせて酒を飲めるのですから」


 喜べということでしょうか? 諦めろということでしょうか? 

 というか、どうして、その話を知っているんですか?

 ボヤいていたら、仕事の後に酒家へ連れ込まれてこの場に至ると……。


 クスクスと笑う、その様子は無邪気な子供のようであり、瞳に閃く危険な光は妖艶な女のそれ。

 なんとも不思議な人である。

 丘力居、ネームドのモ武将にしては、個性ありすぎな感のある人だが。


「では、此方を……受け取っては頂けますか?」


 半ば様子見のつもりで、指輪を取り出して見せると。


「受け取るに吝かではありませんけど……一つだけですの?」


 等と仰る。


「そういう事でしたら、構いませんが。 宜しいので?」


 指輪をもうひとつ。


「あら、義理のおやこd「聞こえません聞こえません」は、好みではないのかしら」


 不穏な単語は聴こえない事にしたが、とにかく、蹋頓さんにも、指輪が渡る事になるようだった。


「あらいけない、勘違いしていたわ。 もう二つほど、下さいな」

「おや? どういう事ですかな?」

「こういう事ですわ」


 丘力居さんが手を掲げ、二つほど拍を打つ。

 するりと戸が開き、お姉さん方二人に捕まった蹋頓さんの姿。


「はーなーせー」

「あらあら可愛いわね」


 丘力居さんの言葉通り、いつもの武人然とした姿とは違う、女性らしい……というか、可愛らしい。


「一つお聞かせ頂きたいのですが」

「なにかしら?」

「蹋頓さんって……」

「たしか、十八になったのよね」

「大人びて見えておりましたので、驚きました」

「はーなーせー」


 まだやってるのか。


「落ち着きましたかな?」

「ああ」


 憮然とした様子で盃を干す蹋頓さん。

 なんというか、十八とか聞くと随分印象が違うな。

 日で褪せた黒髪をザンバラに切っていたのも、多少整えることで、シャギーカットにも見え、男性的な太い眉も、華やかな印象を与える物に変わっている。

 傷だらけの大柄な体躯も、こうしてみると女性らしい丸みを充分に備えており、似合わないと感じているのか、黒の巻きスカートのドレープを弄る姿も妙に可愛らしい。

 某楽進さんは、忠犬方向のキャラと良く言われるが、蹋頓さんは野生方向に超進化しちゃった感がある。

 そんな野生の獣っぽいのが、距離感に戸惑いつつも懐いてくる感じなのは、ある意味非常に良いものであるのかもしれない。


「それでは、受け取っていただけるので?」

「ふん、まあいいさ」


 無遠慮に指輪を嵌めてくれる姿が、なんとも言えない。


「そちらの、お二方は?」

「「お受けいたします」」


 艶然と微笑みながら、指輪を嵌めて下さった。


 これで、思いがけず、目標は達成してしまったのだが。

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