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戦闘とか苦手です……OTL
名前の誤用を、修正しました(ご指摘、ありがとう)
変換の勢いで他にも、やらかしてるかもしれない。
お、なんか良い言い訳を思いつきました。
「この中に、一人プレイヤーがおる!!」
「ちがいますよ」「ちゃいます」「ちがいますよう」
「おまえ、名前云うてみぃ!!」
「劉備です」
「お前は?」
「玄徳です」
「お前」
「桃香ちゃんでーっす」
「お前は」
「劉玄徳です」
「じゃあ、お前は?」
「劉備玄徳でございます」
「おまえじゃあああ!!!!」
という事が頻発しないよう、表現に誤用含めて揺らぎを持たせているという……とか。
「どうしてこうなった」
現在、うちの部隊は、廃墟となった村の周りに、空堀を掘ったり、柵を強化したり、まあ色々とやっております。
なんで、そんな事をやっているかといいますと。
討伐軍主力の普通の人が、敵の賊を捕捉して突っ込んでいき、中軍の南郷さんが牽制しつつ、領内から押し出すように敵を動かして処理をしていき、三つの賊集団を片した所で、空いた安全圏スペースに、うちの部隊が入って、襲撃を受けた村々の補修等々行い始めたのですが……最初の村の補修が終わり、次の村への移動中、いきなり騎馬の奇襲を受けて、命からがら近くの廃村に逃げ込みました。
まあ、輜重の粗方を捨てて逃げた御蔭で、時間と命が儲かりましたが、ポイント使って自腹で用意しないと、任務的には失敗か。
それから、数時間……。
「槍兵構え!! 弓兵、引きつけてぇー!! 放て!!」
俺が仕事の無くなった輜重隊の連中を連れて、防御の為の補強工事に集中している間、迎撃の指揮を任せた、白蓮さんの声が通る。
槍兵の前列には鈴々さんが居り、行軍中の飯を目当てに、コッソリと着いてこさせた趙雲さん率いる、私兵の騎馬隊100(普通の人の軍には、まだ料理人の恩恵が無いのです)が、二時間程の遅れで到着した時に、敵の最後尾に一撃くれた後、近くの里山に潜んでいます。
お陰で、前の方は兵数が劣勢にも関わらず盤石、背後は趙雲さんが牽制になって、相手もそれほど積極的でないのも合わせ、敵が回りこんでこない為、工事の手を抜いて前面に集中させる事が出来てます。
「しかし、なんで異民族が……」
そう、なぜか賊連中じゃなく、烏丸の皆さんのお越しです。
ちょいちょい敵が寄せてくる都度、工事に出ている連中を柵の中に引っ込めつつ、蛇のように縦列をたなびかせながら、馬上からの弓を放ってくる、烏丸の皆さんに溜息一つ。
「主殿、溜息は幸せが逃げるっていうぞ」
「白蓮殿、敵は?」
「一旦引いたな。
まあ、あの数が相手なら、ここに篭ってれば負けはないさ」
「あの数だけでしたら良いのですが」
しかし、部隊の装備を強化していたのは、不幸中の幸いというべきか。
いざとなれば、インスタント兵力で、と思っていたが……まさか、拠点が戦闘状態に入ったら、ポイントショップからでも出せないとか、ヘルプをあまり深く読み込んでなかったのが拙かった。
街の酒場やらで義勇兵を募るのは、確かに平時でしか無理とは、チュートリアル時に聞いていたが、ポイントショップにあるインスタント兵力は、他のアイテム同様、場所やタイミング無視だとばかり。
まさか、プレイヤーの拠点(軍の陣幕だったり、防衛する町や村だったり)から、其処が戦闘状態でないタイミングでしか、投入できないとは。
確かに無制限に出せたら、決着つかんもんな。
「もし、敵方に援軍が来るとなると、少々厳しい事になりますな、白蓮殿」
「いや、主殿、その辺が判らないんだ。
あの連中、領内深くに切りこんでくる事はあっても、それは足を止めずに動き続ける戦いをする筈だ。
それなのに、なんで劣勢のうちの部隊に、こうまで拘るんだ?
援軍を待つ? いや、此方は追いつけないんだから、放っといて他所に行けば良いだろ。
万が一、こちらの主力が戻ってきたら、どうするんだ?」
白蓮さんに、首を傾げられた。
確かにその通り。 となると、目的は村を襲ったりではなく、むしろ此方に動いて欲しくないが為の足止め?
此方を足止めする為だけに、わざわざ五百とおまけの兵力相手に、騎馬を千近くも?
更に嫌な方向に読むなら、こちらに援軍はないと考えている?
「実は、これだけの兵力を割いても問題がない。
主力も当分帰ってこれない事態になっている……等というような話は、勘弁して欲しいものですが」
「おっちゃん、お腹すいたのだー」
日が暮れて、流石に今日はもう店仕舞いと、前線の鈴々さんが、ご飯求めてやって来ましたね。
物資購入は、ポイントショップからでも、マイ外史からでも可能でしたので、補給切れは免れるようです。
あちらにプレイヤーが居ないならば、いくら輜重から物資を奪ったにしろ、根気勝負での負けはない。
「と、安心していいのか、何か拙い状態に踏み込んでしまっているのか……」
オニギリを咥えながら悩んでいると、ヨイショと、あぐらの上に収まろうとする張飛さん。
その場所に座られると前が見えませんし、髪の毛がくすぐってくるのですが……むう、甘い香りがする。
背中を支えるようにして、斜めに腰掛させると、頭を肩らへんにコテンともたせかけてくる……あ、汗臭くないかね、俺。
「おっちゃん、鈴々は、動かない方が良いと思うのだ」
こちらを見つめてくる鈴々さんが、俺の口元の米粒じゃなくて、オニギリ摘んで食べてしまう。
いや、食べかけなんで間接キスとか思い浮かんで、気恥ずかしくはあるのですが、それよりも思わずソッチカイと、突っ込んでしまいそうになった。
仕方なく、次のオニギリを手に取りながら、なんで現状維持がいいのかと聞いてみる。
「それはまた、どうして?」
「勘なのだ」
さいでっか。
だから、なぜ食いかけを態々持っていくのか。
「なあ張飛、それは理由になってないぞ」
流石に白蓮さんも呆れているようだが、視線が俺のオニギリを狙っているような気がする。
ぶっちゃけ、料理人が居ないと、何故かある味噌だか醤を塗った野菜に漬物かじりつつ、オニギリ食べる位になってしまう……米好きなので、そんなに不満はないがって、うん、飲みかけのお茶の茶碗を持って行くなよ白蓮さん。
「あいつら、本気でヤル気がないのだ。
だったら、こっちが本気で頑張るだけ、お腹が空いて損なのだ」
俺がオニギリの防御を固めたら、鈴々さんが自分で一口食べたオニギリを、こちらにあーんとかしてくる。
って、あちらさん、本気じゃない?
あ、いただきます。
「あー、確かに連中、牽制しかやってないよなー。
ギリギリまで近づいてきては、適当に弓撃って逃げるしな」
いつの間にか隣に寄ってきていて、やけに赤い顔でさっき持ってった茶碗に、お茶を注ぎ直してこちらに渡してくる白蓮さん。
恥ずかしいならやめてくれよとか、それに酒入ってないだろうなとか思いつつ、昼間の戦闘を思い返す。
結構な臨場感で、戦闘の雰囲気を初めて味わって。
「私としては、かなり恐ろしい思いをしていたのですが……」
「実際、あちらもこちらも損害らしい損害は出てないぞ、主殿」
そういえば、そうか。
まあ、部隊の連中が死んだように見えても、一旦消えるだけで、時間経過と共に最大値まで戻るんだけどな。
敗北条件は士気の崩壊と、将の死亡OR戦闘不能、及び撤退、そんな所だ。
「それでは時間稼ぎに、付き合ってしまうのも手ですが」
少なくとも、俺にとっては、表舞台から転げ落ちるにしても、それほどの損はない。
ただなぁ、普通の人の陣営が、いきなりコケるか傾くと、先が読めなくなるか。
「ここで、名を上げておくのも、悪くはないですな」
翌日、事を起こす事にした。
朝を迎え、兵が陣を組む中、俺は馬に乗って先へ立つ。
妙な気配を醸しだす此方の陣立てに、あちらさんは戸惑うように動きを鈍らせる。
そこへ、知力へ200、魅力へ200の配分で運を消費した、挑発を割り込ませた。
はい、策とかすぐに思い付く訳無いじゃないですか、こんなもんですよ。
「私の名は金満腹、太守殿が将である!!
この度の姑息な盗人働き、些かなりと腹が立つ!!
貴様らに、受け継ぎし勇名を惜しむ誇りがあるのなら、ここに出て私と立ち会え!!」
(意訳:あーオレオレ、金千てんだけどー、今回のなんかセコクねえ? ちょっとOHANASHIしようか?)
運の回復にゴッドヴェイドーな粥をすすりながら、適当に考えた事(意訳)と口から出た言葉の差に、思わず、補正すげーと感心してしまった。
単純計算、120相当の知力魅力で放たれた悪口は、見事に相手を釣ってくれた。
「貴様らぁ!!
追われた羊のように逃げ惑い、怯えて隠れ潜んでいた分際で、よくもそうも大言を!!」
釣ってくれましたが、なんか……モ武将にしては、えらく迫力がありますよ。
こちらに向かってくるにつれ、どんどんと大きくなる人馬の姿、俺よりも一回りとか二回り以上デカイんじゃ!?
「逃げなかったとはいい度胸だ!! 大人、丘力居が配下、この蹋頓が得物のサビにしてくれる!!」
ちょ、ネームド・モブじゃねえか!! しーかーも女性!!
キャラクターが固定された、ユニーク・モブ以下のレアリティを持つキャラクターは、男女の設定が外史ごとに揺れ動く。
しかし、この世界では、基本的に女性が強いという法則の通り、同じネームド・モブであっても、女性である方が強かったりするわけだが。
それが、武勇に優れたキャラクターネームを持っている場合、下手なオリジナルメンバークラスに強かったり、するらしかったり、するわけだがー!!
蹋頓つったら、丘力居の後継者じゃなかったっけ?
なんで、こんな所で雑魚な軍相手に時間潰しをしてるんだ?
つか、もしかして、烏丸の大人が本腰入れて、攻めてきてるってか!!
本気でヤバイ事になってたりするじゃないか!!
「こうなれば、さっさと片付けて、伯珪殿を追うべきですね」
「片付けられるものなら片付けてみろ!!」
騎馬を走らせ間近に迫り、言葉と共に打ち下ろされたのは、棒先に嘴状の引掛け付けた、厳つい鉄杖をぶん回し、共に馬上でありながら、腕一本では収まらない高さの利を使っての、大上段からの叩きつけ。
とっさに、武力へ400入れそうになる所を、すんでの所で200に留め、なんとか脇に剣で弾く。
「小兵にあって、よくぞ受けた」
「これは、流石にキツイですね」
再度の振りかぶり、再び200掛けて弾く。
そして、慌てて痒みに似た痺れの走る手を握り直し、馬を操り間合いを開ける。
二回の打ち合い共に、単純計算120の武力で受け、見事に押されている。
しかも、単純な力任せだからこそ反応できたが、反応できて尚このザマ。
何かしら手を打たなければ、次はペシャンと潰されて終わる。
頭を回そうと、すぐさま粥を啜って回復させ、知力へ400叩き込む。
そしてまた、粥をすすり、空になった竹筒を投げ捨て、感覚の戻ってきた腕で、口元を拭う。
「南郷さんも、こんなのを受けながら、孫策狙いをやってたんでしょうか」
知力ブーストで思考が加速するも、余計な方向で空回りしている気がする。
ああ、そういえば、一撃勝負の賭けをしていたんでしたか……なるほど、一撃勝負。
ぴこーんと、頭にビックリマークが灯る。
馬を回し、向かい合う。
「蹋頓殿!!」
「何だ、小物!!」
小物って、オッサン呼ばわりはともかく、あんたより小さいって意味じゃ、範囲が広すぎるだろうよ。
「ウダウダするのは性に合いません。 この一撃で決めましょう」
「なんだとぅ」
カチンと来たようで。
「良かろう、貴様を乗馬ごと叩き潰し、大地の染みに変えてくれる!!」
「出来るならばお好きに!!
私も貴女を叩き落としたならば、好きにさせて頂きましょう!!」
「やれるものなら!!」
「やって見せます!!」
双方の馬に活が入り、間合いを一気に削っていく。
片や鉄杖を大上段に振りかぶり、方や剣を下段に構える。
共に、得物同士をぶつけることしか、考えていないかのような構え。
「ここだ!! 武力に400!!」
「砕け散れ!!」
振り下ろされる鉄杖、斬り上げる剣。
火花を散らし、ぶち当たった得物が砕け散る音が聞こえた。
支え切れない衝撃に、馬からも落とされたが、まだ生きてはいる。
眩む視界を振り仰ぎ、敵を見定めんとして、視線の先にその姿を見つけた。
「私の勝ちです!!」
近くに見つけた剣を取り、砕けた鉄杖の残骸を蹴り飛ばし、倒れた敵の胸元に剣を。
「殺せ」
動けないらしい、蹋頓の声。
此方の勝ちが見えた瞬間、動きを見せた敵騎馬勢を牽制せんと、颯爽と趙雲隊が割り込んで来、そして村からも気勢を上げて、うちの部隊が飛び出してくる。
将を討ち取られた烏丸の騎馬勢は、迷いの動きを見せたが、士気を保てず敗走していく。
「さて、何とかなったようで」
「くっ」
「自害なぞ、お考えになりませんよう。
勝負に勝った以上は、貴女の身柄は私の預かりとさせて頂きます」
「す、好きにしろ」
涙を浮かべ、屈辱の表情で絶望するとか、どういう風に思われてんだか。
普通なら、縄打ってというか、首輪付けての捕虜扱いなとこなんだけど、そういう雰囲気でもないな。
因みに、首輪にも何種類かあって、逃亡確率下げるだけの見張りが必要な物(500P)、逃亡禁止の見張りが必要ないもの(1000P)、ここまでのものは、拠点に連れて行く必要がある。
更に上位に、逃亡禁止で装着即、拠点へワープ(3000P)てのもあるようだ。
首輪は付けて置く事で、マイ外史に捕虜用の施設がある場合は、リタイア時に移行できる。
が、捕虜からの説得は、かなり困難で、忠誠の維持も難しいとされている。
ただし、攻略が確認されていない相手に対しては、無理くりの手段しか無い為、時たま行われるんだとか。
話が逸れたが、流石に空気読んで、縄は打たずに蹋頓さんを抱え上げ、馬に乗っけて陣地に戻る。
さて、皆が揃った所で、ちょっとは賞賛の声が聞けるかと思ったら……。
「おっちゃん馬鹿なのだ!!」
「自信があるのかと思ってたら、運が良かっただけだろ!!」
「主殿、あれは些か許しがたい。
どうして、私に任せて頂けなかったのか!!」
総ツッコミを受けました。