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ネット情報でなく、プレイヤーからの説明回……南郷さんが普通すぎた。


 あれから数日、商人の張なにがしは、取引を終え、この地を後にした。

 ぶっちゃけた話、ホッとした。


 そして、賊討伐の出立も目前に迫り、各人に名弓だの、名馬だのというアイテムを贈ったり、自分のステータスアップが、まだ甘いものだと認識したので、パラUPを239個追加したり。

 キリの良い所で運を400まで上げました。

 あの商人から聞いた話では、そろそろ能力値のキャップ制限である上限40が、緩和の方向で修正されるかもってことですが、無駄にはならないだろうし、気にしない。

 しかし、24万とか平気で使うようになってきた……バイトの給料が何回飛ぶのやら。


 そういえば気になったのが、南郷さんが、孫策と二合打ち合った後に、吹っ飛ばされたという話。

 200の運を、二回に分けて使ったとしても、基本的に武力は80どまり、どうやって、90オーバー(武器込みで100近いかオーバー?)だろう、孫策の一撃を耐えてたのだろう?

 まあ、相手が手加減してたんじゃない。 と言われれば、それで終わってしまうけど。

 俺がサクっと斬られた時の話、相手が関羽さんで孫策と武力が遜色ないとして、あれが俺に受けられるかという話。

 正直な話、40が80の能力値でも、避ける受けるという事が、俺にできた気がしない。

 もしかすると、その部分が、俗にいう『熟練度』という事なのかもしれない。

 キャラクターの能力というよりも、プレイヤー側の反応だの行動だのの、適応の部分に作用して、劣る能力値でも、しのぐことが出来るようになるのかもしれない。

 となると、其処までの境地は遠いと思えるが。


「こればっかりは地道に続けていくしかないんだろうな」


 なんといっても、半年の差は大きいんだろう。




「さて、本日はお招きに預かり、ありがとうございます」


 今、俺が居るのは、この町の酒場や盛り場を纏めている親分衆の、更に元締めの邸宅。

 先日来より、部隊の連中に、どんちゃん騒ぎをさせてた件で、結構な儲けを出したらしい彼らから、接待を受けている訳ですな。

 ぶっちゃけると、またプレイヤーが絡んでるんじゃないかと、ドキドキしながらやって来たのですが、そういう訳でもないようです。

 とりあえず、こういう生々しい行動をしてくるNPC、半端ないな。

 因みに、普通の人にも話は通しております。

 こういうのも、ある程度は役人の仕事の領分だそうなので、逆に断れなかったりした次第。


「しかし……」

「李氏でございます」「楊氏でございます」


 両脇に、お姉さん置いての、お酌攻勢。

 なんという中華風キャバクラ。

 お見事なまでの接待です。

 余りお高い店に、縁のない俺には、微妙に居心地が悪い。

 バイト先の居酒屋みたいなとこで、皆がワイワイ飲んでるのを脇に見つつ、ちまちまと焼き鳥等をつついてるのが身分相応で、お似合いなのですよ。

 それに、お姉さん方の事なんですが、どう見ても、普通の人とかの方が、美人というカテゴリでは上位(絶対にリアルでは見かけないであろうレベル)なんですが、微妙にリアルに居そうな感じの美人さん(それでも、見かけたら思わず振り返って、呆然と見送ってしまいそうなレベル)のせいで、なんか、先程も言いましたが、生々しく現実感が刺激されて、変にいたたまれなくなる。

 説明しにくいですが、キャラクターとして、プレイヤーとは違うと割り切っている部分が、割りきりにくくなってしまうというのか……なんだかなぁ。

 そのくせ、目の前の親分さんは、きっちりとキャラクター付けされているような風貌なんだよなぁ。

(因みに、二次元作品のダイブシステム用タイトルへの適用における、イメージ補正関連の特許等は、日本が独占してたりしてなかったり。 あと、タイトル内でのスクリーンショットは、ダイブシステム内でしか見れません。 現実で、映像としては見れない)


「それにしても、金千殿は太っ腹ですな。

 配下とはいえ、あの人数に連日の飲めや歌えの大散財とは。

 あやかれました此方としては、これからも末永くお付き合いしたい次第で」


 あはははは、ちょいとやりすぎたとは思ってますよ。


「こちらこそ、お願いいたします。

 そうそう、太守様からも、宜しくとのお言葉を頂いておりますよ」

「それはそれは、勿体無い、お言葉でございます」


 てな事をやっているうちに、なんとか酒の味を楽しめる余裕が出てくると、人物に興味が出てきて、チラチラと目をやってみる。

 眼の前の親分さんは、流石というべきか、統率・武力・政治力・魅力で30を超えており、幾つかは40目前という、下手なプレイヤーよりもステータス高かったり。

 更に言うと、お姉さん方も。

 黒髪ロングの、ちょいとキツメのクール美人である割に、話術が巧みで、思わず杯を重ねさせられてしまう李氏さんは、知力が45の魅力が60近く。

 一見、おっとりしているようで、普通の人の治世の内実を、良く知っていると感じさせられた、明るい茶色でふわふわウェーブでセミロングの楊氏さんは、政治力が45の此方も魅力が60間近という、高スペックで吹いた。

 流石は、街で1、2の妓女らしい。

 というか、一般的なモ武将以外の、こういう一般人の中にも、ステータス持っている人が居るのか。

 普通の人も、こういう辺りから人材を……って、流石の女性が強い、恋姫世界でも、差し障りがあるか。


 なんてことを考えてると、親分さんが変に気を回して来た。


「どうですかな? お気に召されましたのでしたら、お帰りの際に……くーくっくっく」


 お前は黄色いカエルの宇宙人か。

 隣じゃ、お姉さん方が、目を伏せつつ頬を染めながら、流し目で秋波を送って来ているし、コンビネーション良すぎだろう。

 しかし、ぶっちゃけた話、このスペックで(知力・政治の低い方でも、実は35とか有るし)しかも美人とか、むしろ各地方の大きな街を巡って、人材登用の旅に出たいくらいだな。

 ステータスが有る位だから、人材として求める方法もある筈で。

 あーなるほど、商人プレイとかすると、こう云う所から人材集めたりするのか?

 多分、武将との接点って無くなるだろうし、逆に親分衆とかとの接点は増えるだろうしな。

 なんだか、スッキリした所で、率直に聞いて見る事にした。


「お二人を、お預かりするには、どうすれば宜しいので?」


 なんというか、親分さんの、目を白黒させる様が、漫画じみてて此方が驚いた。


「ふむ、ご冗談を仰られているようでも、ない様子。

 ですが本来、妓女の身請けというものは、何度も通いつめ、お互いを知り、他の客も納得する者でなければなりません。

 それが、太守殿の将とはいえ、一見の方に許したとなれば、筋が通りますまい」

「なるほど、そういうものか」

「しかしですな。

 金千殿は、この数日で我らに大きな商いをさせて下さった方だ。

 そう無碍にもできません。

 それに、この二人、年季も開けており、身請け話も幾つか上がってはおりますが、未だ首を縦に振ろうといたしません。

 ですから、もし二人が納得するのであれば、私共も、お話を受けさせて頂きましょう」

「自分で口説けということですな」

「左様で」


 なんというか、こういうイベントになってしまうと、恋姫†無双関係ねえなぁと思わなくもないが「恋姫†無双に興味がなくても、それなりに楽しめる」という部分では、良く出来てるんだろうな。

 とにかく、今日は一旦帰ることにしよう。

 思ったより収穫はあったし、まだ先は長いのだし、焦ることもない。

 先に賊討伐を済ませてからでも良かろう。


「それでは、この辺りで、お暇させて頂きます。

 次は、此方から寄らせて頂きますので」

「お待ちしております」


 お姉さん方も見送ってくれた。


「ああ、言い忘れておりました。

 お二人には、この金千満腹が「お力をお貸し願いたい」と、そう願っております事を、頭の片隅にでも、残しておいて頂けると、ありがたく思います」


 最後の振り向きざまに、そっと視線を向けて、頭を下げつつ、魅力チェックに400消費しておいた。





「これはこれは、錚々たるものじゃないか!!」


 普通の人が、陣列を見やり、満足気な声を上げた。

 そりゃあ、まあ。

 元より最精鋭に当たる主力の騎馬は、公のお金で装備が整えられてるし、中軍の歩兵も、それなりに整っている所から、更に南郷さんが、そこそこの付き合いになると判断したのか、幾らか手を入れているようだし、最後のおまけだった、うちの連中が、袁紹さんとこの親衛隊バリに、ピカピカしてるんだからな!!


「うん、やりすぎだな」

「そうですね」って、南郷さんかっ!?

「いや、中々声を掛け難かったんだけどさ。

 流石に、戦闘前に打合せくらいしておかないと拙いだろうと思ってさ」

「それは、尤もですね。

 といっても、私はまだ小規模な戦闘しか知りませんので、何が重要なのかも把握しておりませんが」


 この間の商人さん相手もだが、知らん事を隠しても、時間の無駄っぽいからな。

 率直に聞けることは聞いておこうか。


「ふーん、なるほど。

 まあ、今回みたいなランダム発生のイベント賊討伐じゃ、悩むことは少ないけどね。

 今の時期じゃ、よっぽどの改変がない限り、武将や勢力が絡む事もないからさ」

「よっぽど、と言うと?」


 何か嫌な事があったのか、南郷さんがため息一つ吐く。


「あー、無法者プレイでポイント貯めた俺が言う事でもないんだけどさ。

 たまたま、知り合い同士のヒャッハー系プレイヤーが、固まってしまった時があってさ。

 黄巾に先んじて、兵力糾合して、世紀末状態で大暴れしたことがあったんだ。

 皆、割合に油断してたから、各々3000くらいの兵力で、プレイヤーに喝入れされた、2万以上の荒くれ者と殴り合うことになって、各個撃破でボコボコにされたよ。

 おかげで各軍閥の力が激減、黄巾も三姉妹に何かあったのか起きなかったし、最後まで漢王朝が残っていたらしいしね、何ルートなんだって話だったそうだよ」


 あれは酷かったな。 と、南郷さんは呟く。


「俺は、何とかかんとか抜けだして、早々にリタイヤしたんだけどね。

 全滅して、保険のお守りも使い果たして、死亡退場になったプレイヤーは悲惨だったね。

 忠誠が下がって、武将の出奔が続出したって話もきいたしね」

「それは酷い」

「つっても、そんな事は、そうはおこらないさ。

 一応油断しないでおく程度でいいよ。

 退却の時期をちゃんと考えていれば、早々全滅なんてしないんだしさ」

「肝に命じます」


 素直に頷く俺を見て南郷さんが首を傾げる。


「やっぱり、なんかアレだね。

 よっぽど演技が上手いのかと思ったけど、補正が効き過ぎてるのかなあぁ。

 プレイヤーっぽさが薄いんだよね、金千さん。

 当たりは付けてたんだけど、確信が持てなくてさ。

 マッコイ爺さんと話してるのを見て、確信したっていうか」


 マッコイ爺さんってだれだよ?


「ああ、胡散臭い商人と話してたっしょ。 あのオッサン。

 名前を変えたりはしてるけど、辺境近くで、品揃えが良くなったりしたら怪しいね。

 うろついてると思った方が良い。 そう害はないけどさ」


 肩をすくめる南郷さん。

 いや、十分以上に害があるでしょ、アレは。


「あっと、話がそれちゃったな。

 今回は、殆ど伯珪さんの騎馬だけで、方がついちゃうと思うよ。

 俺も、こぼれた敵が領内の奥に潜り込まないように牽制する程度のつもりだし、金千さんは村の補修を宜しく」

「お任せ下さい」


「その辺、スラっと中々出て来ないんだけどなぁ。

 金千さんって、サービス業の人だったり?」

「ええ、まあ。 飲食業のバイトは長いですね」

「そうかあ、って、もしかして、結構若いんだ……なんで、そんなアバターに。

 いや、リアルは聞かないけど」


 ふう、と、一泊置いて。


「村の防御度が落ちてるとさ、次の襲撃の時に使える拠点が減っちゃったりして、地味に困るからさ。

 結構重要なんだよ。

 だから、方がついたら、俺も工事に向かうけどさ、俺って政治が低いからなぁ。

 毎回、この陣営じゃ苦労するんだよ」

「そうなんですか?」


 粥やら酒やら呑みまくりの、運使いまくりだよ。 と南郷さんが笑う。


「伯珪さん騎馬だからさ。

 工事するにも、一旦戻ってって話になるしね。

 そこそこ統率の高くて、知力・政治の高い人ってのが居ると、本当に助かるよ」

「期待にはお答えしましょう」


 ははは、と爽やかに南郷さんは笑う。

 最初は中二病をこじらせてるのかと思ったけど、普通に主人公属性だったんだな。


「とりあえずは、劉備陣営がやって来る時期までは、お互い協力でいいかな?」

「そうですな、趙雲さんがやって来るくらい迄は、協力で良いでしょうな」


 ニヤリと笑うと、ニヤリと返された。


「じゃあ、其処からはライバルだな」


 そう言って、南郷さんは自分の部隊へ戻っていった。

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