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Arcana Online 書籍化なんですね。
先が暫く読めないということで、じりじりするやら、まとめて読めるのが待ち遠しいやら。
今回、オッサンばっかりです。
あ、やっとこさ文章量50キロ超えたー。
って、55キロチョイで19話って、平均3キロ行ってねえ、OTL
「ほれほれ、飲め飲め!!」
酒場のお姉ちゃん総動員で、うちの部隊の連中に酒飲ませてます。
あとは装備を何とかする為に、商店で修正値の雑魚い+1やら+3くらいまでの武器防具を買い漁って、部隊の連中にやったりとか。
なぜか部隊に武器防具をやると、全体の武装度が上がります。
アイテムとしては消滅しますが。
店売りのある低位の武器まで、わざわざポイントショップで買う必要もない訳だし、経済の活性には、こっちの方が良いだろう。
そんなとこの影響まで計算されてるかは知らんけど。
で、武具の投入が、おおよそ三十個を超える頃、部隊の武装度は一線級ってとこまで上がった。
後は飲めや歌えで、士気と忠誠度を上げるくらいか。
訓練度は、時間的なもので、限界があるだろう。
一応、槍持ちには鈴々さん、弓持ちは白蓮さんを付けて、せめて「いちにのさん」で、ぶん殴る事が出来るくらいの統制は、なんとか形にしたいが。
それと別で、インスタントな戦力を購入しておくか……戦力の質としては、二流もいいとこだが、今のうちの部隊よりは、随分マシなだけに、いざという時の賊相手には十分だろう。
指揮官も、丁度ヤスが空いてるし、騎兵2000くらいでいいか。
とか何とかやってると、大騒ぎしている部隊の面々を横目に、此方へやってくる人影。
俺の近くで飲み食いしていた鈴々さんが、そっと、その行く先を塞ぐ。
その警戒に慌てたのか、人影は立ち止まり、此方に害意がないことの証明にと、両の手を掲げ、此方へと言葉を放った。
「これは失礼を。 私は張世丙と申す商人でございます。
あなた様を金千将軍とお見受けいたし、お声を掛けさせて頂こうかと思った次第にて、無作法はお許し願いたい」
ん? 演義で劉備さんの旗揚げに援助した商人だっけか?
なんか、微妙に名前が、違う気がしなくもないが、自信ないな。
つか、このゲームじゃ、そんなのが出てくるんだっけか?
恋姫†無双では聞いた事がない。
ここは無難に返しておいた方がいいか。
「これはこれは、ご丁寧な名乗りを頂きまして。
将軍等と呼ばれますと身の細る思いがいたしますが、確かに私が金千でございます」と、一礼。
「……」「……」
微妙な沈黙が流れる。
じっと、お互いを見合う時間が流れ。
「なかなかどうして、手ごわいですな。
しかし、こうして居ても時間の無駄のようですので、先に自己紹介させて頂きましょう。
私はご覧のとおり、商人をロールとしているプレイヤーです。
あなたも、同じくプレイヤーの筈だ……金千殿」
あっさりと断定してくれたな。
「どういうことでしょうかな?」
「どういうこととは?
先にプレイヤーバレを告白したことでしょうか?
それとも貴方の事を、プレイヤーと確信した事でしょうか?」
ニヤニヤしている、このプレイヤー……どう考えても、曲者だ。
何を考えてるんだか、さっぱりだ。
大体、どうしたって、このゲームの知識・経験では、あちらが優位。
下手な考えなんとやら、ここは素直に話を聞いた方が早そうだ。
「両方ですね。
わざわざ、ここに首を突っ込んで来た要件と、私の事を確信したという理由を、教えていただきましょうか」
「素直に過ぎて面白くありませんが……。
あなたがプレイヤーだと確信したのは簡単な話です。
プレイヤー以外が、あんな派手な買い物をする訳がありませんよ。
キャラクターならば、工房から装備の調達をしますからね。
アイテムの装備化などという手段は、プレイヤー以外にはありえません」
く、下らない所から。
「どうしても急ぐのならば、マイ外史からの調達をオススメします」
「肝に銘じます」
「堅いですねぇ。
南郷君ほどに、とは言いませんが、もう少し楽に構えてもいいでしょうに」
はあ、確かにばれてるんだし、それほど気にする必要も無いか。
「南郷 一馬さんですか。
有名な方のようですが、どういった方なんです?」
「私はね、他のプレイヤーの行動を見て楽しむのが趣味でね。
ここに立ち寄るのも、新人の立ち寄る可能性が高いからでね」
「なるほど」
見事に行動が読まれてるな。
「あるとき、私が孫呉の土地でスタートした直後、彼を見かけたんだよ。
いきなり『俺は天のお使いだ!!』と叫んでいるのを見てね。
思わず、掲示板に書き込んだら、随分と流行ってしまったよ」
「あの異名は、あなたのせいですか」
はははと笑うのを見るに、この人に下手な所は見せられない。
「それから暫く、見かけなかったが、噂では世紀末拳王様状態で、ポイント稼ぎをしていたようだね」
ヒャッハープレイか、割り切れる人は羨ましくはあるな。
「その後、また孫呉の土地で『天の御遣い』プレイを始めたようなんだが、その時には随分とステータスを伸ばしていたようだよ。
それこそ、あの孫策と手加減はあったんだろうけど、二合受けて、三合目で吹っ飛んでいたから、150から200くらいまでは、運のステータスを伸ばしていたろうね」
「そういう部分を読めるものなんですか?」
「ああ、運の消費の効果については、凡その見当が経験則から導きだされているよ。
大体、100ポイントで、その能力値の+100%、つまり倍のステータスに伸びた判定を行える。
増減による修正も、比例しているようだね」
ポイント分の上乗せじゃなかったのか……。
「運のステータスですけど、皆そのくらいはあるんでしょうか?」
「最近、始めた人達については、言い切れないけどね、サービス開始から続けているプレイヤーについては、みな100程度までは伸ばしているだろうね。
ポイント稼ぎも文官や、私のような商人プレイをしていれば、2-3周で10000ポイントは出るからね、サービス開始からそろそろ半年、日に三時間くらいプレイしている人なら、150や200ポイントの上乗せがあっても不思議じゃないだろうね。
まあ、キャラクターを複数作る事を考えれば、メインのキャラクターについて、150ポイントステータスに上乗せしているくらいが現在の上限ではないかな?」
その点で行くと、南郷さんは結構なヘビーユーザーなのか。
「それでは、南郷さんって」
「割りとネタキャラ扱いされては居るがね、戦闘系プレイヤーとしては、全体でも指折りの上位だと思うね」
「そうなんですね」
「まあ、そろそろ、能力制限のキャップも外されるんじゃないかって噂もあるからね、今後のことは判らないけどね」
悔しいが参考になる。
「で、南郷さんは、なぜ此方に? 孫家にこだわってたのでは?」
「悲しい事があってね」
ふふふとか、薄く笑ってるじゃねーか。
絶対に悲しい出来事とか思ってねーよこの人。
「南郷くんはね、どうやらお姉さま系のキャラクターが好みなんだよ」
「なるほど、それで孫家と」
「それと、バトルジャンキーっぽいのが多いしね」
「???」
「ああ、孫策、黄蓋、甘寧の攻略にね、殴り合いでの友情って奴を、その突破口にしたのさ」
ほほう、それはなんか、説得力がありそうな気がする。
「実際、割りと良い所まで行ってたね。
孫策相手に、一撃入れたら、付き合ってやるとかな約束取り付けて、見事に一撃入れたんだよ」
「それで!?」
「一晩中飲みに付き合わされて撃沈。
それでも随分と良い感じだったから、このまま初攻略なるかと思った所で……」
「どうなったんですか?」
「あれは悲劇だったね。
彼も、手加減の抜けてきた孫策相手にも、何とか耐えていたんだ。
それこそ五斗米道の粥をすすりながら、運の消費使いまくりでね」
基本、二合しか持たない相手だとそうなるか。
「その日は、賊討伐から帰ってきて、テンションダダ上がりの孫策が相手だった」
「それは……死ねるんでは」
「いや、それでも彼は耐えたよ、体はね。
だが、その心は……」
目を閉じ、何かを思い出しながら「ああ、今思い出しても身震いがするね」と、呟き、その時の状況を語る言葉を聞いて、俺は背筋に寒いものが走るのを抑えられなかった。
「南郷っ!! もっと私に熱をちょうだいよ!!
こんなのじゃ、全然足りないわ!!」
叫び、髪を振り乱しながらも、最後の一線の手加減を、かろうじて忘れていない孫策により、青年はなんとか立上がる事ができていた。
そして、立ち上がる度、粥を飲み干し、次の一撃に耐えるべく腹に力を入れ、孫策を睨みつける。
その目は、不屈の闘志をたたえていた。
「いいわ!! この滾りを叩きつけられる相手なんて、今まで、そうは居なかったわ!!」
「こい!! 俺が受け止めてやる!!」
「言われなくても!!」
嬉々とした狂気を纏わり付かせ、模擬刀を振りかぶる孫策に、ギリギリのポイント消費で受け流す青年。
その応酬が、途絶えることなく続く。
青年の中で時間の感覚が曖昧になっていく。
一体、どれくらいの時がたったのか。
ふと、考えた青年に、その時は突然やってきた。
その時……痛みとダメージの累積による行動制限が、青年の体の動きを鈍らせた。
そして、暴風の如き一撃を、まともに受けてしまった青年は、立ち上がることが出来なかった。
「なによ南郷!! もう終わりだっての!? 冗談じゃないわ、私は、ちっとも満足してない!!
立ちなさいよ南郷!! 若いんだから、さっさと立ちなさい!!
何? こんなに早く終わっちゃうの!? 女を満足させられないなんて、最低よ!!
ただでさえ、一回が早いんだから!! せめてすぐに立ち上がるところを見せなさいよ!!
南郷!!」
そして、青年は心も折れた。
「……それって」
「単に、たまたま意味的に痛い感じの言葉が並んだだけで、ナニを指してどうこうという話ではないと思うんだけどね。
若い男性には厳しかったようだね。
崩れ落ちたまま、リタイアしていったよ。
それから、彼は孫家には足を向けていない筈だ」
トラウマできてんじゃねーか!!
「それでもね……彼の歩んだ道は、きっと無駄な事なんかじゃない筈なんだ。
だからね、私は彼の歩んだ道を……後に進む者達の為に記したんだ」
「それは、どこまでを?」
「彼の熱闘と、彼女達の反応。
そして、その後、彼が孫家には目を向けなくなった事を。
これだけ記せば、十分じゃないかな?」
十分じゃねーよ。
それって、攻略完了して別の目標へ向かってるように見える。
まさかトラウマが出来て、避けてるようには絶対に受け取らない。
「一応聞きますが、もしかして、それにチャレンジして」
「わりと大層な人数が心を折られて、プレイスタイルを変えたようだね。
もう少し頑張って欲しいよね。
それにしても、あの時だけの、たまたまかと思ったけど、割とあの台詞って、再現性があるようだよ。
開発者の洒落なのかね?」
こいつ、悪魔か……。
「それからもね、南郷くんを見かける度に、こうして見守っているんだよ。
私が君に声を掛けたのは、彼の事を知って欲しかったからなんだよ」
「それで、南郷さんには関わるなと?」
「いや、それは君に任せるさ。
私が願うのは、南郷くんが周囲に警戒しながら、その動きを鈍らせる事が無いようにという事さ。
むしろ、君が一緒に踊ってくれるのなら、それはそれで楽しい物になるんじゃないかな?」
踊る場所は、コイツの掌の上ってか。
「最後に南郷さんが、ここに来ている目的は?」
「恐らくは趙雲さんだろうね。
割と洒落のきく、バトルジャンキー気味の人だからね」
なるほどね。
「それでは、失礼させて貰うよ」
はいはい、帰れ帰れ。
こっちはもう会いたくないよ。
「それよりも南郷さんか、どう付き合ったものやらねぇ」