表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/79

19

 Arcana Online 書籍化なんですね。

 先が暫く読めないということで、じりじりするやら、まとめて読めるのが待ち遠しいやら。


 今回、オッサンばっかりです。

 あ、やっとこさ文章量50キロ超えたー。

 って、55キロチョイで19話って、平均3キロ行ってねえ、OTL

「ほれほれ、飲め飲め!!」


 酒場のお姉ちゃん総動員で、うちの部隊の連中に酒飲ませてます。

 あとは装備を何とかする為に、商店で修正値の雑魚い+1やら+3くらいまでの武器防具を買い漁って、部隊の連中にやったりとか。

 なぜか部隊に武器防具をやると、全体の武装度が上がります。

 アイテムとしては消滅しますが。

 店売りのある低位の武器まで、わざわざポイントショップで買う必要もない訳だし、経済の活性には、こっちの方が良いだろう。

 そんなとこの影響まで計算されてるかは知らんけど。

 で、武具の投入が、おおよそ三十個を超える頃、部隊の武装度は一線級ってとこまで上がった。

 後は飲めや歌えで、士気と忠誠度を上げるくらいか。

 訓練度は、時間的なもので、限界があるだろう。

 一応、槍持ちには鈴々さん、弓持ちは白蓮さんを付けて、せめて「いちにのさん」で、ぶん殴る事が出来るくらいの統制は、なんとか形にしたいが。

 それと別で、インスタントな戦力を購入しておくか……戦力の質としては、二流もいいとこだが、今のうちの部隊よりは、随分マシなだけに、いざという時の賊相手には十分だろう。

 指揮官も、丁度ヤスが空いてるし、騎兵2000くらいでいいか。

 とか何とかやってると、大騒ぎしている部隊の面々を横目に、此方へやってくる人影。

 俺の近くで飲み食いしていた鈴々さんが、そっと、その行く先を塞ぐ。

 その警戒に慌てたのか、人影は立ち止まり、此方に害意がないことの証明にと、両の手を掲げ、此方へと言葉を放った。


「これは失礼を。 私は張世丙と申す商人でございます。

 あなた様を金千将軍とお見受けいたし、お声を掛けさせて頂こうかと思った次第にて、無作法はお許し願いたい」


 ん? 演義で劉備さんの旗揚げに援助した商人だっけか?

 なんか、微妙に名前が、違う気がしなくもないが、自信ないな。

 つか、このゲームじゃ、そんなのが出てくるんだっけか?

 恋姫†無双では聞いた事がない。

 ここは無難に返しておいた方がいいか。


「これはこれは、ご丁寧な名乗りを頂きまして。

 将軍等と呼ばれますと身の細る思いがいたしますが、確かに私が金千でございます」と、一礼。


「……」「……」


 微妙な沈黙が流れる。

 じっと、お互いを見合う時間が流れ。


「なかなかどうして、手ごわいですな。

 しかし、こうして居ても時間の無駄のようですので、先に自己紹介させて頂きましょう。

 私はご覧のとおり、商人をロールとしているプレイヤーです。

 あなたも、同じくプレイヤーの筈だ……金千殿」


 あっさりと断定してくれたな。


「どういうことでしょうかな?」

「どういうこととは?

 先にプレイヤーバレを告白したことでしょうか?

 それとも貴方の事を、プレイヤーと確信した事でしょうか?」


 ニヤニヤしている、このプレイヤー……どう考えても、曲者だ。

 何を考えてるんだか、さっぱりだ。

 大体、どうしたって、このゲームの知識・経験では、あちらが優位。

 下手な考えなんとやら、ここは素直に話を聞いた方が早そうだ。


「両方ですね。

 わざわざ、ここに首を突っ込んで来た要件と、私の事を確信したという理由を、教えていただきましょうか」

「素直に過ぎて面白くありませんが……。

 あなたがプレイヤーだと確信したのは簡単な話です。

 プレイヤー以外が、あんな派手な買い物をする訳がありませんよ。

 キャラクターならば、工房から装備の調達をしますからね。

 アイテムの装備化などという手段は、プレイヤー以外にはありえません」


 く、下らない所から。


「どうしても急ぐのならば、マイ外史からの調達をオススメします」

「肝に銘じます」

「堅いですねぇ。

 南郷君ほどに、とは言いませんが、もう少し楽に構えてもいいでしょうに」


 はあ、確かにばれてるんだし、それほど気にする必要も無いか。


「南郷 一馬さんですか。

 有名な方のようですが、どういった方なんです?」

「私はね、他のプレイヤーの行動を見て楽しむのが趣味でね。

 ここに立ち寄るのも、新人の立ち寄る可能性が高いからでね」

「なるほど」


 見事に行動が読まれてるな。


「あるとき、私が孫呉の土地でスタートした直後、彼を見かけたんだよ。

 いきなり『俺は天のお使いだ!!』と叫んでいるのを見てね。

 思わず、掲示板に書き込んだら、随分と流行ってしまったよ」

「あの異名は、あなたのせいですか」


 はははと笑うのを見るに、この人に下手な所は見せられない。


「それから暫く、見かけなかったが、噂では世紀末拳王様状態で、ポイント稼ぎをしていたようだね」


 ヒャッハープレイか、割り切れる人は羨ましくはあるな。


「その後、また孫呉の土地で『天の御遣い』プレイを始めたようなんだが、その時には随分とステータスを伸ばしていたようだよ。

 それこそ、あの孫策と手加減はあったんだろうけど、二合受けて、三合目で吹っ飛んでいたから、150から200くらいまでは、運のステータスを伸ばしていたろうね」

「そういう部分を読めるものなんですか?」

「ああ、運の消費の効果については、凡その見当が経験則から導きだされているよ。

 大体、100ポイントで、その能力値の+100%、つまり倍のステータスに伸びた判定を行える。

 増減による修正も、比例しているようだね」


 ポイント分の上乗せじゃなかったのか……。


「運のステータスですけど、皆そのくらいはあるんでしょうか?」

「最近、始めた人達については、言い切れないけどね、サービス開始から続けているプレイヤーについては、みな100程度までは伸ばしているだろうね。

 ポイント稼ぎも文官や、私のような商人プレイをしていれば、2-3周で10000ポイントは出るからね、サービス開始からそろそろ半年、日に三時間くらいプレイしている人なら、150や200ポイントの上乗せがあっても不思議じゃないだろうね。

 まあ、キャラクターを複数作る事を考えれば、メインのキャラクターについて、150ポイントステータスに上乗せしているくらいが現在の上限ではないかな?」


 その点で行くと、南郷さんは結構なヘビーユーザーなのか。


「それでは、南郷さんって」

「割りとネタキャラ扱いされては居るがね、戦闘系プレイヤーとしては、全体でも指折りの上位だと思うね」

「そうなんですね」

「まあ、そろそろ、能力制限のキャップも外されるんじゃないかって噂もあるからね、今後のことは判らないけどね」


 悔しいが参考になる。


「で、南郷さんは、なぜ此方に? 孫家にこだわってたのでは?」

「悲しい事があってね」


 ふふふとか、薄く笑ってるじゃねーか。

 絶対に悲しい出来事とか思ってねーよこの人。


「南郷くんはね、どうやらお姉さま系のキャラクターが好みなんだよ」

「なるほど、それで孫家と」

「それと、バトルジャンキーっぽいのが多いしね」

「???」

「ああ、孫策、黄蓋、甘寧の攻略にね、殴り合いでの友情って奴を、その突破口にしたのさ」


 ほほう、それはなんか、説得力がありそうな気がする。


「実際、割りと良い所まで行ってたね。

 孫策相手に、一撃入れたら、付き合ってやるとかな約束取り付けて、見事に一撃入れたんだよ」

「それで!?」

「一晩中飲みに付き合わされて撃沈。

 それでも随分と良い感じだったから、このまま初攻略なるかと思った所で……」

「どうなったんですか?」

「あれは悲劇だったね。

 彼も、手加減の抜けてきた孫策相手にも、何とか耐えていたんだ。

 それこそ五斗米道の粥をすすりながら、運の消費使いまくりでね」


 基本、二合しか持たない相手だとそうなるか。


「その日は、賊討伐から帰ってきて、テンションダダ上がりの孫策が相手だった」

「それは……死ねるんでは」

「いや、それでも彼は耐えたよ、体はね。

 だが、その心は……」


 目を閉じ、何かを思い出しながら「ああ、今思い出しても身震いがするね」と、呟き、その時の状況を語る言葉を聞いて、俺は背筋に寒いものが走るのを抑えられなかった。




「南郷っ!! もっと私に熱をちょうだいよ!!

 こんなのじゃ、全然足りないわ!!」


 叫び、髪を振り乱しながらも、最後の一線の手加減を、かろうじて忘れていない孫策により、青年はなんとか立上がる事ができていた。

 そして、立ち上がる度、粥を飲み干し、次の一撃に耐えるべく腹に力を入れ、孫策を睨みつける。

 その目は、不屈の闘志をたたえていた。


「いいわ!! この滾りを叩きつけられる相手なんて、今まで、そうは居なかったわ!!」

「こい!! 俺が受け止めてやる!!」

「言われなくても!!」


 嬉々とした狂気を纏わり付かせ、模擬刀を振りかぶる孫策に、ギリギリのポイント消費で受け流す青年。

 その応酬が、途絶えることなく続く。

 青年の中で時間の感覚が曖昧になっていく。

 一体、どれくらいの時がたったのか。

 ふと、考えた青年に、その時は突然やってきた。

 その時……痛みとダメージの累積による行動制限が、青年の体の動きを鈍らせた。

 そして、暴風の如き一撃を、まともに受けてしまった青年は、立ち上がることが出来なかった。


「なによ南郷!! もう終わりだっての!? 冗談じゃないわ、私は、ちっとも満足してない!!

 立ちなさいよ南郷!! 若いんだから、さっさと立ちなさい!!

 何? こんなに早く終わっちゃうの!? 女を満足させられないなんて、最低よ!!

 ただでさえ、一回が早いんだから!! せめてすぐに立ち上がるところを見せなさいよ!!

 南郷!!」


 そして、青年は心も折れた。



「……それって」

「単に、たまたま意味的に痛い感じの言葉が並んだだけで、ナニを指してどうこうという話ではないと思うんだけどね。

 若い男性には厳しかったようだね。

 崩れ落ちたまま、リタイアしていったよ。

 それから、彼は孫家には足を向けていない筈だ」


 トラウマできてんじゃねーか!!


「それでもね……彼の歩んだ道は、きっと無駄な事なんかじゃない筈なんだ。

 だからね、私は彼の歩んだ道を……後に進む者達の為に記したんだ」

「それは、どこまでを?」

「彼の熱闘と、彼女達の反応。

 そして、その後、彼が孫家には目を向けなくなった事を。

 これだけ記せば、十分じゃないかな?」


 十分じゃねーよ。

 それって、攻略完了して別の目標へ向かってるように見える。

 まさかトラウマが出来て、避けてるようには絶対に受け取らない。


「一応聞きますが、もしかして、それにチャレンジして」

「わりと大層な人数が心を折られて、プレイスタイルを変えたようだね。

 もう少し頑張って欲しいよね。

 それにしても、あの時だけの、たまたまかと思ったけど、割とあの台詞って、再現性があるようだよ。

 開発者の洒落なのかね?」


 こいつ、悪魔か……。


「それからもね、南郷くんを見かける度に、こうして見守っているんだよ。

 私が君に声を掛けたのは、彼の事を知って欲しかったからなんだよ」

「それで、南郷さんには関わるなと?」

「いや、それは君に任せるさ。

 私が願うのは、南郷くんが周囲に警戒しながら、その動きを鈍らせる事が無いようにという事さ。

 むしろ、君が一緒に踊ってくれるのなら、それはそれで楽しい物になるんじゃないかな?」


 踊る場所は、コイツの掌の上ってか。


「最後に南郷さんが、ここに来ている目的は?」

「恐らくは趙雲さんだろうね。

 割と洒落のきく、バトルジャンキー気味の人だからね」


 なるほどね。


「それでは、失礼させて貰うよ」


 はいはい、帰れ帰れ。

 こっちはもう会いたくないよ。


「それよりも南郷さんか、どう付き合ったものやらねぇ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ