表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/79

18

 はーい、ちょっと時間飛びました。

 あれから資料提出の功も含めて、500人ほどの隊を任される事に。

 というか、主に備蓄の確認徹底と物資再配置のお陰でしょうが。

 とはいえ、輜重隊の護衛ということで騎馬は居らず、主に槍持ちと若干の弓持ちが居る、二軍の下ってレベルの部隊です。

 顔見せで目の前に並んだ時の連中……鎧も微妙に揃っておらず、弓の矢玉も十分とは言えない様子を見るに「とにかく歩く分には問題はない」という位の訓練段階で、いきなり引っ張り出された感じですか。

 少なくとも、戦闘に駆り出すには「心許無い」としか言えない。


 いくら後軍のおまけとはいえ、もうちょっと何とかならんかったのか。

 今回の賊討伐、聞くと初期任務の時のような数十人規模の連中ではなく、領内に入り込んだ数百から千近くの連中を、複数相手取る事になるそうな。

 その為、主力は普通の人が直卒する騎馬3000、中軍に歩兵1000を預かる南郷さん、そして後軍に俺の500と輜重隊という、割と大袈裟な編成である。

 にしても、戦力をひねり出すにも、防備の為の一線の戦力に手が付けられないからと、俺の部隊が手薄なのは仕方がないとは思うが、万が一、戦闘になった時の事を考えると、背中が薄ら寒くなる。

 まあ、今回は行動範囲が領内という事で、山盛り負担になる筈の、お馬さん用の水と秣は分割して各地拠点に配置している為、輜重の荷は主に人間さま用なのが救いだ。

 お陰で、荷車を長蛇の列にしなくて済む。

 ぶっちゃけ、本隊よりも規模のでかくなるような輜重隊を、俺の部隊で捌けと言われたら泣くしかない。

 今の規模であるのなら、移動途中はともかく、村に篭りでも出来れば、なんとか時間稼ぎくらいは出来るだろう、できるといいなぁ。

 つっても、ポイントでインスタントな一時兵力を出して、敵さんにぶつけりゃどうにでもなる話だが、それじゃあロールプレイの面白見がないしな。

 ある程度の不利なら、出来る限りはやってみるのも一興、どうしてもダメなら、その時はポイント使うなり、負けプレイの後、皆に慰めて貰うのもアリだし。


 等と、ぶちぶち考えながら歩いていた自室への道中、隣から。

 

「恐らく主殿の部隊は、今回の戦では戦闘ではなく、土木工事等を主任務として考えられているんだろうから、戦闘に関わる事はないと思うぞ」と、白蓮さん。


 俺が、変に浮ついてるのを見越したのか、助言のつもりだったんだろうけど。

 

「土木工事? というと、戦後の後始末ということでしょうか?」

「主に、襲われた村の補修と、民の慰撫って所だろう」


 確かにそれなら、今の部隊でもなんとかなるだろうし、主力についていけなくても問題はない。

 それに賊を討伐した後の地域なら、戦闘の可能性もごく低い訳だ。

 つまり、此方には特に戦闘力を期待されているわけではなく、単に人手があればいいということか。


「なるほど、主力も補給は物資を移送しておいた拠点で行えるのだから、わざわざ鈍足の輜重隊を待つ必要は無い……我々は、せいぜい片が付いた戦場で、穴掘りと炊き出しでもしておけと」


 あれ? なんか、ちょっとカチンと来たぞ。

 凄く納得はできてるんだが、何だろう?

 南郷さんとの差を付けられてるように感じてるのか?

 俺って、そんなに感情的と言うか、短気じゃなかった筈なんだけどなぁ。

 このゲームの中だと、割と恥ずかしい事もしてる気がするし、若干、箍が外れているのか、そういう風な影響ってのがあるのか、兎に角……なんかモヤモヤする。


「あ、主殿。 それは穿ち過ぎの考えだぞ。

 戦後の沙汰は重要だからと、こうして訓練も完了していない連中まで動員して、部隊を作って主殿に任せているんだろうし。

 けして、貴方を侮っているとかでは無いと思うんだ。

 ……だから、そんな目をしないでくれ。

 そうして見られているのが、私ではない私だとしても……辛いからさ」


 そう言って、悲しげな表情で縋り付いてくる白蓮さんに、俺の頭も冷えていく。

 どうやら俺が、色々考え込んでいる間に、胡乱な目付きでもしていたのか、白蓮さんには普通の人を責めているように見えたんだろう。

 考えてみれば、後軍にって話は最初からで、それは俺が文官やってたからだろう。

 恐らくは、趙雲さんが居るとすれば、先鋒は趙雲さんで、普通の人こそ後軍に居たって不思議ではない。

 そうであれば、態々文官を、将に引っ張り出すことも無いんだろうし。

 考えてみれば一々最もな事に、何を腹立ててるかな俺は。

 あー、俺は何をアホな事を。

 一人で盛り上がって落ち込んで、子供か俺は!!


「申し訳ありません、白蓮殿。

 八つ当たりのような、情けない姿を見せてしまいました」

「良いんだ、主殿」


 きゅっと縋り付いてきた時の体勢から、両の手を背に回され、抱きすくめられた。

 身長差とヒールのせいで、こちらの顔が白蓮さんの胸に半ば顔を埋まるような姿勢になってしまう。

 白蓮さんの、早鐘のようだった鼓動が、少しづつ落ち着いていくのを感じる。

 この程度のことで取り乱したり、落ち着いたりと、忙しい白蓮さんが可愛くて、こちらから抱き返すと、再び、鼓動が早くなっていくのを感じて、尚更に思いが募る。


「主殿」


 視線を合わせ、唇が触れる。

 やばいなぁ、仮想だって、判ってるのに。

 このハマりようは、本当にヤバイ。




 ただ、こちらが見上げるのを気遣って、白蓮さんが膝を地に着け、こちらに合わせてくれたのって……俺がヒロインポジションじゃないか。

 やはり、もう少し身長は高くしておくべきだったろうか。

 白蓮さんで165近く、比較的長身の多い孫呉メンバーとか、平均165を超えて170くらいありそうだし。

 まあ、今更仕方がない話ではあるが。


「とりあえず、あの二軍連中を何とかしてみるか」


 出陣まで、あまり間はないのだけども。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ