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 仕事を続ける間に、税収が入ってきた。

 50000ポイント底上げとか、わらかしてくれる規模のポイント増加は、頭打ちだった初期拠点の施設のアップグレードを前進させ、用地の指定だけが済んでいた、新規施設の殆どを初期段階の施設とはいえ、一気に埋めた。

 人口、実税収がほぼ倍に伸び、各々が更にアップグレードを繰り返していくことを考えると、まだまだ税収の度に倍々ゲームは続いていくだろう。


「さて、人口は増えたが、治安は悪くなっているぞ。

 軍事に金を回さずに抑えるのは構わないが、余力がありながら不具合を拾うのも面白くない。

 多少は目を向けてもいいんじゃないか? 主殿」

「いや、ここまで急に伸びるとは思わなかったので。

 流石に初期兵力の100だけでは、治安維持も難しいですね」

「私の国も、こうもアッサリ人口が増えると楽だったんだがなぁ」


 遠い目の白蓮さん。


「こちらだと、どこからともなく流れてきますからねえ、人が。

 産めよ増やせよを考えなくていいのは、ある意味インチキですね」

「あと、戸籍が完璧とかな」


 あー、楽でいいわーとは、白蓮さんの談。


「なるほど」


 で、報告を見ると、初期の500程度から2500近くまで人口が伸びている。


「金山抜きの実収入で、どれくらいまで増やせますかな」

「現状なら300。 縄張りのうちが全て埋まれば、人口が1万に届くだろうからな。

 そうなれば……まあ、とどめ置くだけなら3000。

 部隊を騎馬にして、動かす輜重の予備を見るのであれば2000程だろう」

「とりあえず300まで増やして、治安を改めさせますかな」

「それなら、星や関羽にも手伝わせるほうが良いんじゃないか」


 あ、なんか、言ってる割に、憮然として嫌そうな感じだ。


「そういえば、そうかも知れませんな。

 しかし、白蓮殿はよろしいので?」


 ちょっと意地悪気に聞いてみる。


「わ、私は関係無いだろっ、別に嫉妬とかしてないしな!!」


 ナイスツンデレごちそうさまです。


「ありがとうございます」

「!?!!!?!!」


 ちょ、竹簡なげるのは!! カドが刺さるっ!!

 アイター!!




「えらい目にあった」


 拠点の一角、趙雲さんの私室の前に立ちつつ、息を整える。


「星どの、よろしいかな?」

「満腹どのか、少しお待ちを」


 待つこと暫し、相変わらずの挑発的な格好で、こちらを出迎える趙雲さんは、朱の入った白い肌が艶かしい。

 勧められた椅子に腰掛けても直視できない感じで、オドオドしていたら、いきなり酒が出てくるのはどういうことだろうか。


「まずは一献。 度胸付けにいかがかな」

「頂きましょう」


 うん、割りと旨い。

 擬似のくせに拘りを感じる。

 ちゃんと酒飲んでる感じがするあたりも、成人向けなんだな。


「落ち着かれましたかな?」

「なんとか」


 クスクス笑うのは、やめて欲しいが。


「では、参りましょうか」

「はい?」


 いきなり、どうした。


「おや? 違いましたかな?

 てっきり、我が槍を用いるべき時が来たかと思っておりましたが。

 ……おう、これは失敬。

 伽をせよとの仰せで「いやいやいやいや。 星殿の武勇を必要としておりますので、はい!!」

 それは残念」


 くそう、完全に遊ばれとる。


「それでは、参りましょうか」

「はいはい、お願いしたします」


 疲れる……。

 で、執務室に来たわけですが。


「おやおや、伯珪殿」

「なんだ?」

「いや、ずいぶんとこう、見違えましたな」


 戻ってきて、いきなり何か始まるし。


「あ!? 私には似合わないってか」

「いえいえ、よく似あっておりますよ。 嫉妬したくなるほどに、ええ」


 って、こっちにジトーっとした視線投げてくるのはやめてくれませんか、趙雲さん。


「はいはい。 判りましたよ。

 しかし、せっかく白蓮殿へ選んだものと同じでは芸がありませんしな」


 とは言ったものの……ポイントショップって、膨大ではあるけど、微妙な代物も多いわけで……強いけど、どう考えても狙い過ぎな、ロンギヌスの槍+綾波セット(プラグスーツ+ヘッドセット)とか……。

 って、お?

 コスプレ用か、オリジナルメンバー衣装各種とかあるのか。

 小物が5万から衣装本体20万ポイントって……おい。

 ああ、2Pカラーどころか、12Pカラーとかまであるんだな。

 しかも、能力付与ありか……白蓮さんにも、こっち送ればよかったんでは……書物とかじゃなくて。

 まあ、いい。

 この際、趙雲さんに趙雲衣装の色違いを送ってみよう。

 恐ろしい事に、青地に金赤で鳳凰とか、黒地に銀青で五本爪の昇竜とか、漢王朝に喧嘩売ってる感のデザインもある。

 ここは、あんまりそのへん気にせず、黒の衣装を贈ってみようか。

 帽子、衣装、履物で二十五万ポイント。

 帽子に知力・政治+5、衣装に魅力・統率+8、履物に回避・移動力修正UPという内訳。

 武器の龍牙は、元々で結構な業物なので、そのままに。


「これなどは如何でしょうかな?」


 どこから出した的なツッコミは特になく、取り出された衣装を見る趙雲さんの目は厳しい。

 気に入らなかったか?


「これは……俺色に染まり、二度と他の色に染まる事は許さんという『貴様は俺の所有物!!』的な意味と捉えて「どうしてそう「ならばこの趙子龍、満腹殿いやさ我が使い手と共に、六道の底、無間の闇、終わる事無き修羅の戦場を駆け「話をきいて「その爪牙となりて、この槍を振るいましょうぞ」どうしてこうなった」

「説明しよう!!」


 急に周囲の動きがとまり、停止した時間の中、野太い声が脳裏を震わせた。


「急に出てくるな怖いから」


 マッチョ二号の突然さに、思わず素で突っ込んでしまった。


「むう、失礼な!!

 はっ、これはイタイケな漢女心を傷つけ、打って変わって優しい言葉で篭絡しようとする高等テク二「違うから!!」イケズじゃのう」


 気持ち悪いことを言うな。

 そんなフラグ出たら死に物狂いで折ってやる。


「それより説明って?」

「少々振り切り気味の趙雲殿のことじゃ」


 ああ、やっぱり、振り切り気味なんだ。


「もともと、趙雲子龍のキャラ的に『自分に見合う、仕えるべき相手を探し、己が力を十全に発揮する』という欲求があるのじゃが」


 たしかにそういう部分はあるかもな。


「それが転じて、現状……『己が選んだ主に自分を使わせる』という、欲が突っ走り気味のようじゃ。

 通常、こういう暴走気味のテンションというのは、カンストオーバーの褒美やプレゼントで、一時的にカンスト上限を超えた数値になることで起こる症状じゃが、例のタイアップ商品の指輪……忠誠やら親愛やら数値維持の上に更にアゲアゲ状態じゃからな。 通常状態に戻らん」

「それってどういう」

「しかもじゃ」


 話し聞けよ。


「少々嫉妬入った所での、おねだりに『良い感じの答え』が返されて有頂天じゃな。

 まさに発酵腐女子に燃料投下状態じゃ」


 なにそれ怖い。


「じゃあ、どうすりゃいいんだよ。 ずっとこのテンションかよ。

 それに白蓮さんは其処までおかしげなテンションじゃないだろうに」


 そのへんもキャラの差か?


「違う違あぁう!! おぬし、女心がわかっておらんのう」

「カママッチョにダメだしされた!?」

「公孫賛殿の欲求には『支えられる事、共に歩む者が欲しい』等という辺りが含まれておる。

 そのへんが、突っ走って、強度の依存状態になっておるようじゃが」


 そうだっけ? 割と普通に見えるけども。


「ぶっちゃけ、一番に選ばれて、補佐を頼まれたことで満たされておるからそう見えるだけじゃな。

 ワシには、趙雲殿にちょっかい掛けられて、少々病んでるように見受けられるぞ」


 マジか。


「実はここでワシが出張ってきたのは、GM権限での仕様確認のためじゃ」

「バグ?」

「我社はユーザー対応には定評があっての。

 まあ、実際は想定外に近い現象ではあるが、全体への影響は極めて微かじゃ。

 だいたいアレを購入した人数は十指に足らん」


 そんなに少なかったのか。


「じゃから、個別に確認しておるわけじゃ。

 購入キャンセルも含めた返金、アイテムは保持でのカンストオーバーへの対策、あるいは現状維持。

 お主の望みどおりにしよう。

 因みに他の連中は、間髪入れず「ナイスヤンデレ、ありがとう御座います」と笑って刺される道を選択したものが多いのう」


 なんという訓練された連中なんだろう。

 俺の答えは……。



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