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それでも名前を呼ばれたくて

人は、しばしば期待される。

いつだって期待される。

待ち望まれている反応があり、決まりきった流れがある。


「それって、私じゃなくてもよくない?」


学生時代、教室の窓から外を眺めていた。

自由に飛ぶ鳥を見ていると、みんなと同じでいることが、とても息苦しく思えた。

同じ教室にいて、同じ違和感を抱えているはずなのに、それを共有することができなかった。


「私は、私の道を歩きたい」


そう思うようになって——


「それから、それから?」


だから私は、違う道を選んだ。

みんなが無理だと言い、みんながやらない場所で、自分の価値を見つけようとした。

それしか、方法がなかった。


「それは、大変だったんじゃない?」


舗装された道でもなく、悪路ですらない。

そもそも、道が存在しない場所。

夜の街をふらつく酔っぱらいよりも、頼りない千鳥足で、私はそこを進んだ。


やっと、つかんだこの世界。


「でも、それを捨てようとしてるでしょ?」


私は、声のする方を見ることができなかった。


自覚はある。

全部、わかっている。


これをやれば、今まで積み上げてきたものが、取り返しのつかないものになることも。

それでも私は、涙を流しながら、こう言い放った。


「『頑張ってて偉いね』って言葉には、勝てなかったよ」

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