もしもの未来
"もしもの未来"を教えてくれるアプリを買った。
お題を伝えると、人工知能が画像を生成してくれるらしい。
これがなかなか的確で、面白いという評判だった。
アプリは少し高かったけど、暇潰しとしてはちょうどいいと思う。
「もしも、健司君と結婚していたら……どんな未来だったの?」
私は期待を込めてスマートフォンに尋ねる。
アプリの人工知能が「もしもの未来を計算中……」と表示する。
健司君とは私の元カレだ。
三年前、喧嘩をして別れたのである。
きっかけは些細なことだった。
あの時、つい怒鳴ってしまったのを今でも後悔している。
だからこそ、健司君との幸せな未来を見てみたかった。
一分ほどで人工知能が計算を終えた。
私は生成された画像に目を通す。
最初は健司君とのデート写真が続いた。
行ったことのない遊園地や海でのツーショットである。
スマートフォンにあるデータを参考に生成したのだろう。
まるで本物のようによく出来ている。
途中で結婚式の写真になった。
ケーキ入刀のシーンやキス、親戚や友達と笑顔で並んでいる。
私がブーケを豪快に投げる写真もあり、思わず笑ってしまった。
次は私達の子供が登場した。
色白の可愛い赤ちゃんだ。
目元や私に似て、癖毛は健司君そっくりである。
(これがもしもの未来……幸せすぎるなぁ。実現してくれたらよかったのに)
次々と画像をスクロールさせていた私は、ぎょっとして指を止める。
いきなり血みどろの死体の画像が表示されたからだ。
慌ててスクロールしても、死体の画像が続く。
アップで写されたそれらは、どう見ても私だった。
ブルーシートの上でバラバラに解体されて、生首がカメラ目線でこっちを睨んでいる。
「ひっ」
私は怖くなってスマートフォンを投げる。
その拍子に画面が切り替わり、本物のニュース映像が流れ始める。
警察に連れられてパトカーに乗り込むのは健司君だった。
ニュースのテロップは、彼が恋人を殺害した容疑で逮捕されたと説明していた。




