第二話 出会い
「…っちょ、誰よ!!あたしの家でくつろぐバカは!!」
知らない声が洞窟の中に響き渡る。
「って、あんた成人じゃないじゃない!てことは、家出?」
「いえ、そのですね。追い出されてしまったんです。とある理由で…。」
その一言で、彼女は察してくれた。
「あんた、どっちにしろここは私の寝床なの。もっと端っこに行きなさい。」
キツく当たられているようにも思えるが、彼女は優しく私を受け入れてくれた。そして私は思った。こんな5歳の少女が、成人ではない子供が、外を歩いているとどう思われるのだろうか。
「あの、5歳の少女が外を歩き回っているのはおかしいのでしょうか?」
「まあ、変だけど特別ではないわ。リスト教の教えで、夫婦仲が1番重要とされているから、子どもが家出したり家からやむを得ない理由で追い出されたり、割と少なくないのよ。あんたもその1人ね。」
よかった。とりあえず旅は続けられそうだ。
「そんなことより、あんたなんでこんなところで寝てるのよ。行くあてはあるの?」
「いえ、旅をしようかと。」
「はぁ!?そんな中級魔術と中級剣術で?無理無理絶対無理。あんた世界を舐めすぎよ。」
「え、だめなんですか?」
「死ぬわよ、確実に。そうね、こうしましょう。明日私についてきなさい。しばらく預かってあげる。」
「いいんですか!?え、その、なんとお礼を言ったらいいか。」
「ほんとに5歳とは思えない礼儀ね。もっと気楽でいいのに。とりあえず寝ましょ。」
ーー
日が昇り、私は彼女についていく。
「そういえば名前聞いてなかったわね。名乗りなさい。」
「プリマヴェラです。ただのプリマヴェラ。」
「へー!いい名前じゃない!にしてもどこかで見たことあるのよねー、あなたの顔。」
「お姉さんはなんて言うんですか?」
「あ、そうね。失礼したわ。私はこの先の村の領主、アベラルド・デ・サンクティスの娘。名前はビアンカ・デ・サンクティスよ。」
「そうなんですね!ビアンカさんすごいです!」
「はいはいお世辞はいいからさっさと行くわよ。」
ーー
「見えてきたわ!フィウメ村よ!」
「わー!大きな川があります!」
「フィウメ村はこのベラル川を中心に発展した村なの。本当に助かっているわ。ついたわ、ここが私の家よ!」
「わー、すごいお屋敷ですね!」
「まあ領主一家だからね。」
「パパー!ちょっと話があるの!」
ーー
少ししてビアンカさんの父、アベラルドさんが来た。ビアンカさんはこれまでのことを事細かに説明してくれて、私は本当にしばらくここに住めることになったのだ。
「本当にありがとうございます!!ビアンカさん、アベラルドさん。」
「まあ、ゆっくりしてくれ。今日から家族なわけだ。」
アベラルドさんはとても暖かく迎えてくれた。
「そんなことよりプリマヴェラ。魔術と剣術、もっと伸ばしたくはない?」
「伸ばしたいです!いや、極めたいです!!!」
「それが聞けてよかったわ。明日から剣術を護衛の
ガイスに習いなさい。それと、ごめんなさい。この村には魔術を教えられる人がいないの。その代わり役にたつものならなんでも使っていいわ!自由に学びなさい。」
「ありがとうございます!」
ほんとに、ずっと助けてもらってばかりだ。いたれりつくせり。こちらからも何か返せないだろうか。
とりあえず今日は屋敷で休もう。明日、剣術を教えてもらうのは午後からとの話なので、午前中に村を見て回る時間もあるだろう。明日からまた、新たな生活が始まるのだ。
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