第零話 転換
私はあの日から、何かが変わった。
「おい、やめろよ。その子が嫌がってるだろ。」
「ッチ、姫崎かよ。いくぞお前ら。」
「…えっと、ありがと。姫崎君…///」
「おう、あんまり絡まれるなよ。」
「あの!今度デートでもどうですか?」
そうして俺は人生初デートに行くことになった。
「うわー!これかわいい!ほしいなー。」
クレーンゲームの景品を物欲しそうに見ている彼女を見てなんなくそれを取ってあげた。
「ありがとう!!大事にするね!ねえねえ、プリクラ撮ってみない?」
「え?ああ、いいよ。」
もともと多趣味な方ではあったが、未だに触れたことのない文化だ。
「すごい!姫崎君めっちゃかわいい!」
…!
俺は、今までに感じたことのないくらい大きな気持ちが沸き上がるのを自分から感じた。
そう、嬉しかったのだ。かわいいと言われたことが。
そのあと、流行りのぬいぐるみを買ったり服を見たりするうちに、カワイイに憧れを持っていった。
そうして俺は、私になったのだ。
そして現在いわゆる男の娘として過ごしている私は、どうやら一部から忌み嫌われているらしい。
やはりおかしいのだろうか。男がメイクだのスイーツだの言っているのは。
そんな私にも、仲の良い子がいないというわけではなかった。
「姫崎!!今日のメイクもイケてるね~。」
「ありがとう!頑張ったんだ!」
「あいつも懲りないわね。男のくせに。」
私のことを嫌っている人たちだ。
「あんたたち、姫崎になんか文句あんの?」
「…フンッ、昔はかっこよかったのにね!」
「なんなのよあいつら。」
「大丈夫だから!ありがとね。」
こうして私を大事に思ってくれることはとてもありがたく、幸せなことだ。
でも人というのは、やはり悪いものばかりに目が行ってしまうものなのだ。私は人生を楽しみながらも、どこか息苦しさ、辛さを感じていた。
「これから、どうしよう…」
その時だった。鋭いブレーキ音と共に、鈍い衝突音が聞こえた。
次に目が覚めた時、私は産声を上げていた。
「かわいい女の子ですよ!奥様!」
そう異世界に転生してしまったのだ。
「ストーーーーップ!!」
大きな声が響き渡るとともに、あらたな人生を歩もうとしている私の視界には真っ白な空間が広がっている。
「いや誰ですか。」
「あ、ごめんごめん。私の名は閻魔であーる。わーっはっはっは。」
「閻魔様って女性だったんですね。」
「ほう、お主の世界では違うのか。」
「え、てことはやはり異世界に来たんですか!」
「…まあ一応。だがな、人は死んだら天国か地獄へ行き、また同じ世界で新たな人生をたどることになっているんだ、これはどの並行世界でも絶対の掟。」
「へー、そうなんですね。…!?」
「気づいたか。そう、お主はこうして異世界に生まれてしまった。天国へも地獄へも行かずにな。」
「どういうことですか。」
「まあ、世界を転換してしまったんだな。」
閻魔様の話によると、何らかの力で、生まれ変わるとともに世界ごと変えてしまったらしい。
そんなことより、私はずっとなってみたかったものに生まれ変わってとても未来に期待している。
そう、お気づきいただけただろうか。私は晴れて女の子として生を受けたのだ。
「高い高ーい!かわいいなー、プリマヴェラは♡」
ユーベルト・ステファニー。私の父にしてここステファニー王国の国王。国王という身でありながら剣の腕も一流で、剣聖をしているらしい。
「あらあら、本当に仲良し親子なんだから。」
微笑む彼女の名前はカリーナ・ステファニー。お察しの通り母である。彼女は平民生まれだが、その美貌と魔術の才能を気に入られ、ステファニー家に嫁いだそうだ。平民上がりの王女なんて歴史上初で、一部過激派には彼女の暗殺などを狙う悪党もいるそうだ。
「お前に似て美人になるぞー、プリマヴェラは。」
「もう、ユーベルトったら。」
こうして私は、プリマヴェラ・ステファニーとして一国のお姫様になってしまった。
前世の記憶はあるままだし、この世界のこともよくわからない。ただ、これだけは言える。
私はすでに今、幸せだ。この人生をどう歩んでいこうか、とても期待している。
小説初挑戦です!
良いと思ったらブックマーク、★評価していただけると、作者が空を飛びます。
(とても喜びます)
ご協力いただけると幸いです。
引き続きよろしくお願いいたします!