表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/25

第六話 仕切り直しの告白

「まだ沙彩に告白していないって……」

 更なる衝撃の事実を聞かされて、頭が真っ白になってしまい、授業中もずっと放心状態になっていた?

 マジかよ……告白してOKを貰えたのまで夢だったなんて……。

 どうりであっさりとOK貰ったんで、おかしいと思ったんだが……いや、だからなんだってんだ。

 また沙彩に告白すれば良いだけじゃないか。落ち着け……あんな夢に惑わされる事はないだろ。

「哲史君」

「え? あ、沙彩……な、何?」

「何かさっきから顔色悪いけど……大丈夫?」

「ああ。大丈夫だよ。昨日、ちょっと変な夢見ちゃったみたいでさ、はは」

「変な夢? どんな?」

「え……あー、よく覚えてないんだけど、何か怖い夢だったような……」

 沙彩が俺の事を心配して声をかけてきてくれたが、まさか本当の事を言う訳にはいかないしな。


「そう。気分が悪くなったらすぐに言ってね。私、保健委員だから」

「ああ」

 やっぱり沙彩は優しくて良い子だなー……あんな子が彼女になってくれたら、最高だろうに。

(よし、やっぱり告白しよう)

 悩む必要はないな。

 あれが夢だったってなら、正夢にすれば良いだけじゃないか。

 そう決心し、放課後沙彩に想いを伝える事にした。


「本当に告白する気なんだ」

「ああ。だから、沙彩を屋上に……」

 というわけで、改めて燈子に告白のおぜん立てを頼むことにする。

 あの夢が何なのかはわからないが、あの通りにやればOKを貰えると言い聞かせて、やるしかないな。

「ハイハイ。わかったよ。その代わり、上手く行ったら、ちゃんとお礼してよね」

「わかってるよ。ちなみにお礼に何が欲しい?」

「うーんとね……マンション。都心のタワマンに住むの夢なんだ」

「…………」

「冗談だって。そんな顔しないの」

「お前な。冗談でもそういう事言うと、がめつい女だと思われるぞ」

 そうだったな。

 燈子はこんな女だった。夢の中の燈子はちょっとおせっかいな感じだったけど、甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれた理想的で可愛らしい彼女だったが、本当はあんな奴ではないはずだ。


「がめついって、別にいいじゃん。都会でキラキラした生活送りたいってのはみんな思っていることだよ」

「俺はそんな気はないんだけどな。とにかく、沙彩の事、頼むわ」

「はーい。放課後、屋上に連れてくれば良いのね。あとお礼は何かしてもらうからね」

 渋々ながらも俺の頼みを聞いてくれたので、これでお膳立ては大丈夫だろう。

 さて、上手くいくかな……初めての告白だから、気合を入れないとな。


 放課後――

「哲史君。どうしたの、こんな所で?」

「あー、その……」

「ふふ、じゃあ私はこれで」

 燈子に目で席を外してくれと合図すると、燈子は言われた通り、屋上から立ち去り、二人きりになる。

 おお、ここまではあの夢と同じシチュエーションだ。

 果たして上手くいくだろうか……。


「あ、あのさ……実はその……沙彩。よ、よかったら、俺と付き合ってくれないか? 前から好きだったんだ」

「えっ!?」

 夢で予行演習済みとは言え、やっぱりいざ告白となると、緊張して言葉が出なかったんだが、ゆうきを振り絞って沙彩に告白する。

 ど、どうだ……頼む、俺の想いに応えてくれ!

「わ、私と? でも急に言われても……」

「その……駄目か?」

「え? う、うーん……」

 まさか告白されると思わなかったのか、沙彩は困惑しながら、しばらく考え込む。

 これは……脈なしなのかありなのか、どっちなんだ?


「そ、そうだね……本当に私でいいの?」

「ああ! 沙彩じゃないと駄目だ」

「じゃあ……うん……いいよ」

「本当か!?」

 マジか……本当にOKがもらえてしまい、嬉しいというよりはホっと胸を撫でおろす。

 よかった……あの夢はただの夢ではなかったのか。

「それじゃ、その……一緒に帰ろうか」

「うん」

 めでたく沙彩と付き合うことになり、二人で屋上を出る。


「あ、沙彩。哲史」

「おう、燈子」

「えっと……屋上で何やっていたの?」

「その……」

 沙彩と目を合わせ、燈子に俺たちが付き合うことになったことを話して良いものかと確認するが、沙彩もうんと頷いたので、

「実は俺達、付き合うことになったんだ」

「え? ほ、本当?」

「うん……」

「よかったじゃない。へえ、哲史もどんな魔法使ったのよ?」

「魔法なんか使ってねえよ」

 付き合い始めたことを報告すると、燈子も嬉しそうに満面の笑みで見せて、俺の肩をバンと叩く。


「あはは、ゴメン。でも、おめでとう。あ、私、邪魔だよね。じゃあ、ごゆっくり。後で詳しい話は聞かせてねー」

 と俺達に気を利かせたのか、燈子は俺たちの前から走り去り、沙彩と二人きりになる。

「燈子ちゃん、私たちに気を遣ってくれたんだね」

「だな。じゃあ、帰ろうか」

「うん」

 早速、沙彩と手を繋いで二人で帰ることにする。

 いやー、本当に夢みたいな話だ。まさか、俺と沙彩が付き合えるなんてな。

 あまりの浮かれっぷりに


「うーん、今日は最高の日だったな」

 自宅に帰った後、無事、沙彩と付き合えることが出来たので、ニヤニヤしながらベッドに横になって感慨にふける。

 素晴らしい事じゃないか。あんなかわいい子滅多にいないんだから、一生大事にしないとな。

「いや、待てよ……」

 そう思ったところで、昨夜見た夢を思い出す。

 確かあの中では俺と沙彩は付き合って半年で破局したとか言っていた気がするな……。

 夢だったら気にすることはないけど、あれが本当に二年後の未来を見たものだっていうなら、俺と沙彩は長続きしないことに……。


「はっ! 馬鹿野郎、あんなの気にすることはねえだろ」

 所詮は夢なんだから、現実には起こりえないことに決まっている。

 でも何で別れることになったんだろう……肝心なことを聞いてなかったが、どうしたものか。

「ふ、ふふ……いいさ、気にすることはない」

 そんなことを気にしてもしょうがないと言い聞かせて、今日は沙彩と付き合えた余韻に浸らせてもらおう。


 翌朝――

「ん……ふああ……よく寝た……ん?」

 朝になり目が覚めると、妙に布団が狭くて暑苦しく、手に何か柔らかい物が触れていた。

 なんだこりゃ? やけに柔らかくて触り心地が良いが……。

「う……きゃっ! もう、哲史。朝から何やってんのよ」

「え? と、橙子! 何でお前がっ!?」

「何でって、昨夜は哲史と……ほら、早く起きよ」

「――っ!」

 何故か俺の布団で一緒に寝ていた橙子がムクッと起き上がると、一糸纏わぬ姿を俺に晒す。

 こ、これは一体……まさかっ!?


「また二年後に……な、何でだよっ!」

「きゃっ! ど、どうしたのよ哲史?」

 せっかく沙彩と付き合えたと思ったら、また未来に戻され、絶望してしまう。 

 どうなってんだよこれは!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ