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第四話 幼馴染と夜中に……。

「と、燈子とキスをしてしまった……」

 燈子に初めてのキスをされてから胸の高鳴りが抑え切れず、布団にくるまって悶々とする。

 あ、あいつ何て大胆な事を……いや、同棲しているカップルならこれくらい普通なのかもしれないが、俺は燈子じゃなくて沙彩と……。

「だああああっ! ど、どうするんだよ!」

 沙彩と付き合い始めたばかりなのに、別の女と……しかも、幼馴染の燈子とキスしてしまうなんて!

 これって浮気になるんじゃ?

 でもこの世界では俺は沙彩とはとっくに別れているらしいし、何の問題も……。

「ふ、ふふ……そうだこれは夢なんだよな」

 そうだよ夢なんだから、誰とキスしようがどうしようがノーカンに決まっているじゃん。

 きっとこのまま寝て目が覚めれば、この夢も覚めて元通りの時代に戻れるはず。

 必死に自分自身にそう言い聞かせながら深呼吸を繰り返し、眠りに就いたのであった。


 翌朝――

「ほら、起きろー! いつまで寝てんのよ」

「う……もう少し……」

「もう、また? えいっ!」

「ぬおおっ! な、なんだよっ!? って、燈子っ!」

 もう少し寝ていたかったので、布団にくるまっていると、いきなり枕で顔を押さえつけられたので、飛び起きると、燈子が俺の前に跨っていた。

「何だよじゃないわよ。全く……今日は買い物行く約束しているでしょう」

「買い物……というか、何でお前がここに……あ……」

 周囲を見渡すと、俺の部屋ではない。

 しかし昨日の夢で見た燈子との同棲先のアパートの一室そのまんまだったので、もしかして今までのは……。


(夢ではなかっただと?)

 本当に二年後にタイムスリップしちゃったの?

 いや、もしかしたら二年分の記憶がなくなった記憶喪失とか……どっちにしろ、異常事態じゃんこれ。

「どうしたの、また顔色悪いけど?」

「いや、はは……まるで夢みたいだなって」

「何が?」

「お前と同棲していることが?」

「くす、何それ。まさか、悪夢とか言わないでしょうね」

 笑顔でさらりとそんなことを言った燈子にドキっとしてしまったが、限りなく悪夢に近い状況なのは確かだ。

 もちろん、燈子と同棲しているのが嫌って訳じゃなくて、俺の彼女は沙彩であって、しかも半年で別れたなんてこととおまけにいきなり二年後に時間が飛んでしまったので、そんな状況で冷静でいられるわけがないじゃん。


「ほら、朝ごはん出来たから、しっかり食べる」

「はいはい……全く、おかんみたいだなお前は」

「おかんって……哲史がしっかりしないから、そういうことを言われるんでしょ。全く……」

 ちょっと嫌味を言ったつもりだったが、燈子は満更でもなさそうな顔をしてそっぽを向く。

 母親見たいと彼氏に言われてうれしいものなのかね……いや、俺はこの状況を現実を受け入れた訳ではないぞ。

 これは夢なんだきっと。

 凄くリアルだけど、夢でないと説明が付かないだろうよ。


「御託はいいから、顔を洗って朝ごはん食べる。履修登録も明後日までだから、忘れないようにね」

「はーい」

 履修登録とかどうでもいいんだが、ここは燈子の言うとおりにしておくしかないか。


「いただきます。うーん、美味いねー。目玉焼きも作れるんだなお前」

「そんなの自慢にもならないんだけどさ……哲史も少しは料理してよね。私だって毎日、作ってあげられるわけじゃないんだから」

「わかっているよ。努力はする」

「くす、何それ。絶対努力しない言い方じゃない」

 本当に同棲するなら、家事も分担するのは筋なんだろうが、この生活がずっと続くとしたらどうしたものか……。

 これが現実で俺が記憶喪失とかになっているってなら、燈子にはこのことを正直に話す必要があるんだが、昨日ネットで調べてもそんなことがあり得るとは思えない。

 だって寝て起きたら二年後に時間が飛んでいるんだぞ?

 意識不明になっていたとかってならともかくそうじゃないんだからさ……。


「ご馳走様。洗濯機回したら、ちゃんと干しておいてね」

「はーい」

 朝食を食べ終わった後、洗濯機に服や下着を入れていく。

(燈子のブラジャー……)

 当たり前だが、同棲している燈子の下着なんかも洗わないといけないが、よくもまあ俺に頼めるな……まあ、彼氏だってなら恥ずかしくもないのかな。

 そういや、昨日は燈子とキスをしてしまったが、もしかして俺達って何度もキスを……いや、それ以上も?


(おいおい、まさかな……)

 でも付き合って一年は経っているらしいから、そうなってもおかしくはないけど、流石に聞く勇気はないな。

「洗濯終わった?」

「え? ああ……ちょっと待ってて」

「んもう。ちゃっちゃっとやる。ほら、私も手伝うから」

「悪い。お前の下着に見とれちゃってさ」

「あんた彼氏でもそういうのセクハラになるから気を付けなよ」

 うーん、やっぱり付き合っていても駄目なんだな。

 ま、今はそんなことはどうでもいい。今の状況をどうするか最優先だ。


「きゃー、色々、そろっているわね。今日の夕飯、何が良い?」

「お前に任せる」

「少しは食べたいものリクエストしなよね。そうだなー……今日はハンバーグでも作ろうかな」

 近所のスーパーに二人で買い物に行き、食材やら日用品やら買っていく。

 こうして二人で並んで歩いていると、本当にカップルか夫婦みたいなんだが……うう、俺が望んでいるのはこういう未来ではないんだよな。

「これとこれ……あ、食パンも買っておかないとね。哲史、他になんか買いたいものない?」

「いやー、よくわからん」

「自分の事なんだからさー。ま、足りなくなったら買えばいいけど。午後は私、サークルの見学に行くけどあんたは?」

「サークル? 何入るの?」

「何って、バスケのサークル入るって言ったじゃない。あんたは入らないの?」

 そんなの入るとは初耳だが、まあ活動的な燈子らしいわな。


「うーん、ハンバーグ我ながら良くできたわ」

 買い物が終わった後、燈子は大学に行ったりして色々と用事を済ませ、その後、夕飯も燈子の手作り料理をいただく。

 何だかこの生活にもだんだんと慣れてきてしまったな……しかし、この生活いつまで続くのか。

 最悪の事態として、今の状況がずっと続くことを覚悟しないといけなくなり、そうなると燈子にいつ記憶喪失だがタイムリープを打ち明けるかが問題になってきた。


 夜中――

「ふわあ……そろそろ寝るか……」

「哲史、ちょっといい?」

「ん? 何だよ?」

 そろそろ寝ようと思い、布団を敷くと、燈子が部屋に入ってきた。

「その……今日さ……しない?」

「は? 何を?」

「――っ! い、言わせないでよ! 同棲始めてから、その……してなかったしさ」

「だから、何を……――っ!?」

 照れ臭そうに言ってきたので何のことかと聞きなおすと、燈子が着ていたパジャマのボタンを外して、下着姿を見せる。

「お、おい……」

「だからさ……今夜、哲史としたい。よ、夜の営みを……」

 と顔を真っ赤にして、声を上ずらせながら、燈子が言い、俺もその言葉を聞いて呆気にとられる。


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