第二十五話 二人の将来が変わってきた?
「お待たせ」
「おう」
燈子と付き合い始めてしばらく経ち、日曜日にまた二人でデートする約束をして、待ち合わせ場所で待っていると燈子が時間ギリギリになってやってきた。
「へへ、どう似合う?」
「何が?」
「何がじゃないわよ。新しいワンピース買ったの。可愛いでしょう」
「あ、ああ……」
一瞬、何のことか理解できなかったが、新しい服を着てきたのね。
正直あんまりファッションにこだわりがないので、燈子の服を見てもよっぽど変じゃない限りはきにならなかった。
「あんたさー、もうちょっと彼女のファッションくらい、チェックしておきなさいよ。私が変な格好をしたら、哲史だって嫌でしょう」
「いやー、はは……そうだけどさ。お前、普段センスのいい服着ているじゃん」
「ふん、おだてても無駄。そういう哲史は付き合ってからも、着ている服、殆ど変わってないわねえ。彼女の前だから、格好つけたいとか思わないの?」
「別に今更だろ。少しは気を遣っているつもりだけどさ」
彼女と言っても幼馴染の燈子なので、あまり服装に気を遣うとかそういう気も起きないんだよな。
友達の延長……みたいな感覚が未だに抜けなくて、どうも彼女が出来たって、特別感がないんだよなあ。
「哲史は彼氏としての自覚足りないわよ。私だから良いようなものの、他の女子だったら、確実に幻滅されているわ。間違いなく」
「どうだか」
「そうよ。ほら、行くわよ。今日は服を見に行くわ。あんたの服をこの燈子さまがコーディネートしてあげる」
「偉そうに……」
と言って、燈子は俺の腕を引っ張っていき、デートが始まる。
何というかところん世話焼きな彼女ですなあ。ま、俺としては楽ではあるんだけど、あんまり甘えすぎないようにしっかりしないと。
「うーん、どれが良いかしらね……」
二人で街にあるショッピングモールの中にある服屋に入り、燈子が俺に似合いそうな服を物色する。
と言っても、俺に似合う服ね……ぶっちゃけ、服なんて着れれば良くないって思うんだけど、やっぱり彼女の前くらいは格好つけた方が良いのかねえ。
「これなんかあんたに似合うんじゃない」
「おお、良いかもな」
「じゃあ、買いましょうか」
「お前が金を出してくれるのか?」
「あのさー……誰のためにやっていると思っているのよ。哲史のそういう態度も減点ね。今ので私の好感度がかなり下がったわ」
冗談で言ったのだが、燈子の心象は悪くなってしまったようで、思いっきり釘を刺される。
「哲史も少しはデリカシーを身につけなさいよ」
「わかっているよ。でも、金がないんだよな……」
「甲斐性ないわねえ。これじゃ、将来は心配だわ。一緒に住むことになったら、私、苦労しそう」
「一緒にって……」
「あら、卒業したら一緒に住む約束したでしょう。まさか、冗談とか言わないわよね?」
あの話をすっかり真に受けてしまっている燈子であったが、まあ仮にそうなっても構わないと思っている。
既に実体験済みだしな。
「うーん、今日は暑いわねえ……ね、今度花火大会に行かない?」
「ああ。良いかもな」
買い物を済ませた後、近くのファストフード店に行き、昼食を摂る。
結局、買っちまったよ……
「決まりね。ウチらも来年は三年だから、色々と忙しそうだしさ。遊べるの今年が最後かもしれないわよね」
そっか、来年は高三だから受験で忙しくなるわな。
というか、本当に俺と燈子は同じ大学に行くのか?
悪くはないんだけど、何ていうか……もう少し、ランクの高い大学に行きたいなーって思ったりするんですけど。
「卒業したらどうするか決めた?」
「進学はすると思うけどな。お前は?」
「私さ、将来、ファッション関係の仕事したいって思っているの。デザイナーとかさ」
「ファッション関係の?」
燈子がコーヒーを飲みながらそう言ってきたが、初耳なのでビックリしてしまった。
「そう。だから、服飾関係の大学か専門学校に行きたいと思っているのよね。家から通える範囲にあれば良いんだけど、でないと一人暮らしになるかなー。哲史と同じ大学行ければ良いなと思っていたけど、やっぱり難しいかも」
「へえ……良いんじゃないの」
もちろん、燈子が卒業後の進路をどうしようが、俺はもちろん反対はしないけど、あれ?
そうなると、あの未来での夢はどうなるんだ?
俺と燈子が同じ大学に行って同棲するとかいう……まさか、嘘だったり。
「哲史は大学行くんでしょう」
「ま、まあ行ければ……だけどな。でも、服飾関係の学校って、この辺にあったかな?」
「探せばなくはないんだけど、うーん……やっぱり、東京の方の大学か専門学校に行って学んだ方が良いのかなって。同じ学校じゃなくても、近くだったら、哲史と同居しても良いんじゃないかなって思って。あはは、そういうの嫌かな?」
「いや……良いと思うぞ。同じ部屋なら、家賃の節約にもなるんじゃないの。知らんけど」
実際、そんな理由であの夢では同棲していた気がするので、仮に違う学校でも同じ都内か県内の学校とかなら、一緒に住んでも良いはず。
てか同じ大学に行ってても、学部が違ったから、思っていた以上に一緒に居られる時間も少ない感じだったしな。
「でも、ファッション関係の仕事がしたいなんて、急にどうした? 前から興味あったのか?」
「まあ、あったと言えばあったんだけどさ。哲史や私に似合う服をどうするか考えていたら、そういう仕事が良いかなってふと思い始めて。はは、何か急だったかな?」
「別にいいじゃん。俺はどうするかな……デザイナーとかは無理だけど、うーん……」
将来どうしたいかとか、未だに具体的なイメージがわかないなあ。
子供の頃はプロ野球かサッカー選手とか言っていた気もするけど、今更そんなのは無理なので、どうしたものか。
「まあ、まだ焦ることはないんじゃない。先の事だしあるんだし」
「そうだな……」
「ふふん、そんなに卒業したら私と一緒に住みたいの?」
「いや、まあ……付き合っているなら、二人きりで住みたいってのはあるだろ」
「そ、そうね。わかったわよ。じゃあ、卒業したら同棲してあげるから、進路は私たちの家から通える場所にしようね。東京とかの大都市なら、選択肢も広がるだろうからさ」
「おう。そうするか」
どうもあの未来の夢とは違った進路になりそうだけど、これはあの燈子モドキから見たら良いのか?
俺と燈子が付き合ってくれさえすれば後は好きにしろって事なのかもしれないが、何か釈然としない。
あれから夢であの少女と出会うことはないし、未来に飛ばされることもないが……。
「あのさー、燈子」
「何?」
「俺達って、大昔に結婚の約束とかしていたっけ?」
「な、なによいきなり?」
「いや、はは……子供の頃にそんなのしたような気がしたんだけど……あったかな?」
「覚えてないわよ。あったとしても、そんな小さなころの約束なんて意味あると思う?」
「だよな」
燈子がフライトポテトを食べながら、そう答えるが、燈子も覚えてないとなるとあの燈子モドキは何なんだ?
守り神とかなんとか言っていたけど、うーん……わからん。
「子供の頃がどうだろうが、関係ないじゃない。それより、午後は何処に行こうか? 今はそれが一番大事な事でしょう」
そうだよな。記憶にも残ってないような約束なんぞに囚われても意味はないか。
と思い直して、燈子と少し早めの昼食を済ませていき、二人のデートを楽しんでいったのであった。




