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第十八話 未来の彼女は頼りになる

「な、なんてこった……また、未来に飛んでしまうとは……」

 もはやこれは呪いとしか言いようがない。

 燈子の告白を断ろうとしたとたんに、こんな事が起きるって……あいつの仕業だな!

「どうしたの? 気分悪いなら医者に行く?」

「いや、気分が悪いわけじゃないんだが……燈子さ。前に俺に告白した時、俺は断ったよな?」

「え? ああ、高二の時だっけ? うん、やっぱり沙彩に振られたばかりで無神経だったよね。悪かったとは思っているよ。でも、いきなりどうしたの?」

 やっぱり、歴史が塗り替わっている。

 ということは今の世界では俺は沙彩とはそもそも付き合ってすらいなかったということか。


「ちょうどその時の夢を見ちゃったって言うかさ」

「なーんだ。そんな事。別にこっちも今は気にしてないよ。むしろ、悪いのは私の方だと思っているしさ」

「別に燈子は悪くないよ。それで、どうして付き合うことになったんだっけ?」

「ラインで付き合おうかって軽くいったら、あんたがOKしたんじゃない。そんな事も忘れたの?」

 おいおい、結局ラインでの会話がきっかけかよ。

 沙彩にフラレた所は違うけど燈子と付き合い始めたきっかけと時期は同じって、どう足掻こうが、燈子と同棲する未来が待っているってこと?


「は、はは……何だよこれは……呪いか何かか?」 

「何、失礼な事を言っているのよ。さっさと着替えなさい。大学に遅れる」

「はーい……」

 未来に戻ったことがショックだった訳じゃない。

 何をどうやっても燈子と結ばれる運命にあるって俺に言いたいのか?

 くそ、どうしてだよ……燈子は嫌いじゃないけど、これはいくら何でも理不尽すぎやしないか?


「ほら、スクールバスもう来ているわよ」

「わかったよ、あんま引っ張るな……って、めっちゃ並んでいるな」

 あまりの理不尽な展開に蹲っていたが、おっせかいの燈子は俺にそんな悠長なことも許さんとばかりに、さっさと支度をさせて、部屋から連れ出していく。

 今すぐにでも戻りたかったが、仕方ない……燈子とやるのは今夜までお預けだ。

「本当ねえ。これ乗れるかしら? まあ、五分もすればまた別のバスが来ると思うけど、朝は毎日、こんなみたいねー」

 駅前のバス停に行くと、既に同じ大学の学生の行列が出来ており、なかなか乗れそうになかった。

 なんだかなあ……高校生になったら大学生になったりと忙しくて、切り替えが全くできない。


 てか、これは本当に夢なのか未来の自分のなのかそれすらいまだにわからないんだよな……確かめる方法は……。

(そうだ、過去の出来事をネットで調べてみれば……)

 二年後の世界だって言うなら、高二から今の時代までの二年間の出来事を調べて、その通りに起きていたなら確定ってことか?

「あ、乗れそうだよ。ほら、早く」

「あ、おい」

 何て考えていると、俺たちの順番になったので、燈子に手を引かれてバスに乗り込む。

 そんなことを考える暇もなく、大学生活を強制的に体験させられることになってしまうのであった。


「えっと、教室は……くそ、キャンパス広くて、移動が面倒だな」

 今日は一限から三限まで授業が入っているらしく、しかも授業の内容がさっぱりわからんし、授業が終わるたびに教室が変わるので結構面倒だ。

 一時間目は英語で、俺でもどうにか付いていける内容だったけど、二時間目のなんちゃら基礎経済論とかいうのはさっぱりだったし、学食もアホみたいに混んでいて、燈子とも落ち合うことが困難だった。

 というか、あいつはもう友達を何人か作っているみたいだが、社交的な奴は良いなあ……どこ行ってもすぐ友達作れるのは武器だよ。


「はああ……ちょっと、休むか」

 近くのベンチに座り、スマホをぼんやりと眺める。

 次の授業までまだ少し時間あるし、スマホで色々と過去の事を確認してみよう。

 といっても何を調べるかな……今の総理大臣は誰だ?

 これはネットで調べてみれば、すぐにわかるだろうと思い検索をかけると、

「って、変わってないのかよ」

 スマホで検索を今の総理大臣を検索したら、高二の頃と変わってなかったっぽいので、ガクッとする。

 あまりニュースとか見ないんだけど、確かまだ就任したばかりだったんだっけな。

 二年くらいでそんなに変わらないのか……後は、どうしよう。

 競馬の勝ち負けとかわかれば、帰った後にぼろ儲けできそうな気もするが、あまり記憶力もないので、覚えてられるかどうか……。


「あ、哲史。何ボーっとしているのよ」

「燈子」

「あんたも三限入っているんでしょう。そんなボーっとしていて大丈夫?」

「ああ……多分」

「多分ってさあ……哲史、あんた最近、ボーっとしすぎ。まるで、小さな子供みたいじゃない。あーあ、私が付いてないと何も出来ないのかしら」

 燈子が溜息を付きながら、俺の隣に座る。

「ふふ、ベンチはたくさんあるから、座れる場所がいっぱいあるのは良いわよねー。あんた、友達の一人は出来た?」

「さあな」

 どうせすぐに元の時代に戻るつもりなので、ここで友達なんぞ作っても意味はない。

 というか、授業に出る意味も本当ならないんだよな……大学の授業って、どうも出席を取るのと取らないのがあるみたいなんだな。


 二年ほど早く大学生活を経験してしまったが、ハッキリ言って迷惑極まりない。

 まあこれが本当に現実なのかわからないけどさ。

「悩みあるの? 相談に乗るよ」

「お前の事でちょっとな」

「私の? 何よ、だったらなおさら言ってよ」

「そうだけどさ……お前、俺に何かしてないよな?」

「何かって何よ?」

「超能力とか……」

「アハハハ、変な夢でも見たの? 超能力なんてのがあったら、私、遠慮なく使いまくっているよ。今頃、インフルエンサーになっているって」

 と笑いながら言うが、燈子なら遠慮なく使っているね。

 俺の知っている燈子は実際図々しい女なので、超能力なんてのがあったら、悪用しまくっているだろうな。


「あ、そろそろ行かないとヤバいわね。んじゃ、私はこれで。今日は先に帰っていて。サークルの集まりあるからさ」

「ああ」

 軽く雑残した後、燈子は俺の前から立ち去り、俺も教室へと向かう。

 何だかんだで今日は真面目に授業を受けてしまったが、とにかく元の時代に戻ることを最優先させないとな。


 夜中になり――

「今日は燈子、遅いな……」

 サークルの集まりがあると聞いたが、夜の七時過ぎになってもまだ帰ってこない。

 今日の夕飯はコンビニ弁当でも食べてくれと言われたので、そうしたけど、一人で食うのも何か寂しいなあ。

 ま、一人暮らしの奴はみんなそうなんだろうけどさ。

「ゴメン、遅くなっちゃった」

「あ、燈子」

 弁当を食べようとしたところで、燈子が大学から帰ってきた。


「何だ、まだ夕飯食べてなかったんだ」

「ああ、ちょっと待っていたんだよ」

「へえ……そんなに私と食べたかったんだ」

「別に……まあ、一人は寂しいと思ったから」

「あ、そうだったんだ。えへへ、全く世話が焼けるわねえ。言っておくけど、明後日からバイト入っているから、もっと遅くなるからね」

 と言いながら、燈子は荷物を置いて、洗面台へと向かう。

 一人でいるより、燈子といた方が何となく安心はするなあ……燈子と付き合えば、ずっとこういう生活が続くって事か。






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