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第十七話 告白の返事をしようとしたら……

「あ、哲史ー、おはよ♪」

「よお」

 翌朝、いつものように自転車を漕いで学校へと向かい、その途中で燈子と落ち合う。

「今日もおそーい。私が遅刻したらどうするのよ」

「一人で行けって何度も言っているだろ。ったく」

 別に時間的にはまだ余裕があるはずだが、燈子は俺の自転車の荷台に当たり前の様に乗る。

「えへへ〜〜……ほら、早く出発する」

「ちょっ、あんまくっつくなよ」

 荷台の後ろに乗ると燈子はいつにも増して俺に密着し、ぎゅっと後ろから抱きついてきた。

 これ、もしかしなくても俺にアプローチしてきてる?

 普段なら大して気にもならないだろうが、昨日燈子から告白されてしまったので、どうしても意識しちゃうじゃないか。


「ねえ、哲史」

「何だよ?」

「昨日の返事、まだ?」

「ぶっ! ここでしろってか?」

 燈子を乗せて信号待ちをしている間に、燈子が返事をせがんで来たので、思わずひっくり返りそうになる。

「出来るだけ早く返事してって言ったじゃん。もう一晩経ったんだけど」

「それは……もう少し待ってくれ、まだ気持ちの整理が付かないから」

「ふーん、沙綾のこと、まだ踏ん切り付いてないんだ」

「そういう事じゃない。とにかくもうちょっと待ってくれって」

「ハイハイ。ほら青になったよ」

 まさかここで返事の催促をしてくるとは思わなかったが、確かに早めに返事はしないとな……。

 沙彩のことは今更、どうこう言っても仕方ないのはわかっているけど、だからってフラれた直後に他の女子と付き合っちゃうのは何か罪悪感がある。


 ましてや沙彩の友達の燈子だしなあ……三人の関係が気まずくならないと良いんだが、それより燈子と付き合って良いものかどうか。

(どうしてもあの未来の夢が気になるんだよな……)

 あの夢だかタイムリープで見た燈子と同棲している未来は何を意味しているんだか。

 それにあの燈子もどきの女の子。まるで、燈子と付き合うことを俺に強制しているみたいで気に入らない。

 別に燈子が嫌いなわけじゃないけど、沙彩との交際や告白を邪魔してまで、燈子と俺を付き合わせようなんてのはどういう思惑があるんだよ。

「あ、沙彩だ。おはよー」

「燈子ちゃん、哲史君。おはよう」

 校門近くまで自転車を漕ぐと、沙彩が歩いており、自転車を一旦停めると、燈子が自転車から下りて沙彩に駆け寄る。


 はあ……やっぱり沙彩は可愛いな……フラれてしまったけど、一時的にでも付き合えるものならやっぱり付き合ってみたい。

 夢だと半年くらいは付き合っていたんだろ?

 あの女のせいで妨害されてしまったが、上手く行くかどうかなんて、何であんな訳の分からん燈子モドキの女に決めつけられないといけないんだ。

「実はさー、昨日、映画観に行ったんだ。哲史と」

「え? 哲史君と」

「うん。へへ、楽しかったよね」

「あ、ああ……」

 燈子が沙彩にいきなり、昨日俺と映画を観に行ったことを話し、ドキっとしてしまう。

 いや、沙彩とは別に付き合ってないんだから後ろめたく思う必要はないんだけど、燈子の奴、ちょっと大胆というか無神経過ぎない?

 お前だって関係はしているんだし、沙彩は親友じゃないのか?


「そうだったんだ。私も見てみたいなー」

「うんうん。今度は沙彩とも一緒に行きたいな、私も」

 と、ちょっと気まずそうな笑みで沙彩はそう答える。

 うん、まあそう答える以外はないよな。

 俺と沙彩は何か気まずそうな空気のまま学校へと向かい、教室へと入っていった。


「であるからして、この構文の意味は……」

 授業中も燈子の事が気になってしまい、上の空のまま、黒板の書いてある英文をノートに書いていく。

 確か中間テストも近いんだが、今はそれどころじゃなくなっているんだよなあ。

 勉強もしないといけないんだが、その前に燈子への返事を済ませて後腐れないようにしないとな。


「あのさー、沙彩。今日は……」

 帰りのホームルームも終わり、燈子は沙彩のところへ向かい話をはじめる。

 幸いにも学校では俺に返事を催促することはなかったが、明日にでも返事をしなければ。

「どうするかな……」

 一人通学路を歩いていき、燈子と付き合うかどうか悩む。

 あいつのことは嫌いじゃないし、彼女として付き合えば楽しいかもしれないってのは、昨日のデートでもそれは感じたな。

「しかし、しかしだ……」

 どうしても引っかかってしまうんだよ、やっぱり。

 何だか人ならざる者が思いっきり介入して、燈子と付き合わせようとしているんだ。

 それに沙彩の事もまだ……よし、決めたぞ。


「燈子には悪いけど……」

 気持ちは凄くうれしいが、やっぱり断る。

 沙彩の事もまだ踏ん切り付いてないし、何よりあのへんな燈子モドキの事がどうしても気になってしまう。

 今からラインで……いや、明日、燈子に直接言うか。

 朝に会ったときにでもゴメンなさいと言えば良いな。

 本当にこれで良いのかって気持ちもなくはないけど、今のモヤモヤした気分のまま、燈子と付き合うのはやっぱり無理だしな。

 そう心に決め、明日ハッキリと燈子に断りの返事をすることにしたのであった。


 翌朝――

「哲史……哲史」

「んーー……」

「ほら、起きなさーいっ! もう大学に行く時間でしょっ!」

「うおおっ! な、何だよ……まだ、時間は……えっ!?」

 いきなり布団の上で転がされ、何事かと飛び起きると、何故か燈子が目の前に立っていた。

「やっと起きたー。今日から授業始まるんだから、さっさと起きる」

「と、燈子っ! 何でお前がここに?」

「何でって、ここ私らの家じゃない」

「私らの……はっ!」

 どうして燈子が俺の部屋に居るんだと思ったが、辺りを見渡して、いつもと部屋の様子が違うことに気が付く。

 ここは俺の部屋じゃない……いや、でもこの部屋は見覚えがある……まさかっ!?


「あんたさー、今日は一緒に大学に行けるから、起こしてあげられるけど、これからはそうも行かないんだからね。始業時間も曜日によって違うし、私は今週からバイトやサークルもあるんだから……」

「今、何日……四月……えっと……もしかして、俺達、同棲中なの?」

「哲史さー、まだ寝ぼけているの? 最近、本当おかしいよね。ふふん、こんな可愛い彼女と同棲しているなんて夢見たいでしょう」

「は、はは……何で、こうなるんだよ……」

 まさか、またも燈子と同棲中の未来に飛ばされるとは思わず、その場で脱力してしまう。

 どうしてだよ……何でこんなことになるんだよ、おいっ!


(あの女の仕業か……?)

 燈子の告白を断ろうとしたから、俺をまたこの未来に飛ばしたって?

 どうしてここまでして……くっ……。

「朝ごはん出来ているから、早く食べな」

「あのさ燈子。俺達、付き合ってどれくらいだっけ?」

「ん? 一年くらいじゃなかった?」

 一年……今、大学一年だから一年前は高校三年の頃?

 ということは高二のあの時に燈子との告白を断っても、また高三になったら付き合うことになるってか?

 あ、頭が痛くなってきた……。


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