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第十五話 失恋後に幼馴染とデートに

「本当にゴメンね! そ、それじゃあ……」

「あ……」

 まさかの失恋に呆然としていると、沙彩は申し訳なさそうに深々と頭を下げた後、逃げるように屋上を後にする。

 そんな……じゃあ、あのタイムリープでの告白は?

 OKしてくれたのはやっぱり夢だったの?

「うう……まさか、こんなことになるとは……」

「哲史ー。何やっているの、こんな所で項垂れて」

「燈子……」

 あまりのショックでうずくまっていると、燈子が屋上に入ってきて俺に声をかけてきた。


「あー、はは……その様子だとアレだったみたいね」

 俺の様子を見て即座にフラれたことを察したのか、燈子は俺の頭を撫でながら、

「よしよし。ショックなのはわかるけどさ。告白して想いを伝えただけでも偉いよ。あんたにしては勇気を出したじゃない」

 と俺を慰めてくれたが、そんな燈子の言葉も頭に入らないほど俺のショックは大きかった。

 だって告白しさえすれば、絶対にOKが貰えると思っていたから……。

 じゃあ、今まで見ていたのはやっぱり夢だったって事か?

 それともあの橙子みたいなガキが何かやったのか?

「ほら、いつまでもウジウジしてないの。いつまでもここに居ても仕方ないんだから、もう帰るよ」

 橙子に抱えられて屋上を後にし、二人で家路につく。 確かにここに


「はい、これでも飲みな。私の奢りだから」

「あ、ああ……」

 帰り道にある公園のベンチに座り、燈子が近くにあった自販機から缶コーヒーを一本買ってきて、俺に手渡す。

「んーー、でも意外だったね。私も沙彩、哲史に気があるんじゃないかなって思っていたんだけどね」

 そう言いながら燈子もコーヒーを手にしながら、俺の隣に座る。

 コーヒーをちょっと飲んだせいか、ようやく気分が落ち着いてきた。

「そんなに沙彩の事、好きだったんだ?」

「悪いか?」

「別に悪いなんて言ってないじゃん。あんたが、そこまで落ち込むのが意外だなって。沙彩にここまで入れ込んでいるとは思わなかったからさ」

 入れ込んでいたか……どうなんだろう?

 夢だかタイムスリップだか知らないが、何度も沙彩に告白して、それまではOKを貰っていたのにここに来てちゃぶ台をひっくり返されてしまい、余計にショックが大きかったのかもしれない。


 考えてみたら、あれが夢だったら沙彩がOKしてくれたのだって自分の願望が見せた夢だったってだけなのかも。

 だって沙彩は学校でも一、二を争うレベルの美少女で成績も優秀だし、俺なんかじゃ全然釣り合いが取れそうにないスペックだもん。

 そんな沙彩が俺からの告白をOKしてくれるなんて、常識的に考えたら有り得ないわけで……じゃあ、あの夢は?

「まあ、私ももうちょっとフォローできればよかったんだけどね。あんたが沙彩の事、好きなのは知っていたからさ」

「別にお前にフォローしてもらおうとは思ってないけどさ……」

「幼馴染でしょう。告白する前に相談してくれれば、色々と関係を取り持ったりはしてあげたわよ」

 そうやって傷心の俺の心を傷つけないように言ってくれる燈子がとてもありがたく感じてしまった。

 ああ、そういや夢であの燈子もどきも言っていたな。今のままだと、俺と沙彩だけじゃなくて燈子も傷つけちゃうって。

 燈子なりに責任を感じさせてしまったのであれば、そこに関しては悪かったと思っている。


「ほら、もう帰ろう。今日一日くらいはウジウジと涙流しても良いから、明日も教室で沙彩に会うんだから、その時もウジウジしていたら、あの子に悪いでしょう」

「ああ……」

 コーヒーを一気飲みした後、燈子が俺に向かってそう言い、俺の手を取って公園の外へと引っ張っていく。

 何だかんだで俺の事を考えてくれているからいい奴だよな……燈子が幼馴染でよかったと思っているけど、今はこの失恋のショックがデカすぎて、何も考えられないのが現実だ。


「はーあ……まさか、こんなことになるとは」

 ようやく家に帰り、自室のベッドにダイブして蹲る。

 告白すれば絶対にOKしてくれるとばかり思っていたから、まさかの展開に放心状態になっていた。

 はあ……何でこんな事に……これは夢なのか?

 だったら早く覚めてほしいが、最近やたらと非現実的な体験をしていたので、これが夢なのか現実なのかもわからなくなって来ていた。

 くそ、どうなっているんだよ本当に!

 なんだか偉く理不尽な目に合ったきがして無性に腹が立って仕方ないが、沙彩を責めてもしょうがない。

 明日から沙彩とどんな顔して話せばいいのか……告白なんかしなきゃ良かったのかと自問しながら、傷心の一夜は過ぎていった。


 翌朝――

「あ、沙彩……」

「哲史くん」

 教室に入ると、バッタリと沙彩と目が合ってしまった。

 くそ、顔を見ただけで昨日の事を思い出してしまう。

 何とか吹っ切れないと……。

「お、おはよう」

「おはよう」

 取り敢えず挨拶を交わし、そそくさと自分の机へと向かう。

 はあ……失恋ってこんなに気まずい空気になるもんなんだなあ。

 しかし、いつまでも引きずってはいられないので、一日でも早く忘れなければ。

「なーに、暗い顔しているのよ。らしくないわね」 「燈子」

 席に座って悶々としていると、燈子が俺の肩をポンと叩いてきた。

「そんなにショックだったの? 全く、そんなに引きずる性格だとは思わなかったわ」

「ほっとけ」

「拗ねないの。しょうがないわねー。あんた、今度の日曜日暇?」

「予定はないけど?」

「フフン、これ」

 燈子が得意気な顔をして、二枚のチケットを見せる。


「日曜日、二人で映画でも観に行かない? ちょっと遠出になっちゃうけどさー。気晴らしには良いでしょ」

「お前と?」

「うん、私と。こんな可愛い幼馴染が誘っているんだから、ありがたく思いなさいよ」

 俺に気を遣ってくれたのか、燈子は俺をデートに誘ってくれた。

 これは受けるべきか、断るべきか……。

「ほら、行かないの? 行かないなら、他の子を誘うけど」

「わかったよ。付き合ってやるよ」

「何、その偉そうな態度。じゃあ、日曜日、約束だからね」

 そう言った後、始業のチャイムが鳴り、燈子は自分の席に戻る。

 あいつなりに気を遣ってくれたんだろうが、また燈子とデートする事になってしまい、複雑な気分になる。

 まさか、燈子の奴、本当は事情を知っているのでは……?

 そんな疑念も出て来たが、まあ気晴らしに付き合ってやるか。


 日曜日――

「あ、こっちこっち」

 待ち合わせ場所の駅前に行くと、燈子が手を大きく振って俺を招く。

「遅いよ、ギリギリ」

「ギリギリなら良いだろ」

「女子を待たせるんじゃないの。ほら、行くよ。今日は哲史の慰めデートなんだからね」

「あ、おい」

 燈子は俺の腕をガッシリと組んで引っ張っていく。

 腕に燈子の胸が思いっ切り当たっているんだが……やっぱり燈子のおっぱいかなりデカイんだな。



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