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第十四話 いつもと違う展開?

「お前は誰だ? 燈子じゃないな」

 子供の頃の燈子の姿をしているが、こいつは燈子じゃない。

 直感的にそう思ったので問い詰めると、少女はクスっと笑いながら、

「私は燈子だよ。見ればわかるじゃない」

 と言うが、橙子とは明らかに雰囲気が違う。

 あいつはこんな得体のしれないオーラを纏った女ではない。

「まあ、信じないなら別にいいけどさ。あなたは今、橙子と付き合ってデートしたのが夢だと思っている?」

「さあな。夢かどうかはわからない。だけど、普通の夢じゃないってのはわかるな。お前の仕業だったんだな?」

「うーん、私の仕業と言えばそうなるのかな?」

 俺の問いにしらばくれったような態度で答えるが、やっぱりこいつは燈子ではない。

 燈子の姿を借りた何か得体の知れない存在だ。


「あなたは燈子の事、好き?」

「好きか嫌いかって聞かれれば好きだな。だが、あくまで幼馴染としてだ」

「今はそうなんだろうね。でも、未来の燈子を見てもまだそんな事が言える?」

「それは……」

 一年後、二年後の俺と付き合っている時の燈子は確かに可愛い。

 理想的な彼女と言っても良いレベルだし、幼馴染だから気兼ねなく接する事が出来るってのがいきなりタイムリープされても助かった点だ。

 だがこんなのは明らかにおかしいし、燈子にだって迷惑なはずだ。


「沙彩の事、そんなに好きなんだ。でも上手くいかないよ。だったら、燈子でよくない?」

「上手くいくかどうかを何でお前が勝手に決めてんだよ。そんなのは俺と沙彩の問題だろうが」

「そうかもね。でも燈子も二人が傷つくのは見たくないんだよ。仲を取り持ったのに、上手く行かなかったから、燈子自身も傷ついたの。それわかっている?」

「それは……」

 最初の世界では燈子に告白のおぜん立てをしてもらったから、確かにその点に関しては悪かったとは思う。

 でもまだ俺は沙彩と付き合いたいのだから、こいつのやっていることはおせっかいどころの話じゃない。

「とにかく、俺は沙彩と付き合いたいんだから、邪魔をするな。お前、燈子じゃないんだろう? だったら、関係ないじゃないか」

「私は燈子だよ。あの子の幸せを第一に考えているの。それにあなたが関わっているんだから、無関係なんて事は絶対にないと思うんだけど」

「俺が関わっているって、俺と燈子を付き合わせて、どうするんだよ?」

「私は燈子に幸せになってほしいだけだよ。それだけ」

 燈子の幸せを第一に考えているのはわかるけど、俺の意思をちゃんと考えてほしいんだけどなあ。


「あの子と付き合えば、それだけで幸せになれるんだから、別にいいじゃない。何が不満?」

「不満かどうかはお前が決める事じゃないね。早く俺を元の時代に戻してくれ。もう未来に飛ばされるのは懲り懲りなんだよ」

 いきなり大学生の年齢に飛ばされた挙句に、燈子と同棲しているなんてトンデモ展開、誰だって付いていけないっての。

 しかし、燈子の姿をした訳のわからん存在に俺は遊ばれていたということか……実に不快だ。

「元に戻しても良いけどさあ。今のまま戻しても運命は変わらないよ」

「運命なんて俺の力でどうにでもしてみせるよ」

「燈子はどうするの?」

「あいつは……燈子はしっかりしているから、別に俺がいなくても平気だろ」

「本気でそう思っている? 同棲しているとき、どれだけあなたを想っていたか身をもって体験したでしょう」

 いちいちうるさい女だな……確かに同棲しているときの燈子は可愛かったけど、だからといって、沙彩と付き合うなって一方的に決めつけられるのは納得いかない。


「お前、マジで何者なんだよ。神様とか言わないだろうな?」

「あなたが神だと思っているなら、そうなんじゃない? 神的な何かだと理解した方が早いかもね」

 夢だがタイムリープだか知らないが、俺にいやがらせをしやがって。

「それで、俺に何でこんなことをしやがったんだ? 燈子とどういう関係なんだよ? あいつはお前の事を知っているんだな?」

「燈子に聞いても、私の事は知らないと思うよ。だから、あの子を責めても意味はないね」

 なるほど、燈子が知らない奴ではあるのか。

 取り敢えず、燈子が関わっていることはないみたいなので、そこだけは安心した。

「こんなチャンスは二度はないと思ってね」

 燈子の姿をした少女がそう言って、パチンっと指を鳴らすと、視界が歪み始める。

 何だこれは……気分が悪い……意識が……。


 ……

 …………

「はっ! ここはっ?」

 目を覚ますと、そこは俺の部屋であったので飛び起きて、スマホで日付を確認する。

「五月の……もとに戻ったのか」

 日付を見ると、どうやら沙彩に告白する前にまた戻ってしまったみたいで、がっくりと項垂れる。

 おいおい、また沙彩に告白しないといけないのかよ。

 もういい加減に時間を進めさせてくれよと、うんざりしてしまったが、とにかく仕切り直しだ。

 将来どうなろうが、沙彩に告白すればOKが貰えるのはわかったので、また告白してやるぜ。


「おはよー」

「おう、おはよう」

 自転車を漕いでいくと、いつものように燈子が俺に手を振って出迎える。

「遅いって。ほら、出発」

「だから一人で行けって言っているだろ」

「いいじゃん。ケチ臭い男ね。男なら可愛い幼馴染くらいしっかりエスコートしなさいよ」

 彼女ならともかく幼馴染で何でそんなに偉そうにしているんだか。

 やっぱり、あの燈子は本人じゃないのかな……そうだよ、あんな可愛らしい女のはずがないんだよ。

 だからあれは夢だ夢。


「ところでさ。あんた、今日本当に沙彩に告白するの?」

「え? ああ、言っただろ。するよ」

「へえ。あんたがねえ。女子に告白なんて男らしいことするようになったじゃない。ま、頑張りなさいよ。駄目でも責任取らないけど」

「別にお前に責任なんか……」

 取ってもらうとは思っていない。

 俺は俺の想いを沙彩に伝えるだけさ。


 放課後――

「あ、哲史君……どうしたの話って?」

「えっと、その……」

 約束通り、燈子に沙彩を屋上まで連れてきてもらい、告白のおぜん立ては整う。

 あとは勇気を出すだけだ……これで何度目だかも忘れちまったけど、やっぱり告白は緊張するなあ。

「その沙彩……今、好きな男とかいる?」

「え? い、いないけど……」

「じゃあ、その……俺と付き合ってくれないかっ! ずっと沙彩の事、気になっていて……」

「――っ!」

 よしっ! 言えたぞ! 後は返事を待つだけだ。


「て、哲史君……その、本気?」

「ああ。もちろんだ」

 突然の告白で困惑しているのか、沙彩は動揺を隠せない様子だった。

 は、早くOKの返事を……。

「その……哲史君は良いお友達だと思うし、嫌いじゃないけど……付き合うってなるとちょっと……」

「へっ?」

 思いもよらぬことを口にしてきたので、ビックリして沙彩の顔を見る。

「だから……ご、ごめんなさい」

「…………」

 あれ? い、今なんて言った沙彩?

『ごめんなさい』って言ったような……。

「そ、それって……」

「うん……哲史君とはお友達でいたいなって……」

 改めて聞くと、沙彩は申し訳なさそうな顔をしてダメ押しの一言を告げる。

 え? もしかしてこれ……フラれたっ!? 嘘だろっ!?


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