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第十二話 幼馴染との『初デート』

「な、なんてこった……」

 まさかこんな事になるとは……夢でも本当のタイムリープでも何の呪いなんだよこれは!

「ちょっと、どうしたの哲史? そんな青ざめた顔をして」

「いや……俺達って今、高三なんだっけ?」

「頭ボケちゃった? 大丈夫? 医者に行こうか?」

「そうじゃなえよ!」

 あながち医者に行った方が良いというのも間違ってはいないと思うが、とにかく今はこの状況をどうするかだ。

「ほら、早く行こうよ」

「あ、こら」

 そんな俺の気持ちなんぞ知ってか知らずか、燈子は俺の腕にがっしりとしがみついて引っ張っていく。

 正直、今はデートどころじゃ無いんだけど、もう少し様子を見たいので、橙子とのデートに付き合う事にした。


「ねえ、何処に行こうか?」

「別にどこでも……」

「もうちょっと真面目に考えてよ」

 正直、橙子と二人で遊びに行くのはしょっちゅうなので、今更デートとか言われても、特別行きたい場所もない。

 この辺りは田舎だし、なおさらだよな……てか、沙彩とのデートでは何処に行こう。

 出来るだけ早く元の時代に戻らないといけないので、橙子とのデートを呑気に楽しんでいる場合じゃない。

「哲史がちゃんとリードしてよね。あんたは交際経験あるけど、私はあんたが初めての彼氏なんだから」

「あ、ああ……わかっているよ」

 そういや橙子は今まで男と付き合った経験はないのか……ちょっと意外な気がしたが、どうして俺達って付き合うことになったんだっけ?

 確かラインで付き合ってみないかみたいなことを言ったのがきっかけとか言ったが……。

「ラインでの告白は味気ないって思うかもしれないけど、きっかけなんかどうでもいいじゃん。どんな形でも上手く行く人は行くんだよ」

「そうだな」

 燈子の言っていることは正しいのかもしれないが、じゃあ俺と沙彩はどうして駄目だったんだって話になる。

 相性が悪かったのかな……そんなことはないと思いたいけど、俺には釣り合わなかったとか。


「取り敢えず、そこの店でお茶でもしようか」

 しばらく燈子に腕を組まれながら街の中を二人で歩いていき、目についたカフェに二人で入る。

 トホホ、本当なら沙彩とのデートのはずなのに何で燈子とこんなことをしているんだ俺は。

「何にしようかなー? あ、ここのパンケーキおいしいんだって」

「へえ」

 店に入り二人でメニューを見ながら、二人で注文する料理を選ぶ。

 はあ……これからどうするかな……今すぐにでも一年前に戻りたいけど、どうすればいいのか……。

(この前戻った時は……っ!)

 以前未来にタイムリープした時はどうやって戻ったのか思い出すと、一気に顔が赤くなってしまう。

 と、燈子とセックスしないと戻れないって……まさかね。

 でももしそうだとしたら、俺はそれまで戻れないのかよ。


「ねえ、午後はどうしようか?」

「え? ああ、そうだな……ホテルとかどうだ?」

「は?」

 メニューを見ながら、燈子が午後の予定を聞いてきたので、サラっといつも通りの軽い口調で言ってやる。

「だからー、ホテルだよ。いいだろ、付き合っているんだから」

「…………」

 もし、俺とセックスするまで元の時代に帰さないってなら、ここでやっても問題はないはず。

 流石にドン引きした顔をしているが、敢えて燈子に直球の質問をぶつけてみるが、敢えて反応を伺うためにやっているんだ察してくれ。


「あ、あのさ、哲史……いくら私たちが幼馴染だからって、彼女との初デートでそんなことを言うのは、ちょっとどうかと思うよ」

「だ、だよな、はは……冗談だよ」

「もう、信じられない。こんなにデリカシーがない男だとは思わなかった。そんなんだから、沙彩にもフラれるのよ。あの子、繊細なのわかっているでしょう」

「あいつにはそんなことは言ってないよ」

 多分……いや、沙彩には冗談でもあんなことは言ったりしない。

 流れで言う可能性はあるけど、初デートでいきなりあんなことを言うほど、ゲスな男ではない。


「どうだか。私以外の女子にこういうことを絶対に言っちゃだめだからね」

「お前には良いんだ」

「私に対しても駄目。でも、幼馴染だし、軽口を叩ける関係ではあるから、少しは大目に見てあげるってだけだよ」

 まあ、そりゃそうだろうなと思うが、燈子って結構しっかりしているんだなあ。

 普段は明るくて、流行を追いかける普通の女だと思っていたが、なんだかんだで俺の事はちゃんと考えているんだ。

(くそ、燈子がこんな良い女なはずはないのに)

 それは勝手な決めつけかもしれないが、こんなに出来た彼女だったとはどうしても信じられずに、悶々とする。


「パンケーキとコーヒーにしようかな」

「じゃあ、俺はパフェでも食うか」

「パフェねえ……哲史、甘いもの好きだったっけ?」

「さあな。甘いものを食いたい気分なんだよ」

「ふふ、そう。すみませーん」

 こんなバカみたいな話をしながら、注文を決め、店員さんに注文を告げる。

 燈子とはこんな話も出来るけど、沙彩とのデートではどんな話をすればいいんだろう……。

 沙彩の好きな物って何だっけ?

 考えてみると、彼女なのに知らないことだらけだな……。燈子に聞いてみればいいけど、今聞くのも変だしなあ。


「うーん、ここのパンケーキ、メープルシロップがたっぷりかかっていて、おいしいね」

「おう。あのさ」

「なに?」

「あーんして食べさせて」

「はあ? 全くだから、パフェを頼んだのね。ほら、スプーン貸して。はい、あーん」

「あーん」

 パンケーキを頬張っている燈子にパフェをあーんして食べさせてくれというと、即オーケーしてくれ、俺にスプーンを渡して、あーんして食べさせてくれた。


「こういうの好きなんだ」

「お前に食べさせてやるよ」

「本当? じゃあ、そのチョコアイスね♪ あーん」

 俺が口をつけたスプーンでアイスをすくい、燈子にあーんして食べさせてやる。

「きゃー、おいしいじゃない」

「だろ。てか、今のさ……」

「なに?」

 思いっきり間接キスになってしまったが、燈子は構わないのか。

「間接キスになっちゃったけど」

「はは、別にいいじゃん。というか、私ら、前から回し飲みとか平気でしてなかったっけ?」

 していた気がするけど、それは小学生のころの話だ。

 今はそんなことはしてないけど、やっぱり付き合っているから、平気ってか。


「あはは、まあ付き合っているんだしさ。良いじゃん、これくらい」

 と少し頬を赤らめながら、燈子は可愛らしい笑顔で俺にそう言い、彼女の笑顔を見てドキッとしてしまう。

(くそ、何て可愛い笑顔をしやがるんだ……)

 初デートなのに、ホテル直行しようぜって冗談も軽く流してくれたし、同棲して俺の世話も焼いてくれるとか、理想的な彼女じゃねえかこいつ。

 俺は沙彩が好きなはずなのに……こんなことで心が揺れてはいけないと思いつつ、燈子と付き合うの悪くないって思っている自分が居る事に気づいてしまった


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