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第一話 憧れの女子に告白、そして……

「あー、こっちこっち」

 高校二年になり、ようやく新しい学年とクラスに馴染んできたある五月の朝、いつものように自転車に乗って通学すると、いつもの場所で一人の女子が大きく手を振って、俺を招く。

「遅いよー、遅刻しちゃう」

「あのな、俺を頼るなって言っているだろ」

「へへ、いいじゃん」

 本当は二人乗りは駄目なのに、自転車の後ろの荷台に座り、仕方なく俺も漕ぎ出す。

 この女子は俺と同い年の幼馴染である佐伯燈子さえきとうこ

 肩にかかるくらいのボブヘアーとクリっとした丸い瞳で明るい笑顔が特徴の女子で、男子からは可愛らしいと評判でいつも羨ましがられるんだが、俺には良い迷惑だ。


「今日も暑いねー。早く、夏休みにならないかなあ」

「そう思うなら、下りてくれると嬉しいんだけど。く……坂きついなあ」

 身長は平均くらいだが細身ではあるんだが、田舎のせいか坂がきついんだよなー。

「あ、沙彩さあやだ。おはよー」

「燈子ちゃん、哲史くん。おはよう」

 坂を上り、校舎が見えてきたところで、また一人の女子と出会う。

 長い黒髪を後ろで結い、色白で清楚な雰囲気のする整った顔立ちがひときわ眩しく、白のブラウスと紺のスカートの制服がよく似合っている美人。

 学校でも一、二を争う美少女と評判の同じクラスの宮藤沙彩みやふじさあやだ。


「お前さ、いい加減下りてくれよ」

「んもう、いいじゃん」

 もう学校は目と鼻の先なのでいい加減自転車から下りろというと、燈子はしぶしぶ自転車から下りる。

 相変わらず可愛いなー。

 沙彩と燈子は仲が良く、その縁があって俺とも仲は良いんだが、実は俺は沙彩の事がずっと気になっている。


「決めた」

「ど、どうしたの?」

「俺は沙彩に告白する」

「え、ええ?」

 放課後、いつものように燈子と一緒に家路に着いている途中にそう宣言すると、燈子はビックリして、顔をしかめる。

「て、哲史が沙彩に?」

「そうだよ。文句あるか?」

「いやー、哲史が沙彩にってさ……沙彩って、私が言うのも何だけど、めっちゃ美人で人気もあるし、頭も良いしで……本気?」

「うるさいな。誰に告白しようが勝手じゃんか」

「ご、ごめん」

 せっかく決心したって言うのに、水を差すようなことを言いやがって。

 幼馴染なら応援しろってのよ。


「まあ、あのヘタレの哲史が女子に告白するなんて言い出したんだ。成長したじゃん」

「悪かったな。というわけで、頼みがあるんだけどさ。明日、そのだな……沙彩を屋上に連れてきてくれない?」

「私が。で、でも……自分で言えばいいじゃん」

「頼むよ、一生のお願いだって」

 こういうおぜん立てを頼めるのは沙彩しかおらんので、拝み倒すと、燈子はため息を付いて、

「わ、わかったよ。その代わり、上手くいったらお礼はしてもらうよ」

「おお、サンキュー」

 しぶしぶながらも了承してくれたので、歓喜する。

 よし、これでおぜん立ては完璧だ。


 夜中になり――

「うーん、どうしようかなー、告白のセリフは?」

 スマホで色々と告白のシチュエーションを検索して、脳内でシミュレーションしまくり、心の準備をする。

 よし、これで完璧だな。

 いや完璧なんてのがあるのか知らんが、ともかく明日は当たって砕けろだよ。


 そして翌日の放課後――

「それでさー。あ、哲史」

「よ、よお。二人とも元気」

「哲史君。こんなところでどうしたの?」

 約束通り、屋上へと燈子が沙彩を連れ出してくれたので、一気に緊張が走る。

「哲史が話あるんだって」

「話?」

「うん。あ、私、席外そうか?」

「いや……ああ、そうだな。うん。頼むよ」

「じゃあ、またね」

 燈子が居た方が緊張しないで済むかと一瞬考えたが、やっぱり二人きりの方が良いと思い、思い切って告白する。


「あー、その……さ、沙彩。今日はいい天気だな」

「そ、そうだね。どうしたの話って?」

「いやー、はは……その沙彩! 今、好きな男とかいる?」

「ふえ? い、いないけど……」

「じゃあっ! お、俺と付き合わない? ずっと沙彩の事、気になっていて……」

「えっ! て、哲史君と……え、えっと……」

 突然の告白で、流石に沙彩も動揺する。

 うん、そうだよね。

 でも言ったぞ。後は返事を待つのみ。


「う、うん……わ、私でよければ……」

「え……ほ、本当か!?」

「うん……」

 うつむきながらも、沙彩はハッキリとした声でそう言い、一気に舞い上がった気分になる。

 う、嘘だろ……告白成功しちゃったの?


「あ、あはは……そう! じゃあ、よろしくな!」

「うん」

「話終わったー? って、二人ともどうしたの?」

「いや、その……」

「あ、あのね、燈子ちゃん……私たち……」

「もしかして、付き合い始めたとか? アハハ……」

「そ、そうなんだよ!」

「えっ!? ほ、本当に……よかったじゃない!」

 冗談で言ったんだろうが、燈子がそういうと、間髪入れずにそう答えると、燈子も笑顔でパンっと俺の肩を叩く。


「い、痛いって」

「いいじゃん。良い事あったんだし。沙彩、今の哲史が言ったこと……」

「うん。本当だよ」

「へえ……あ、私、邪魔だよね。詳しいことは後で聞かせてもらおうかな。じゃあ、お幸せに」

 俺たちに気を使ったのか、橙子は俺達の前から去り、沙彩と二人で帰る。

 後のことはよく覚えておらず、これが夢なら一生覚めないでくれと願わずにはいられなかった。


 ピピピピ……。

「ふ、ふわああ……」

「ほら、起きる。もう昼になっちゃうよ」

「んーー……もうちょっと……」

「起きろ、哲史っ!」

「ぶおっ! な、何するんだよっ! って、燈子っ!」

 いきなり、枕を顔に押し付けられたんで、何事かと思って飛び起きると、そこにはなぜか燈子が目の前に立っていた。


「あんたが起きないのが悪い―。もう、せっかく同棲始めたばかりなのにさ」

「同棲?」

 何を言っているんだこいつは?

「何、その顔は? 今日から二人で暮らすんだからさー。もっと、嬉しそうにしなよ」

「いやいや、何を言ってるんだよ……って、お前、燈子……だよな?」

「そうだけど?」

 燈子が何を言っているのか理解できなかったが、ちょっとこいつの様子が違うことに気づいた。

 タンクトップとホットパンツというやけにラフな部屋着でいたが、それ以上にいつもの燈子より大人っぽいというか……てか、胸デカイな。

 こいつこんな巨乳だったっけ?

 それ以上に……。


「ここ何処?」

 何か見慣れぬ部屋にいるんだけど、どういうこと?

「まだ寝ぼけているの。ここが今日から二人の愛の巣になるんじゃん。ね、哲史♡ほら、大学に遅刻するよ」

「大学? いやいや、お前さ……冗談はよせって。俺、まだ高二……」

「何言ってるのよ! ほら、テレビ見て。もうこんな時間」

「は、はい?」

 燈子がテレビを点けると、

『四月八日、火曜日。十一時のニュースをお伝えします』

「………」

 四月八日?

 いや、今日は五月のえっと……十五日くらいじゃなかった?

 しかもなんか日付けどころか……え?

 スマホで日付けを確認すると、やっぱり四月八日でしかも西暦は……はい?

 いつの間にか二年後に飛んでいるみたいだけど、これは夢なのか?

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