ゲーム感覚 【月夜譚No.357】
これはゲームみたいなものだと思うことにした。日常の中のちょっとした刺激だと考えてしまえば、どうにか乗り越えられる……と思う。
放課後のいつもの通学路。見据えた正面に見知った姿を見つけた少年は、そっと脇道に曲がった。
入学式、隣の席だからと会話をしたのが彼との関わりを持つきっかけだった。何度か話をする内に彼の人となりを知り、少し合わないなと思いつつも向こうから話しかけてくるのを無下にできず、いつの間にか少年は彼にとって仲の良い友人の枠に収まっていた。二年に上がってクラスが別になっても、彼は少年を見つける度に声をかけてきていた。
少々――いや大分、彼は人の事情に踏み込み過ぎる嫌いがある。少年は彼のことが苦手なのだが、相手はそうは思っていないらしい。それどころか、少年に好かれていると思っている節もある。
だから、なるべく彼と顔を合わせないようにしようと思った。幸いクラスが違うので、登下校や休み時間、移動教室の時に気を配ってさえおけば、遭遇率もぐっと減る。それをゲーム感覚で楽しんでしまおうという算段だ。
我ながら良い考えだと帰宅の歩を弾ませた少年は、まだ知らない。明日の三時間目の体育が、クラス合同になることを――。