その7
今は帰りの車の中だ、もう夕方近くになっている。世間的には遅めのおやつの時間だろう。柳生社長のところへは確か午前10時には到着したはずだから、5時間ほど経過していたことになる。
いや正確には占い師の話が終わった後オレだけ追い出されて、柳生社長が八重島さんと二人きりで話したいとその後2時間以上あの部屋で仲良く話していたらしい。お昼ごはんまで出してくれたそうだ、オレは近くの定食屋で自腹を切ったのに。なんだこの扱いの差は…。
「まぁそう不貞腐れるな。お前が出ていったあとも色んな話を聞けたから共有しておくぞ、あの社長は田山澄子とは元々飲み友達だったそうだ。」
占い師とさっきの女社長、知り合い同士だったんですか?そんなことインターネットで検索しても載ってませんでしたよ。
「田山澄子が無名の占い師時代だった頃の話だからな。当時のIFCの経営が火の車だったときに、田山澄子がお友達価格でタダで占ってあげると持ちかけたらしくてな。その占いが見事に的中し、当時は経理を担当していたあの美紗恵さんが社長に一気に上り詰めたそうだ。」
えっ…ってことは前社長さんは何してるんですか?つまり、あの女社長の旦那さんは?
「それがな、亡くなってしまったんだそうだ。だから夫人がそのまま社長の座を引き継いだというわけさ。」
たしか、女社長に交代してから業績が回復したんでしたよね?やっぱりあの女社長が凄腕だったってことでしょうか?
「前の社長は高級路線だったそうだが、売上よりも在庫管理をはじめとした管理費・人件費の方で赤字続きでな。それを元経理担当だった現社長が、女性向けのエスニック調をメインとしたカジュアル路線に大々的に変更したらしい。それがヒットして売れ行きが一気に伸びたってわけさ。ま、全部さっきの柳生社長から聞いた話だがな。」
オレはその話を聞きながら試しに自分のスマホでIFCの服を検索すると、確かにレディースをメインとした諸外国から取り寄せした衣服のさまざまな画像が表示された。どうやらその話は本当らしい。
でも旦那が亡くなったのに即社長に就任して、すぐに売上も伸びて忙しくて…オレだったら目眩起こしそうですね。
「柳生社長も、当時を振り返って旦那が死んだのに泣いてる暇なんてなかったと言っていたぞ。まぁ一部のメディアやSNSでは『夫が死んでも涙一滴流さぬ魔女』などと良からぬウワサを立てられたこともあったらしい。他にも、旦那を殺して会社を乗っ取りしたんじゃないかと疑う声もあったそうだ。時期的にそう憶測されてしまうのも無理はないんだろうがな。」
本人は忙しさで泣く暇がなかっただけなのに、世間は勝手ですねー。想像や妄想で好き勝手言うんだから。
「そうだな。まぁどのように想像するかは個人の自由だが、あまりそれをSNSに書いたり手紙に書いて送りつけたりはしないほうが賢いな。名誉毀損や誹謗中傷で訴えられかねん、思っても形にしないのが華だな。」
ってそれより、なんですかあの女社長の態度は!オレだって同じ部屋にいるっていうのに忠司さんばっかりに露骨に色目使って。さすがにちょっと気分悪かったですよこっちは、しかもオレ達はあくまで客人なのに。
「なんだお前、あの女社長に色目使われたかったのか?今度言っておくぞ?」
あ、いや、オレが言いたかったのはそういうことじゃないんですけどね。露骨な扱いの差に怒りを覚えたってことを言いたかったんだけどな。この人はこういう変に察しの悪いところがあるのだ、オレは説明するのも面倒くさくなったので話題を飯の話に切り替えた。
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※この話は一部フィクションです。




