その40
『そうそう今朝、澄子の荷物が送られてきました。中サイズの段ボール一箱で、さっき開けてみたのですが手紙がたくさん入っているのです。諏訪野さん、何かご存知?』
もしかしなくても、きっとそれが最後の答え。オレは差し支えない程度で、いくつかの手紙の写真を送ってくれるよう真弓さんにお願いした。
『はぁ、それは構いません。ただ先ほどお伝えしたようにこれからお客様がありますので、終わってからでよろしいかしら?それに私、いまいちこのスマホという物を使いこなせてなくて、写真のやり取りは加屋にやらせますから。』
オレは連絡先を伝えて一度電話を切った。
すっかり夜になった、のり子さんと忠司さんも既に帰ってきている。ふいにオレのスマホが通知音を鳴らした、どうやら加屋さんが写真を送ってきたようだ。
「それで何なのよ、最後の謎って。」
あの占い師は、インチキ占いをいつまで続けるのか思い悩んでいるようでした。彼女にも良心の呵責というものがあったのだと思います。でも彼女はやめずに占い師としての活動を続けていた、辞めようと思えばいつでも辞められたのに。
「確かに変ね。何か理由があったのかしら?」
そのときインチキを暴いたオレに、教えたいことがあるとも言っていたんです。きっとその答えが最後に彼女の実家に届いた手紙なんだと思います…ほら。
--澄子様に相談したおかげで素敵な人と出会い、来年には出産です!またぜひ占ってください。
--あなたと出会えて、ギャンブル依存症から抜け出せました。占いなど胡散臭いと思っていましたが、助けていただいてありがとうございます。
--不登校だった私を救ってくれた澄子様は、今や私の憧れです!私も将来は澄子様のような占い師になりたい!
加屋さんが送ってくれたいくつかの手紙の写真を見ると、そこにはファン達からの感謝の言葉が綴られていた。
「彼女がやっていたのは間違いなくインチキだったが、それでも思い悩む人達の救いになってはいたということか。」
「やめたくてもやめられなかった、というよりいつまで続けようかという感じだったのかもしれないわね。その証拠に弟子を連れていたんでしょう?もし正体を暴かれなかったときは、きっとその弟子が1人前になったタイミングでひっそり身を隠すつもりだったのかもしれないわね。」
忠司さんとのり子さんが口々にそれぞれの考えを話す。
インチキ占いで高額な相談料を巻き上げていた彼女のやっていたことは間違いなく悪だし、オレはそれを暴いただけだ。でもなんだろう、この胸に残る後味の悪さは…。
「正義を積み上げることが必ずしも和平に繋がるわけではない、そういうことだ。」
元刑事はそう言うと、いつものパソコン席に戻っていった。
その後のニュースで、田山澄子を駅で襲った男は全く面識がなかったそうで、犯人曰くストレスを発散できれば誰でもよかったとのことだ。彼女が被害者になったのはただの偶然なのか、それとも。
もう一つ。この件で田山澄子は"必中"と、"相談者たちからの超高評価"という成績を残してこの世を去ったので、その死を惜しむ声や嘆く声で一時期センセーショナルな話題となるほどだった。
真実はオレ達だけが知っている。でも誰にも話さない、だって誰もオレ達のところに真相を聞きにこないのだから。聞かれないことは話さないのが華ってね。
最後に…田山澄子の貯金は数億円にも登っていたという。そのほとんどは詐欺で巻き上げたお金だろうが、彼女の遺族はそれを恵まれない孤児や福祉の方へ全額寄付したということだ。通帳に彼女本人の手書きのメモが挟まっており、もしものときはそうしてほしいと書かれていた、と真弓さんが教えてくれた。
それが彼女なりの、精一杯の罪滅ぼしだったのだろうか…。
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※この話は一部フィクションです。




