その39
それから一週間後、今日のオレ達は珍しく3人揃って事務所にいる。正確にはのり子さんと忠司さんがこの後依頼で出かけるから、すぐにオレ一人になるのだが。
ソファー席の広いテーブルを占領し、ネットニュースを自分のスマホで再生しながら留守番ついでだと任された書類整理をしていたときのことだった。
『えーただいま緊急ニュースが入りました。今から15分ほど前に栃木県の宇都宮駅で男が刃物を振り回して暴れる事件が発生。警察と駅員が対応していましたが犯人は今、無事取り押さえられた模様です。尚この件で占い師として活躍中の田山澄子さんが、胸や腹など複数箇所を刺されており、先程到着した救急隊員により死亡が確認されました。』
なんだって!!
忠司さんとのり子さんもオレのところへ駆けつけてくる。
『目撃者の話によると、被害者の女性はどうやら駅の電光掲示板で電車の乗り換え確認をしていたらしく、無防備だったところを包丁のような物を持った男に襲われたということです。身柄を確保された男は現行犯逮捕され、現場では騒然とする中ほかに怪我人などがいないか確認が行われています。また現場には生々しい血の跡が残されており…。』
宇都宮駅、あそこは新幹線の停車駅だ。そこから電車の確認ということは、ちょうど実家に向かっているときに被害に合ってしまったのではないだろうか。せっかく家族との蟠りが溶けそうだったのに…。
「成人して以来の家族との再会になるはずだったのにね。アタシは会ったこともないけれど、なんだか残念だわ。」
のり子さんはそう言い残すと、依頼主の元へ出かけていった。忠司さんも依頼先へ向かうためなのか、黙って着替え始めた。
オレは田山流霊媒堂へ電話をかけてみた。数コールの後、真弓さんが電話に出たがニュースを見たのか慌てた様子だった。
「あら諏訪野さん!?妹が、澄子が…。お父さんとお母さんは警察に呼ばれて行ってしまいました。こんな状況でも仕事は入っていますから私は家におりますが、なんと言っていいか。せっかく諏訪野さんの電話で澄子と連絡が取れたというのに。」
オレはこんなとき、お気の毒ですと言うことしかできない自分を無力に感じた。でも真弓さんの霊力がまだ存続しているのであれば澄子さんの霊と交信したりできないのだろうか?
「ダメですわ。霊になるというのは、例えばあなたの昔の飼い犬のようにお互いの思いが強く引き合うことで可能になるの。それ以外にも土地や場所に魅入られたり執着がある者が、いわゆる地縛霊という存在になったりするわね。でも澄子は私達との関わりをもう30年以上断っていたし、この土地にも一度も帰ってこなかった。だからその…縁が希薄になっていたのね。しかも私がどんなに念じても気配すら感じないのでは、いろんな土地をフラフラ漂う浮遊霊にもなれていない。もしかしたらあの子、どこかで死を受け入れていたのかもしれませんわ。」
…まだ解決していない疑問が一つ残っているのに。しかし今は、それを口に出せる状況ではなかった。
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※この話は一部フィクションです。




