その35
なんてことを…あなたがやったのは立派な殺人教唆だ!実行犯のA子は論外だし、事故が起きると分かっている場所に連れ出した美佐恵夫人もいわゆる"未必の故意"が成立する!
だがそう訴えるオレに対し、冷徹な笑みを浮かべる占い師。
「私達を捕まえる気?さっきも言ってあげたけど証拠がないのよ?何年も前の事件だし、突っ込んだ車は当然とっくに廃車処分。事故現場も舗装されたりしているから、今更警察が必死に捜査しても何も見つからないわよ。どう?私の"絶対に当たる占い"の効力は?」
クソ、せめて彼女との会話を録音しておくべきだった。しかしもう数年前に終わったことを蒸し返しても仕方がなかった。被害者遺族である柳生夫人が再捜査を依頼するばなんとかなるかもしれないが、実質共犯者の彼女がそんな自分の罪が暴かれるようなことをするわけがない。
あなた、霊力が無いんですよね?IFCの前社長の"占い"についてはあなた達の共謀によって占いどおりの結果になりました。しかし他の占いについてはどうしてるんですか?口コミだってやたら評判が高いし、いい加減な占いをやっているならもっと悪評があってもおかしくないはず。もっともオレ達はあなたのファンしか評価が書けないから、と睨んでいますけど。
田山澄子は冷蔵庫から缶コーヒーを出すとまた足を組んで席に座り飲みながら答える。
「アンタなかなか鋭いじゃない。そうよ、口コミは私のファン達だけが書けるようになっているから、悪い評判なんて基本的に書かれるはずないの。あんまり高評価だけだと怪しいから、私自身で何個かそれっぽい悪評を書いてわざと残しているけどね。それに占いが外れた人にはお金返していますからね、口コミには何も書かないという交換条件で。日本人って単純だからね、口コミ評価が高いとそれだけで食いついて来る人が多いのよ。しかも数件の悪評をわざと残しておくことで逆に信憑性もアップする、彼らは疑いもしない。日本人が海外旅行に行くと現地の人たちからカモにされる理由が私にはよく分かるわ。」
…高評価維持のカラクリは分かった。では占いの方は?
「当てられるものはなるべく当てているわ。ホットリーディングとかそういうテクニック、聞いたことないかしら?私もそういうのが得意なのよ、というかファンクラブ会員達を駆使すればいろんな情報は手に入るし。例えば素敵な出会いがほしいと言ってる人には、適当な時間と場所を指定してあげるの。あとはこっちが見繕った人を同じ日時に向かわせるだけ、するとアラ不思議!運命の出会いが成立ってわけ。金運や仕事運はその人の立ち回り次第なところが大きいから、私は大失敗しない道だけを教えるわ。大失敗さえしなければ、人間は"占ってもらったからこの程度で済んだ"と勝手に納得してくれるからね。」
この人、もともと人誑しの才があるんじゃなかろうか?そのくらい田山澄子の説明は筋が通っていて矛盾しているところもなかった。
でもね…私だって人間なのよ。うつむきながら小さな声でそう呟いたのを、オレは聞き逃さなかった。再び占い師はオレと目を合わせながら、言う。
「アンタに話したことはすべて本当よ。私のことをインチキ占い師だと罵っても構わない、殺人鬼呼ばわりしてもいい。ただ一つだけ知っておいてほしいことがあるわ…そうね。まぁ、時期が来たら教えてあげる。」
澄子さん、ご実家に一度くらい顔見せに行かないんですか?少なくともお姉さんはあなたを気にかけていましたよ。霊力を使う占いという謳い文句はインチキだったにせよ、あなたは占い師として一応きちんと成功したじゃないですか。相談者に対しても可能な限り希望を叶えようとしているようだし、その姿勢はきっとお姉さんも認めてくれますよ。
オレがそう告げると、田山澄子は黙って下を向いた。
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※この話は一部フィクションです。




