その34
「高校を卒業した後に入社した会社は10数年働いていたんだけど、内部告発で関連会社に費用の水増し請求をしていたことが世間に暴かれてね。そのまま倒産してしまったの。それからはいろんな日雇いバイトや派遣スタッフとして働いていたわ…美佐恵と知り合ったのもその頃よ。お金はなかったけれど、あの頃が一番楽しかったわ。」
なぜ占い師になろうと?それも、ありもしない霊能力を掲げて。嘘までついてあなたがしたかったことは一体なんですか?
オレの質問に対しハァー、と1つ大きなため息をつく占い師。
「意地…かしらね。ちょっと先に産まれたからって、何不自由なく霊能力と霊媒師の地位を手に入れた姉に対する対抗心。つまらないと思うでしょう?でも私にとってはそれだけが原動力、それこそが頑張る気力になった。けれどいつまでも派遣やバイトしていてもお金はいつまで経っても稼げない…だから占いに目を付けたってわけ。占い師になって金持ちの客を何人か捕まえるのが手っ取り早いと思ったのよ、ちょうどタイミングよく例の占いの館が従業員の募集をしていたし。それでしばらくは曖昧なことや誰にでも当てはまるテキトーなこと言ってのらりくらり占い師やってたんだけど、美佐恵とあることを計画したのよ。アンタどうせ知ってるんでしょう?IFC前社長、つまり当時の美佐恵の旦那が高齢者が運転する車に轢き殺されたって。」
えぇ、アクセルとブレーキを踏み間違えて前社長を跳ね飛ばしたとか…。運転していたご老人は今も服役中です。
アハハハハ!と急に高笑いする田山澄子。
「あれね、私と美佐恵で共謀したのよ。実はIFCの前社長はただでさえ経営が芳しくないのに会社の金を私用に横領していてね、妻であり当時経理を担当していた美佐恵がそれに気付いたの。それで私のところに占いに来たときに言ったわ、『じゃあ運命に見せかけて殺しちゃう?』って。美佐恵も最初は気が引けていたみたいだけどね、すぐにノッてきたわ。あとは轢き殺す役が必要となったときに、とある高齢者に目をつけた。」
確かにIFCは前社長が死んでから急に経営が立ち直り一気に黒字転換していたが、まさか殺人を共謀していたなんて!
驚くオレを尻目に田山澄子は不敵な笑みを浮かべながら続ける。
「とある若い女が私のところに占いに来たわ、A子ちゃんとでも呼ぼうかしら?その子はおじいちゃんさえいなければって相談に来たの。私にはなんだかよく分からなかったけど、どうやらその子のおじいちゃん孫を溺愛するあまりその子の彼氏や私生活に口出ししまくっていて鬱陶しかったみたいね。私はそれを利用することにしたわ。もちろんすべては"占いによって導かれた運命"と見えるよう、同僚に意味深な言葉を告げるなどしてね。」
恐ろしい殺人計画とその結末が、彼女の口から淡々語られていく。
「年を取るとね、若い人より反射神経が鈍くなるの。運命の日、まず私は美佐恵に旦那をなるべく人気や街灯の少ない国道に呼び出してもらったわ。呼び出す位置はT字路のTの交差する位置。そしてA子ちゃんのおじいちゃんに国道を運転させ、A子ちゃんは後部座席に乗り込む。事故起こさせる気マンマンなわけだから、助手席だとA子ちゃんも巻き添えになっちゃうからね。それでIFC前社長がいるT字路に差し掛かったとき、ちょうどTの文字の下から上に向かって進行するタイミング…そこでA子ちゃんが後部座席から大声を出すなどして運転者のおじいちゃんを驚かせるの。どうなると思う?」
どこか楽しそうに話すこの女にオレは恐怖を感じる。自分が悪いことをしたという自覚がないのか、後ろめたい気持ちを全く感じないのが気持ち悪くさえ思えた。
「ご老人は驚いて、アクセルペダルを踏む足に力が入りそのまま突っ込んだわ。前社長は車と後ろの壁に挟まれて即死、おじいちゃんは逮捕、A子ちゃんは声で驚かせただけなので証拠は無い。どう?邪魔者をまとめて消し去る私の"完璧な占い"でしょ?」
「A子ちゃんはおじいちゃんがいなくなってそれで満足だったようだけど、私が念には念を入れさせたわ。美佐恵の会社が軌道に乗ると同時に、A子ちゃんの家に数億円を口止め料として渡させた。A子ちゃん側も私達がバラせば証拠がないから逮捕はできないとはいえ、社会的な信用などにダメージを負うから下手なことは言えない。それになにより大金が手に入るからお互いにメリットしかないってわけ。そして私はこの大きな"占い"を予言通り大成功させ、今や一躍大人気占い師になったのよ。」
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※この話は一部フィクションです。




