その33
ゴン太のことを見抜いてこなかった時点で察していたが、この反応はやはり…少なくとも、霊能力に関しては嘘と見て良い。占いの方はまだ分からない。胡散臭い気もするが、それにしては当たるとやたら評判なのも気になるところ。その辺を確かめなくてはならない。
だがなんと切り出そうか…睨み合ったままどのくらい経過しただろう?意外と数秒だったかもしれない。突如目の前の占い師はそれまではピンと背筋を張って座っていたのに、椅子に浅く座り足と腕を組んだ。腕を組むのは自分を守ろうという無意識の精神状態の表れと言われる、つまり今の彼女はいわゆる戦闘モードになったわけだ。
「バレちゃ仕方ないわね。まぁどうせいつかは誰かにバレると思っていたから、ぶっちゃけ時間の問題だったんだけど。」
じゃあ認めるんですね、霊感もないのに霊力を行使して占っているなどと人々を騙し、相談料や開運グッズの料金を巻き上げていたことを!
オレはそう息巻いたが、田山澄子はだから何?とでも言いたげな顔だ。
「詐欺なんてね、騙される方が悪いのよ。それに私の占いを信じるかどうかは個人の自由でしょ?私はアイツラに絶対占いを信じろと強制した覚えはないわ。」
くそ、詐欺行為自体は認めさせたものの、開き直られたか。
「私の霊能力についてはね、いつか実家のことがバレればそこを辿って次女に霊力が継がれるはずはないって誰にでも分かったことだから。アンタ、どうせ姉から霊力の継承のことも聞いていたんでしょう?」
いえ、真弓さんは妹の霊力の有無は本人にしか分からないと…おばあちゃん姉妹からも聞いていないと言っていました。そう伝えた。
「ハン、嘘ばっかり。私も姉も知っていたの、長女にしか霊力は継がれないって。っていうか、それが田山家代々の常識だし。おばあちゃん姉妹が生きているときに聞いたときも、妹の方は幽霊なんてこれっぽっちも感じないとハッキリ言ってた。まぁこの際だからもういいか、アンタせっかくだから私の話し相手になってよ。」
先程までの攻撃的な姿勢はどこへやら、急に話のトーンが落ちる占い師。憑き物が落ちた顔、とはこのことを言うんだろうか。今の田山澄子の顔は、安堵のような疲れたような…そしてどこか不安を感じさせる、いろんな感情が入り乱れたなんとも言えない表情をしている。目は虚ろでもはや現実世界は見えていない様子なのに、口は微笑んでいる。そのアンバランスさがなんとも不気味に思えた。
「私ね、小さいときからずーっと形身が狭かったの。お姉ちゃんは次期霊媒師の座が決まっているようなものだから幼いときから厳しく礼儀作法やら言葉遣いやら叩き込まれていたわ。でも私にはそんなことはなかった。そりゃ気楽でよかったけれど、それは何も期待されてないことの裏返し…そう気づくのに時間はかからなかったわ。」
オレにも妹がいるから、なんだか他人事には聞こえない。話の腰を折らないようオレは無言の相槌だけを打ちながら黙って彼女の話を聞いていた。
「そんなに霊力が大切なのか!って子ども心ながらに思ったわ。まぁ大人になった今なら先祖代々続く霊媒師の看板を守って後世に残さねばと思う、家族の気持ちも分かるわ。でも小さな子どもだった私にそこまで察するのは無理があるでしょ?だから親や周りの人の気を引きたくて、私自信にも霊能力があるように嘘をついたこともあったわ。でも姉や母には本物の霊力があるから、すぐに嘘だとバレる。終いにはすぐに嘘をつくロクでもない娘に育ったとなじられることもあった。それ以来私はあの家に住んでいる間、必要なこと以外しゃべらなくなった。高校を卒業したら家を出てやる、それだけ考えて必死に学生生活の傍らバイトして貯金を貯めて家を出たわ。」
田山澄子が成人と同時に実家を飛び出した理由がハッキリ分かった、そして彼女が未だにお盆や年末年始の里帰りシーズンでも1度として実家に帰らないのもこれで辻褄が合う。きっと未だに憎いんだ、そんな風に自分を扱ってきた田山家の一族が。
深くにも少し彼女に同情してしまいそうになった。だがそれでも詐欺をしていい理由にはならない。
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
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