その31
翌朝。目覚めると同時に見た夢を、布団の中でスマホのメモ帳に書き込んだ。オレが見たのはなぜかコンビニの中で射的をする夢と、そのあとはどこかの動物園で、動物たちに踏みつけられてペチャンコになる夢。他にも見た気がするものの、覚えていたのはこの2つ。我ながら支離滅裂だが、寝ているときに見る夢など皆きっとそんなものだ。
そういえばのり子さんが見たい夢があるときは、それを紙に書いて枕の下に挟んでから寝るというおまじないを教えてくれたっけ。効果あるんだろうか?そもそも希望通りの夢を見られたとしても、朝起きたときに覚えてなくちゃ意味ないんだけど。きっと小学生くらい若くて純粋な年齢の子に教えてあげたら、喜んで試すんだろうな。好きな子の名前を書いたりしてさ。
まぁいいや、それよりも腹が減ったので朝飯を食べに行くとしよう。
朝食バイキングをゆっくり食べ終えたオレは、次は部屋の片付けに入る。今日がチェックアウトだから忘れ物がないようにしておかなくては。まぁ片付けるといってもほぼ手ぶらで来たし、お土産はすでに配送サービスで事務所へ送ったから売店でちょっと買い足した雑貨しかないけど。しかも今年はこのホテルの経営なんとか周年記念らしく、小さめのトートバッグをくれた。ちょうど良いサイズだったので買い足した物を全部そこに放り込んだ。
チェックアウトの時間まで比較的猶予があり午後まで部屋にいても大丈夫なのだが、オレは田山澄子に来いと言われた10時にチェックアウトした。彼女の占いが終わった後はせっかくなのでもう少し周辺施設を見て回りたいので、もうここに戻ってくることはないだろう。
田山澄子にはいくつか話したいことと、確認したいことがある。このときオレのこの行動が、彼女の運命を狂わせてしまう可能性を微塵も考えていなかった。
約束の時間の5分前に隣のホテルへ着くと、ロビーにお付きの人が待っていた。相変わらず帽子とマスクで顔はよく分からない。
「諏訪野様ですね、お待ちしておりました。澄子様の部屋に向かってください、そこでお話をしたいそうです。」
この時間はロビーも一般客でごった返している。世間的に顔も知れている田山澄子がここに来れば大騒ぎになることは間違い、きっとそれを嫌がったのだろう。
そんなことよりオレはお付きの人に、あなたは田山澄子のお手伝いさんですか?と聞いてみる。
「わたし?わたしは澄子様に憧れる一人で、頼み込んで弟子にしてもらったんです。将来は澄子様のような占い師になりたいから…。では参りましょう。」
そう言って一緒について来ようとするその人を、オレは一人で行きますからと言って制した。部屋番号だけを聞くと、彼女は終わるまで自室で待っていると言った。どうやら田山澄子とは別々に部屋を取っているらしい。
だがこれでいい。
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※この話は一部フィクションです。




