その24
それよりも有名温泉旅館に予約無しで入れるのだろうか?オレはそっちの方が心配だったが、どうやらのり子さんから話を聞いた忠司さんが、オレが向かう前提で2泊3日の予約を入れてくれていた。2月の客が少ない時期ということもあり問題なく取れたのだろう。なんだかオレ、良いように使われているような…まぁ大人気の必中占い師に会えるんだからいいか。せっかくだから温泉も楽しもう。
最寄りの駅についたが、辺りはもうすっかり真っ暗である。しかもかなり寒い。さっき電車に乗る前にタクシーを予約しておいてよかった、オレは素早く温かい車内に乗り込む。運転手に聞くと山の中ということもあり、この辺りは特に気温が低いらしい。夏は避暑地として格好の場所だが、その分冬は寒いのだ。
「今日はあそこで何かあるのかい?お客さんの前にも3組ほど草津温泉に送って行ったんだよ。2月なのに珍しいなと思ってさ。」
おそらく田山澄子の目撃情報を見た、ファンクラブの人だろう。あそこに目撃情報が書き込まれたなら、近くに住むファンクラブ会員はすかさず集まるという話だから。彼女の人気はやはりすごい。オレは運転手に有名人がお忍びでお泊りに来ているらしいですよ、とだけ告げた。これなら嘘ではない。
そうして運転手と話している内に到着した。食事処や土産屋など、日本家屋風のさまざまな建物が立ち並んでいる。人気の観光スポットと言われるのも納得だ。今の時間ではほとんど閉店しているが、昼間ならきっと賑わっていることだろう。せっかく来たのでゆっくり見たいところだが本来の目的を忘れるわけには行かない、オレは指定されたホテルへチェックインに向かった。
ホテルへ向かって歩いている闇の中で、寒いからか数か所から湯気が立ち上っているのが見える。きっと露天風呂や足湯があるスポットだろう、しかしノロノロ歩いていたら本当に倒れそうなほど寒いので無意識に早足になる。
ホテルのエントランスをくぐると、ここは天国かと思うほど温かい。オレが泊まるホテルは周辺に立ち並ぶ日本家屋風の建物とは異質な外見の、近代的で洋風な建物だ。チェックインのときに値段がチラリと見えたがそこそこイイホテルである。忠司さんたちも多少は悪いと思っているのだろうことがさすがのオレにも伝わってきた。
ホテルの外観と違い、部屋は畳張りの和室だった。きっと外国人観光客も多いだろうから、和室のほうが人気なのだろう。そういえば畳の部屋なんて実家に住んでいたとき以来だ、そんなことを思い出してなんだか嬉しくなった。
下着やひげ剃りなど最低限の物を買おうと売店に向かうと、タイミング良く腹が鳴った。そういえば何も食っていない…しかしディナーの時間はとっくに終わっており、外の店もほとんど閉まっていた。わざわざここまで来たのにとは思ったが、売店の軽食で済ませることにした。
買い物を終え部屋に戻って食事をしながら考える。さてどうやって彼女を探すか…ファンクラブの目撃情報のところは何も更新されていない。せっかくなら目撃した人がどこのホテルかまで書いてくれたら助かったのに…。この辺りはホテルだけでも数件あり、同じところに宿泊しているとは限らない。
えぇい、考えても仕方ない。昔から捜査の基本は足だと言うし、観光スポットをとにかく歩き回ってみるしか無いか。
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※この話は一部フィクションです。




