その19
おいしそうなみたらし団子を前に、でも出してもらってすぐ食べたらいやらしいかな等と考えていると、加屋さんとは別の足音が聞こえてきた。歩幅や足音が明らかに違うため、別人だ。
オレが勝手に緊張していると、失礼しますと女性の声がありスッとふすまが開いた。そこには50代前後くらいの、和装の女性が立っていた。オレがどうも…としどろもどろに返事している間に女性はスッと畳にあがり、そしてオレの対面側に正座で着席した。
「お初お目にかかります、私は田山真弓と申します。この度はこんな山奥までご足労いただき、お疲れ…には見えませんわね。」
そう言いながら柔らかく笑うので、オレの緊張もなんとなくほぐれた。霊媒師とはいえやっぱり客商売ではあるのか、仕草や言葉遣いは丁寧だ。それにしてもこの人…オレが口を開く前に、オレの目をまっすぐ見ながら真弓さんが続ける。
「あなたは数年前まで、犬を一頭飼われていたのではありませんか?それも…性別はオスを。」
えっどうして?オレが驚きに目を見開くのも構わず、真弓さんはにこりと笑いながらさらに続ける。
「私にはあなたのそばにそのワンちゃんが一頭、常に寄り添っているのが視えますので。今はあなたの左横に、あなたの顔色を伺うように伏せしています。きっとあなたの緊張がそのワンちゃんにも伝わっているのね。その子の死因は恐らく…寿命かしら。」
オレは正直なところかなり驚いた。…だがのり子さんが以前言っていたように、テキトーなことを言っているだけかもしれない。苦し紛れなのはバレバレかもしれないが、オレは犬なんて飼ったことありませんと嘘の返事をしてみた。
「ふふふ、私を試そうとしてもダメよ。それにあなたのワンちゃん、今とっても悲しそうな目になりましたわ。その子、ハスキー犬かしら?そうね…ハスキー犬にしては尻尾が短いところがチャームポイントですね。」
参りました、下らない嘘ついてすみません。オレは素直に謝った、それは側にいると言われたゴン太に向けてだったのかもしれない。
「あなたはこの先、もし厄年と言われる年を迎えることになったとしてもお祓いや除霊は受けない方が良いでしょう。そのワンちゃんがあなたを守ってくれていますから。」
以前オレは忠司さんに、とある知識を教えてもらったことがある。
「ホットリーディングっていうのはな、インチキ占い師やインチキ霊能者がよく使う手口なんだ。簡単に言えば、あらかじめ相手の家族構成や友人関係といった情報を、探偵などを雇って調べ上げておく。あとは簡単、その相手が相談に来たときに言い当てるだけ。もちろん本人は事前調査されていることなど知らないから、次々に自分の個人情報をズバズバと的中させられるため信じ込んでしまうのさ。その昔テレビで一時期その名前を見ない日はないと言われたほど超有名だった某女性占い師も、このテクニックを使っていたと噂されている。」
だがオレはこの真弓さんを信じざるを得なかった。確かに実家でハスキー犬のゴン太を飼っていた事実は、プライベートの友達や同僚の忠司さんとのり子さんにも話していることだ。だが尻尾の短さや、ましてや死因なんて他人にベラベラ話したことはない。
オレは多数の口コミで、ここはホンモノだと書かれる理由を痛感した。
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※この話は一部フィクションです。




