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その13

 オレがこの人を指名したのは単に待ち時間が少なかったという理由だけではない。受け付けで一番のベテランは誰ですか?と聞いたところ、このタロットの男性を紹介されたのだ。

 田山澄子がここに在籍していたのは数年前だ、だから最近入ったばかりの新人占い師に聞いても情報を得ることはできない。ということは、オレはベテランを指名するべきということになる。



 偶然なのか待ちがいなかったのでそのまま部屋に入ると、なんだかトレーニングジムにでもいそうなゴツい男が目の前のテーブル越しに座っていた。オレは促されるままに座って部屋を観察してみる。テーブルはよくある木製の机にテーブルクロスが引いてあり、小さな花瓶に花が数本植えてある。椅子に腰掛けるとちょうど胸の高さくらいになる。部屋は薄暗い照明に落ち着いた雰囲気な、なんだかおしゃれなイタリアンレストランといった雰囲気だ。

 オレはもっと黒魔術でもやりそうな部屋のイメージを持っていたのでちょっと面食らってしまった。

 「はじめましてのお客様ですね?私はタロット占いを専門にしているテーナーと申します。」

 テーナーというのはもちろん彼の本名ではなく、占い師の芸名みたいなものだ。早速オレは田山澄子のことを聞いてみることにした。テーナーさんも慣れているようで、ビジネススマイルを浮かべながら答えてくれる。

 「たまにいらっしゃるんですよ、あなたのような方が。そりゃ必中の占い師となれば誰もが会いたくなりますよね。えぇ彼女とは一緒に働いていたことがありますよ、入ってすぐ美人占い師としてここを利用する人たちの口コミで広がっていきました。彼女が得意とする夢占いの派生形というジャンルもここで初めてでしたからね。」

 IFCという会社の社運をかけた大きな占いを当て、社運を逆転させたことで田山澄子も世間的に有名人となったわけですよね?

 「えぇ、今でも覚えてますよ。その日の休憩時間かな、私は控室で澄子さんと一緒になりました。そのとき彼女が言ったんです、『私は近い将来きっと大きな占いを成功させてみせます』と。内容まではさすがに教えてくれませんでした、私達にも守秘義務というものがありまして、占いとはいえ内容次第ではお客様の個人情報に繋がったりするものですからね。その一ヵ月後くらいでした、IFCに新たに就任した女社長が何もかも澄子さんの予言通りになったとSNSで証言したんです。それからはすごかった、連日この占いの館っは連日大盛況。澄子さんに占ってもらえない人たちが私たち他の占い師の元に来たり、とにかくあのときはかなり儲かったとオーナーも言っていましたね。ただしそれも長くは続かなかった…澄子さんを取材しようと連日メディア関係者が押しかけたり、彼女の家を突き止めようとストーキングする者まで出始めたのです。それで彼女はこの占いの館を去ってしまったんですね。」



 うーんなるほど、彼女が日本全国を転々としているのもそういうことがあったからなのかも。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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