和室に入るだけ
あの部屋を出て階段へ向かう。
廊下は然程長くなく、すぐに階段に着けた。どうやらこの廊下から行ける部屋は先ほどのところしかないようである。小さい家なんだろうか。
木製の階段が軋み、少し怖くなってクリーム色の壁に手を沿わせて降りる。15段ぐらいの階段を下ると、左手には出入り口と思しきドア、右手には廊下が続いていて、正面には2枚の板があった。
ギミックか何かなんだろうか。
よく分からないので、とりあえず右の方に行くことにした。ツルツルとした木製の床を抜けると炊事場らしき場所があった。そこに食事用のテーブルらしきものが置いてある。大きさとしては庶民用、まあ一般的なぐらいかちょっと小さめか。
ケイの姿は見当たらず、引き返す。
残る場所は出入り口っぽいドアか2枚の板だけだが、、、もし本当にラスエタだとしたら、最悪開けただけで死ぬ。いや、そんなすぐにというほどでもないと思うが、こんな魔境の魔物に襲われたらひとたまりもないだろう。
ということで、消去法で謎の2枚板である。
取手っぽい窪みを押してみてもガタガタとなるだけで、開きそうな感じはない。ゴリ押ししたらなんとかなるだろうが、それは色々とアレだ、やめておこう。
というか、普通にノックをしてみるか。
「失礼致します!アンです!ケイさん、いらっしゃいますか!」
「ああ、いるいる。入ってきなよ」
んんん゛ー!!!
いや、ねえ!???心読めるんでしょ!!??
開かないんだってば!!
「はは、その窪みに手をいれて、右に引っ張ってごらん?」
言うとおりにしてみると、板がスーっと静かに動き、ニコニコとしているケイと目が合った。
「いやあ、久しぶりだったけど、人の思考を覗き込むのは本当に面白いなあ。僕とは考え方がまるで違う」
もしかしてこいつ、かなり変人なんじゃなかろうか?
ケイは背の低いテーブルで本を読んでいた。足を折りたたんで座っているが、窮屈そうだ。スペースが余っているから余計にそう感じる。
「まあとりあえず座りなよ。君は慣れてないだろうから、足を伸ばしてね」
地べたに座るというのは少し抵抗のある行為だが、綺麗そうだし大人しく座ろう。植物かなにかでできていそうだが、足元がつるつると触り心地がよく、ぐっと足を伸ばしてしまった。
「いや、気に入ったみたいだね。僕も苦労したんだよ、なかなか似たような素材がなくてね。ああ、気持ちいい、、、」
独り言のように呟いて、足をぐーっと伸ばした。
「ああそうだ、ちゃんとした話をしようか」
「さっきも話したと思うけどここはラスエタ。ラスエタの端の端、ティラハン山の頂上のあたりだ。
高すぎてほとんど魔物は寄り付かないね。まあその代わり不便だったりするんだけど、、、」
???
「基本的には閑静でいいところなんだよね」
うーん、人間ではないよな、、、龍人とか??
でも尻尾とか角とかないしなぁ?
「あ、そうだ君のことは僕が保護して育てるつもりだ。ヒーラーって、一番強くなれると思うんだよね。
君は痛覚耐性もあるしね!羨ましいなあ、精神の限界がほとんどない状態だろう?どうやって取得したんだか、、、。本当に羨ましい」
「だからね、君を肉弾戦最強にして、ヒーラーとしても最強にして、世界最強の戦士に育ててあげるよ!」
うーん、逃亡しようか。