状況理解その2
そう熱い思いに浸っていたが、普通に分からないことだらけなので質問を続けよう。
「とてもいい環境で保護して頂いたんですが、ここは一体ラスエタのどこなんでしょう?
こんなところ、ラスエタにあるんですか?」
そう、まずラスエタにしては安心安全清潔感がありすぎる。こんな場所、”魔の森”ラスエタに本当に存在するのだろうか?
いや、百歩譲って存在したとして、この空間は何なのだ。
部屋を創造する魔法など聞いたことがない。
「ここはラスエタの奥の奥、神から最も遠いところにある僕の家だ」
地獄ってことか?
「いや、厳密には違うね。人はここを地獄と呼ぶけど、本当の地獄はまた別のところにあるんだよ」
???
よく分からない。
神の居場所───天国から最も離れた場所が地獄ではないのか。
「まあ天国や地獄なんて曖昧で少しのことですぐに変わるものだよ。細かいところはいずれ分かるんじゃないかい?」
なんとも適当な。いずれ、とはどういうことなのだろうか。
考えるだけ負けだということか。
「この部屋は僕が創ったんだ。ちょっと魔力を変質させてね」
魔力を変質、、、。説明されても理解不能だ。
魔力を具現化、ということだろうか?
「言うならばそんなとこかな?でこの部屋があるのは僕の家」
すると、ケイは説明はこんなとこでいいかな?と話を切り上げた。
そして暖炉の左上のあたりの壁に手をかざし───空間がぐにゃりと曲がったかと思うと、五秒後くらいにはいつのまにか窓ができていた。
ついでに、と呟くと部屋の内装に合った素朴な窓枠を追加した。
「じゃ、心の整理がついたら出てきてね」
そう言って、ケイは部屋を出ていった。
心の整理ねえ。
どちらかといえば状況整理だが。
さて。とりあえず起きあがろう。
、、、靴がない???
え?早速いじめる??
いやいや、こんな環境に置いておいてそんなことはないだろう。それは流石に行動が意味不明すぎる。
あれか?靴が汚すぎるから脱がせたとか?
「我が屋敷を穢すな!!」的な???
、、、まあ、しょうがない。
靴が無いのも慣れているしいいだろう。
、、、カーペットふっかふかで裸足なの気持ちえぇ、、、
さて。気を取り直して。
あのケイと名乗った男。口調は穏やかだし、こちらへの気遣いもあったが、、、。
いやあ、怪しい。というか得体が知れない。
何だ、心読めるって。本当っぽいし。
何だ、「あ〜窓忘れてた〜」じゃないだろう。何を言っているんだ。窓を忘れるって何だ。部屋創ったって何だ。
そしてラスエタの奥地に住んでいる(自称)。
いやまあ家とか言ってたし、私を助けたということは恐らく事実なのだが、とりあえず信用できないので(自称)にしておこう。
そもそもラスエタでこんな家建てられるか??
とにかく謎しかない。
人間でないと言われても信じるだろう。いや、逆にあれが人外である方が納得するような雰囲気だった。
もう、そんなやつのことを考えても答えは出ない気がする。
私はとりあえず下へ向かうことにした。