状況理解
目が覚めると、そこは暖かい布団の中だった。
「そういえば、鳥に落とされて、、、」
そう、私は死んでしまったはずだ。
柔らかい寝床、火が焚かれた暖炉、明るく清潔な部屋。
天国に来たとしか思えない。
「でも天国って思ったより装飾少ないんだな」
天国を描いたとされる絵を見たことはあるが、タペストリーや美しい壁画などで派手に飾り付けられていた。
が、この部屋にはそういった装飾品は無く、それどころか家具らしきものは暖炉とベッドのみだ。
不思議なのが、窓や暖炉以外の火も無いのに部屋全体が明るいこと。
そういう魔法でもあるのだろうか?
ともかく天国らしくはないが、まあ天国は死なないと見れないから、生者の描いたものと違うのは当たり前だろう。
周りの様子が分かったところで、さて、とりあえず起きようかと思っても、久々の寝心地に体を動かすことができない。
「起きたみたいだね」
そうやってぬくぬくしていると、涼やかな声が聞こえてきた。
布団に突っ込んでいた頭を抜くと、そこには顔も知らない謎の男が微笑んで立っていた。
この部屋ドアも無かったのにどうやって入ってきたんだ??
「いやあ、ドアをつけ忘れちゃって。
あ、付けといたよ?
最近は家を『創って』なかったから、やっぱり色々とミスがあるんだよね」
考えていることが分かるのか?
いや、異常に勘がいいのか、、、
「それはねえ、僕が人の心を読めるからさ」
えっっっ怖っっっ。
ああだめだ、この思考も漏れてて、、、。
「はは、まあ気にしないで。とりあえず自己紹介でもしようか?僕はケイ。色々あって姓の方は捨てたんだけどね」
雑なフォローだ。
色々、ねえ。というか姓があったのか。元・貴族ってことか?
、、、今考えてもしょうがない気がするので、とりあえず名乗り返そう。
「私はアンです。
あの、ここはどこなんでしょうか?」
ついでに疑問もぶつけてみる。
「ああ、窓を付けるのも忘れてた。
ここはラスエタ。天国じゃないよ。それにしても君、供物を食べるなんてやるねえ。僕でもやったことないよ」
私ほどじゃなければやらかしたことがあるということだろうか?
というか、ここはラスエタなのか。
、、、ということはつまり。
「助けて頂いたということでしょうか?」
「ああ、まあそうだね。ちょっと気になってさ。君、僧侶の才があるみたいじゃないか」
そういえばあのデブたちがそんなことを言っていたっけなあ。
「ちょっと珍しいから気になってね。それに、僧侶の才持ちのくせに罪人の印を付けられているのが最高だ。正直それが気に入って君のことを生かした」
まるで罪人の印がよいものであるかのような言い草だ。
なんか捻くれてる気がしないでもないが、気にしないのが吉だろう。
「理由はなんであれ、助けて頂きありがとうございます。死んで良いことは中々ありませんから」
そう、私はまだ生きているのだ。
死ななかった。
死にかけたせいか、それを認識すると何か胸が熱くなる気がした。
ものすごい更新頻度ですが、月一ぐらいで覗いて頂ければ恐らく新しい話を投稿していると思います。
思い出したころにご確認下さい。
激遅の頻度で申し訳ありません。