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いくらでも…

 招かれて、何も考えず入った時。

この店の全ての店員たちが、私達の為だけに集まってお辞儀していたのに、驚いた。


「「いらっしゃいませっ」」


「うぉ!?」

()()()、言葉遣い…」

「あ、ううん。」


そしてかなり年配な男の人が前に出てきて、またお辞儀をする。


「ヘイドリック様、ようこそCACAO店へ。私はこの店のオーナー、カカオ12世です。」


「忙しいところすまない。この…娘のグレースに、素敵なドレスを新調したくてきた。数は厭わない。

グレースの似合う、質の高いものを用意してほしい。」


「数を厭わない…ですか」

「ちちょっ、ちっとそこまでは、やりすぎ……」

「そん、お父様ぁ~!ミルキィにはぁ!?」


「ミルキィは…一着だけにしなさい。今日はグレースが主役だ。」

「なっ…」


ま、まさか。そこまで!?


確かに「人間扱いしてくれっ!」って言った。だけどそこまでしてくるなんて…私は“舐めていた”。この婚約を舐めていたと、頭部を殴られた衝撃を、こんな形でまざまざと見せつけれている!


父の財力は国のお金であるけど、決して金を乱暴に扱う人ではない。長い事父を見ていて、とても仕事熱心で節約家だ。庭で出来た野菜も、ミルクも、パンですら。自家製で作り…

歪に歪んでいても食卓に並ぶ事を良しとした。


本も使い古された、誰かが使った本を好んで受け取っていていると聞き、受け取ったという例の本をみたらかなりの黄ばみで絶句したくらいだ。


 現実世界で生きていた時、家は裕福とはとても言えず、外食は勧誘時だけ。その時くらいしかお金を自分の為に使えなかったから。


お金を手に入れるのは本当に難しく、大切なのかを嫌ってほど植え付けられた生き方をしてきた。


お金がないと何でもできないし、友人もご飯も手に入らない。お金はすぐに持っていかれて、残らない現実世界。


だからか貴族になった今でもお金を使う事に抵抗があり、物があるのが苦しくなる。


きっと父もそんなタイプだろうし、あの時、私にお金を使っている事に嘆いていたくらいなのだから、そんな選択を口にする事が信じられない。


「あと…」

(まだあるのか!)


「グレースにメイクとヘアアレンジも頼む。」

「かしこまりました。」


おおおあああ。どんだけやるつもりぃ!?

怖い怖いこわい…ミルキィは「おねえさまだけズルい!」とほほをふくらませてダダを捏ねているが、周りは気にも止めることなく、私を何処かへと店員たちが連れて行った。


 奥へ奥へと進められ、どこを見渡しても高級な服が展示されており。その服を着たマネキンを通り過ぎてから、また別の部屋へと通される。

入った後で、これは所謂VIPルーム…なのだと気がついた。

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