違和感のランチはローストビーフ
ローストビーフだ。
お昼はいつもメイド達のお残りを食べて、井戸の水飲んで、仕事だ。
朝はロロナに起こされて、水で普段の仕事はいつもトイレ掃除に家畜のお世話。そして…本来しないはずの下水道掃除。トイレは汚いから殆どのメイドが嫌がるので私がいつもやっている。
下水道は魔物が住みやすい環境化にあるから、定期的に点検・掃除をしなきゃいけないらしく、ドブネズミ達の退治に奮闘したり。魔物の卵となるキノコをシュレッダーみたいな専用機械の「ハンドクラッシャー」で潰していく仕事だ。
室内で監禁されて、空腹と喉の渇きで苦しむよりかはマシなので。この仕事が日課となった。
(まあ昨日はシュナプシュの面会が何時までわからなかったから、仕事しなくて済んだけどね。)
そんな私がこの時間で父と妹と…母が。同じテーブルで食事する日が、一度目だって起きなかったのに…
モジモジと妹が、いるはずのない私がいる事にとても驚いている。これは父の行動に戸惑っているのか、それとも…
「どうした二人とも。手が止まっているではないか」
こんな空気をさせた父がとぼけた事を言って、ミルキィにも聞いてきた。ミルキィは「い、いえ…!」とそれ以上言わないで食事する。
母は「ミルキィ。そんなに焦らないで、ゆっくりで良いのですよ?」と優しく否した。
「あ。あの…」
「どうした?グレース」
「えっと。ありがとうございます。頂きます…」
言葉がでなかったので食べた。
サンドイッチにトマトソースのパスタ。そして食後のデザートにケーキなんて…!余りに豪華すぎて目が回りそう!
…
……
………。
そして父の宣言通り、大きな街でシッピングをする事になった。
妹は駄々こねそうにうるうると泣き出した為、妹も一緒だ…
「ひゃー人いっぱい。ミルキィ様、本当に無理でしたらすぐにおっしゃって下さいね」
「う。うん。ありがとうロロナ…」
「ヘイドリック様、お疲れ様です。」
「市長か。突然の訪問をしてしまいすみませんでした。」
「いえいえいえいえっ!いえいえいえいえっ!とーんでもないっ!お越しくださると聞いて飛び上がるくらい喜び上がったものですよ!
さあさっ!日差しがお強いですから冷たい場所にいどういたぢましまちょ!」
市長が余りにも緊張と興奮で噛みまくっているのに気付いて、少し笑いそうになったが。ロロナだけ顔を膨れて我慢していた。
護衛たちがぞろぞろと野次馬と化した民衆から、懸命に守っている。黄色い声援と手を挙げて降る者や。わざわざ旗を持ち出して振り出す者まで現れた。
「ヘイドリック様バンザーイ!」「ヘイドリック様!」「素敵っ!」「カッコいい…!」
「ミルキィ様ぁー!」「ミルキィ様ァあああああ!」
「天使っ!かわいいっ!天使っ!」
「俺と結婚して゛く゛れ゛ぇえええっ!!」
「誰だっ!結婚してくれなど!」
「ぎゃああああああ!」
なんか言ったやつが護衛たちに捕らえられて、姿を消した。馬鹿みたいな景色だけど、乙女ゲームだから…と思うと、とんだ茶番劇だ。
ゲームからだとそのやり取りも笑って流せたのに、ピクリとも笑えないし、キモい。まだ市長レベルが良い…そんな市長が、ササッと体全体で示したのは。この街一番の大きなレトロ風味の建築物だった。