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7/21

ヴァン帝国は、魔人と言われ⋯戦争していた国だった。

「グレースぅううう!」


 バシャ!とまた水をぶっかけられ、また目が覚めた。隣で寝ていたハナも驚いて起き、濡れた体を震わせながら起きた。


「グレース!旦那様から、ヘイドリック様がカンカンよっ!アンタ何したのっ!」


「あ⋯あー⋯ミルキィがここにきた。」


「それよりも早く支度して!ほら服!シャワーは30秒で済ませて玄関まで来なさいっ!」


ロロナは余裕がなく、指示だけして走って戻っていく。


私は嫌な予感がした⋯



⋯⋯

⋯⋯⋯。


 コンコン。

ロロナと他のメイド達の緊張で、私まで緊張してきた。一度目はそんな事を起きなかったが、もしかしてあの時ミルキィに怒鳴ったから、ミルキィは父にあーだこーだと言い出したのだろうか?

もしかしたら鳥たちの菌がその時入って、風邪を引いた!?


何にせよ、父にあーだこーだ言われるのに決まってる。


「グレースです。失礼いたします。」

「入れ」


父の仕事場を入ったのは、メイドになっても初めてのことだ。中は沢山の分厚い本と書類があり、大きな旗が飾られてある。

こんな場所はテレビで偉い人達がそこで何かしている時の映像でしか見たことない。


チラホラと見ていたら、父の親友と目が合い、会釈だけ交わされた。


「グレース。今日の予定は知っているか?」


「はい。

 14時より隣国の王子とのお見合いがあります。」


「その後の予定は?」


「?、特にありません」


「ではなぜ⋯⋯⋯

荷物を持ってどこかへ行こうと準備をしていた。」


ドキッ!

殺気?いや、純粋な怒りだ。

ミルキィがあの時私が荷物を持って準備していたのを見ていたから、それを父に告げ口されたんだ!


「な。何のこと⋯」


私はとぼける。バレたくはなかった。

しかし、父は私の心境など聞くわけなかった。


「お前が結婚しようとしている相手は、普通の貴族達とは違うのだぞ。隣国の王子⋯過去に戦争していたヴァン帝国の、だ。


そして縁談が上手くいかなければ、我が国の関係が悪化すれば水不足で多くの民が死ぬ。

私1人では水に苦しむ民を救うことも出来ず、反帝国派の炎を上げさせる原因となる。


巷では水不足が原因でまた戦争が始まると囁かれる程だ。わかるか⋯⋯⋯?


お前の縁談はこの国の未来を背負った重大な責務を重ねているのだぞ。

お前の身勝手な行いで、人が死んでもいいのか⋯!」



 真っ当な話だろう。

だけど私には響かなかった。


民の顔が蘇る。恨みつらみのあの顔⋯私が違うと言っていても、周囲が「そうだ」と聞いて何も深く考えず罵倒してきた彼ら。


知らないのだから仕方ない。

民だから仕方ない。


仕方ないで、割り切れるほど⋯私はお人好しじゃなかった。彼らが苦しんでようがどうでもいい⋯


それに水不足の原因は、元々民が水の精霊ウインディの湖にゴミを捨てていたせいだと、主人公たちが知って。リヴァリーに水の加護が手に入ったんだ。


それで水不足が改善された描写がなかったけど。

多分改善されたんだろう。


「水不足でお困りなら隣国の関係よりもウインディがいる湖に行ったらどうですか?」


「なに?魔物の湖にか!?」

「⋯魔物ではありません、妖精です。」


父に対しての態度じゃなくなっていくのが自分でもわかるし、どうしてそんな簡単な事を思いつかないのか。どうしてまどろっこしい事をしたがるのか。


父は皇族のくせに頭が悪そうでイライラしていく。

抑えられない⋯ミルキィにあったせいかもしれない。


「お父様たちは魔物も妖精も見分けがつかないようですが。水・風・火・雷・花・土は精霊である事が多く。殆どは大地から生まれた精霊ばかりです。

対しての魔物はさっき述べた属性の混合はあっても毒・霊・鉄・闇を持っています。

その違いを踏まえて区別すれば妖精か魔物かわかりそうなものですよ」


「なんだと⋯」


「お父様はもう一度新しく精霊達の勉強をするべきです!それは民も貴族も同じ!この世界の半分以上が妖精と魔物で別れているのに、誰も深く研究出来るものがいない!だから隣国の瞳が赤いってだけで魔人だと言って差別するんです!!」


「⋯⋯⋯」

「皇女様⋯」


「ウインディの件で解決出来ても、私に結婚して欲しいなら人並みに大切にして下さいよっ!!


私にだって感情があります!こんな扱いされて心ゆく受け入れる訳が無いっ!!私は⋯!ちゃんと人間ですっ!!」


怒鳴り。声を荒げて、結局()()()()みたいに理性なくまくし立てようとした。

父はきっと呆れている。


結婚は嫌でも逃げるな。はい、すみませんでした。

で済めばいい話なのに話が変な方向へと言ってしまう。みっともない⋯惨めだ⋯悲しい⋯


自分をさらけ出せばさらけ出すほど醜さと幼さが出て、私自身が人間扱いから遠ざかる。


いつの間にか私は地面を向いて、父の顔が見れなくなった。


キーンとするくらいの静けさに、耳鳴りがしそうになる。


その空気を壊してくれたのは、やはり父の大きなため息であった。


「⋯⋯⋯わかった。そうだな。あんな扱いでは結婚どこではなかった⋯」


カチッカチッカチッ⋯


「食事して一息ついてから、お前の⋯グレースの部屋をつけよう。」

「ぇ?」

「ヘイドリック!」


親友は私よりもとても嬉しそうな声色を上げた。

部屋?どうして…?


「まずはグレース。お前のそのドレスはメイドが選んだのだろう?」

「は、はい…」


「王子が来るまでまだ時間がある。私と食事し、すぐに買い物に出るとしよう。その時にお前の好きな物を着て、白粉やネイルをし。今よりも美しくなる…

王子に必ず会うのは、避けられることではない。

会う機会を1週間か開けれるよう、コチラも頼み込もう。今日は我慢してくれないか?」


どうゆう、こと?


父が。なんで急に優しくなった?

突然の心境の変化に戸惑いしかないけど、私は「はい」と返事するしか無かった。


………私。これで、良いのかな?


1日我慢して。その1日が過ぎたら元通りじゃ。ない…よね?

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