顔を見たくない妹
夜。私は早々に荷支度を整える事にした。
奴とは簡単に会話した後に、いつも寝ている馬小屋…もとい大きなダチョウ達の妖精が眠る鳥小屋で寝ているのだ。
どうしてかと言えば、私が………
―――いや。もう過去の失態だ。
もう鳥小屋に泊まる話は今日限り。早く寝て、日が昇る前に出てしまおう…
なんか思えば思うだけ、嫌なことしかない家だった。
もとより転生者であったとしても、グレースは悪役令嬢でありながら父親に嫌われ、妹にいわれの無い事を言われたり、婚約者に虐められる運命。
そんな生き方だったら攻略キャラにベタベタするしかない。
現実逃避だ。
「気持ちはわからなくない…なにかにすがっていたほうが安心出来るもん…」
ボロいバックに綺麗な貰ったばかりの着物と。リンゴにバナナ、キューイフルーツ、ほとんど食べ物ばかりだけど、食べ物は重要だからね。
「キューキュー!」 「キュキュー♪」
「おわっ!まったまったまったぁ!お前らのご飯じゃない!」
鳥たちがゴソゴソと食べ物を漁って食べ始めたじゃないか!これらを隠し持っていくのにも大変だったのにやめてくれー!
「バナナ!バナナがああ!」
「ぎゅーーーキュキュ!」
モグモグギュギュモチャモチャモチャ
「おねぇさまぁ〜…」
ハッキリと聞こえなかったが。か細いこの声は、確かに妹のミルキィだ!!
私は反射的的に鳥たちの相手をする事をやめて、妹に向き合い、大急ぎでその場から離さなければならない…!
「ミルキィ!ここに来ちゃダメっていつも言ってるでしょ!鳥たちの菌が入ったら苦しいよ!?」
「ぁ。ぁのね…ミルキィね…」
「わかったわかった。じゃああそこで話そうか!」
指を差した先にある大きな石を示した。あそこの石は1人分の座れるスペースがあるのでミルキィを座らせられる。
ミルキィは少しムッとした、不服そうな顔をした後、いつものシュンとしたかわいい顔が戻った。
最近そのなんてこと無い妹の小さな変化にイラッとしてしまうね。ああ…
そんな事を考えると会話どころじゃなくなる…
いっときの出会いになるんだし、今日だけの我慢だ。
確か⋯その日に来たってことは。あの事を聞きに来たのかもな。