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従兄弟に

「グレース。お前と血が繋がっていようがいまいが、私はお前を愛するつもりはない…」


「はい。存じ上げております。」


「………………そうか」


 グレースの父、ヘイドリックが聖女となった私。

グレース・マーキュリーを談話室に連れていき、わかりきった事を真剣に話し出した。


天気は小雨。


本来ならば縁も無く終わるはずのキャラクター達が、私の前に鎮座して座っている大迫力を体験している。


いっそのこと落雷が響き渡り、大雨で土砂崩れが起き、昼なのに夜のように真っ暗になっとけば良いのに…


まあそんな状況になったのかを話す事にする…


……

………。


 私の髪飾りがドリームパークという謎の場所に行けるアイテムを手に入れ、悪役令嬢から主人公が持つはずの聖女という称号を持つこととなった。


この髪飾りがドレスを新調していた時にくれた、ただのおまけみたいな物だったはずだ。


なのに、その店に聞いてみると………私を着付けてくれた女性。彼女は「いない」と言われてしまった。

私も、いつの間にか彼女の名前も。顔すら思い出せなくなってしまった…かなり嬉しい出来事だったし、覚えていられる自信があったにも関わらず。


これはまさしく女神が人に化けて、私に渡してくださったのだろう!と声高々に喜んでいたムロンさん。


否定する材料もないので納得せざる終えないなんだけど、どうして私だったんだろう?


1度目には何も無く処刑されたのに、その違いはドコにあると?ふとジルの顔を見て、彼が私のお世話係として入ってくれた事で変わったんだと。やっと納得する私でした。


「あっ!お嬢様大変です!攻略キャラが三人も来てくださいますよ!」


ムロンさんが何かを管理したのか、ぴょこんと耳を出してしまうくらい何かに驚いていた。

街はまた皇族が来てくれた事にガヤガヤとしている中、伝書鳩が父の腕へと止まりに来ていた。


「…………もう事は済んだだろう。一度帰って従兄弟にご挨拶しに行こう。」


「え!?従兄弟に!?どうして?」


「…私の兄が。どこからかお前が聖女になったと聞き取り入れたいのだろう。傍系としてできる唯一の戦略…か。お労しい事だ…」


ゲームしてきた身だから知っているけど。

ヘイドリックと、傍系と言われた父の兄デュクシオはそんなに仲が良くない。


私がケダモノとして名が知られるまで、名前を付けられずにいた。そんな私に「グレース」という名前をつけて、改めて皇族のひとりとして名を広めてくれたのがデュクシオだった。


でもデュクシオは別に私に対して優しさを持って名前をつけて、貴族社会に入れてくれたわけではない。


富も権力も力も持つ、なんでも持っている弟に嫉妬をしていた。


そんな恵まれた父の生きた汚点を、えぐりたいが為に私に親切にしているに過ぎない…


それを父は薄々気づいている。


戦争時、ヘイドリックに反感を持って襲いかかった勢力もいたが力でねじ伏せ、殺し尽くした。と話で語られていたけど、どうも身内に関わるととても弱くなるようで。

今日も暗い思いをしながら家に戻らざる終えない。


(冷酷だとか言われているけど…父ほど人恋しいという言葉が似合うキャラはいないと思うな…)


なので早急に戻る頃には、広い庭で噂していた兄と。

2人の双子が「待っていました」と言わんばかりに、そこで出迎えてくれていた。


「おかえりヘイドリック!」


「……兄さん。客室で待っていてよかったのですよ?」


「客室で待っていたってつまらないじゃあないか!

久々に顔を見たくて堪らなかったのだぞ!


おおー!グレース!大きくなったなー!見ない内にべっぴんになった!」


 おいおい。まだ10才のガキですよ。

べっぴんは早すぎ。てかオッサンすぎる反応でもう私の体中から鳥肌でてる…

私はニッコリと笑い、今日はオレンジ色のドレスを動かして、お辞儀する。

誰にも褒められないけど、私の中で「決まった!」と自画自賛した。


おじさまの腰辺りには、私よりもやや背の高い年上の男の子達が私をマジマジと見ていた。どちらも淡い栗色の髪を、青いリボンで結んでいて、見分けがつかない。


しかし、ひとり私に気さくに手を振った事で、私はすぐに違いがわかる。

父は背の高いに自分を意識して、双子の視線に合わせるために屈んでみせる。私には見せない姿に思わずときめきがでたのが、悔しい…


「久しぶり、リューク。ユーリ。私の事は覚えているかな?」


「はい!ヘイドリックおじさま!」

「あー…あんまり………いってえ!」


ハキハキと礼儀正しく、姿勢を正して答えたのがリューク。そして自然体で、マイペースさが出ているのがユーリだ。

あまりにもふにゃふにゃした答え方にイラッときたのか、リュークがユーリの背中を摘んで、痛みを与える。ユーリは「もうー」と、自分の背中をできるだけ撫でるようにして動くのだが、はたから見たら背中をかいているように見えてシュール。


「忘れても無理はない。もう5年も前なのだからな…」


「ん?もうそんなにたっていたか?」

「確かそのくらいですよ」


「ンー。最近年も数えるのが煩わしくなってきたから、忘れてるな〜」


おいおいオッサン。

ガハハと豪快に笑って誤魔化し、とりあえずメイド達が準備してくれたアフタヌーンティーを頂きに、ゆっくりと移動していった。


仲悪いという設定を聞いていたけど、よくもまあベラベラとおじさまは父と会話が弾んでいた。私が話していたウインディについて気づきがあり…

水不足は当然ウインディの仕業だと話し合っていて、政治経済の話しで熱を上げている。


(こうゆうところがあるから、邪険にしづらいのかも…)


裏表のある人はどうも苦手なので白けた気分で歩く。


しかし………


(この双子、この年でも私の事嫌いなのかもしれない)


 リュークとユーリはお互いに黙ったままで、私と仲良くさせたいが為におじさまは連れてきたであろうが。当の双子が非協力的であった。


リュークはアレだけキラキラと父を見ていたのに、対私となってしまって、無垢てた表情で横切る景色を見る。

ユーリは………リュークの手を繋がれながら空でも見ながら歩いてるし。


自由すぎる。


 この双子は学園の天才双子として将来名を広める2人だ。2人がそのまま学生になった時には、関係性が大きく変わってギスギスするのだが。

悪役令嬢として学園を練り歩く事になった私に対して、赤の他人として振り払おうという気がひしひしと伝わっていたのを覚えている。


ゲームでも、主人公であるリヴァリーをいじめていた時にサラリと交わしたり、守ってくれたり。

または足で転ばせ、リヴァリーを恥かかせようとしていたのをグレースに仕返したりと、ゲームから見たらスッキリするシーンを。


私にしてきた事があった…


勿論!私はゲームと違ってリヴァリーを虐めてなんていない!………でも


(悪役令嬢って事で。リヴァリーを虐めていたと思われて虐め返してたと思ってたけど、それだけの理由じゃなかったりして…)


コイツらとは、やっぱり仲良くなんてできそうにないと思う。


……

………。


 アフタヌーンティーをリュークとユーリと私の三人で食べる事となった。

バラの花みたいに綺麗に盛り付けられた、マンゴータルトに。ローストビーフサンドイッチ。

パイナップルソースのムース…………だめだ!


美味しいアフタヌーンティーを前にしても、2人と会話をひとつも交わしてないのに頭を掻きむしりそうになる。


この気まずい感じを何処かで体験した事があるけど、気の所為であって欲しいものだ。


リュークは黙々と食べていた時、ソワソワとユーリの方が我慢出来なくなり話し始めた。


「えっとぉー…確か、元敵国だったヴァン帝国の王子とは。うまくいきそう?」


「おいユーリ!そんな話聞くなっ!」


「だって気になるじゃん。俺たちの生活がかかってるんだし。やっぱり目が赤かった?牙が鋭いのかな?」


「えー…そうですね。牙は…少し鋭いかもですが私たちと対して変わらないと思います。目は赤かったです」


「へぇ~!ヴァン帝国の人間は本当にそんな容姿なんだね!見てみたかったなぁ〜!」


「ユーリ!魔族に興味を持つな!おい!」


「………なんですか?」


「お前が聖女になったと聞いたが、俺はお前を聖女だとは認めない!貴族の面汚しを受け入れる人間なんて居ないんだよ!」


リュークはギロリと睨みつけ、悪態をついた。

ユーリはただただニッコリ笑うだけで、私をかばう気がないようだ。


「……私が過去にゴミを漁っていたからですか?」


「貴族として生まれたなら、獣のように行動する令嬢なんてもはや人間と言えると思うか?

父はお前を同情してくださっていたが、俺はお前を軽蔑する。貴族は常に美しく、気品がある者として。

世界の代表のひとりである自覚で生きるこそが貴族だ。聖女であればなおのこと!


お前が手に着けたココの食べものすら汚れて見える。


貴族であり聖女であるとすれば、それ相応の結果を見せてから顔を出せ!恥さらしめっ!」


「ひやー、リュークはきついなぁ〜、あっ…グレース?」


……

………。


 私は思わずあの場から飛び出して、暗くて人気のない裏庭まで逃げてきていた。


耐えられない。


どうしてそこまで言われなきゃいけないの?


ゴミを漁っていたのは…空腹でおかしくなっていたから。


あの時の事は私でも覚えてないし、ゲーム上の設定であるのだから、私を貶す道理はない。


意気が揚がり、目元が熱くなる。


泣きたくない。アイツらの為に…アイツらの勧めで半分殺されたものだ。無実だったのに、私が魔王を復活させたと言って処刑台に立たせたのだ。

恨みごとを吐かなかった私を褒めたいくらい、私のほうが温情があるだろう。


 ムロンさんに聞いた事がある。


「実は私…過去に処刑台に立たされて、殺された事がある」と。別に隠す事でもないだろうし、私は隠し事が苦手だ。


処刑台に立たされただけを話そうと思っていたが、攻略キャラたちに守ってくれなかった事。現実世界で死んで、この世界がゲームだと知っている事。

全てぶつけていた気がする…それでもムロンさんは黙って聞いて、驚き。しばらく考えた後に口を開いた。


「過去に…この世界はゲームで、世界の結末を知っていると語った聖女さまはいらっしゃいました。


攻略キャラたちの何人かは理解を示し、受け入れたのですが。それでも歪な思考に囚われるようになり、やがて聖女共々パーティーは全滅して終わりました。


素直さは美徳ですが、時として恐ろしい結末になりますね。お嬢様…周りに対して良い感情を持てないのは、決して責められる事ではありません。

何も悪くない…


ですが、どうかその感情は隠し通したほうが良い。

お嬢様の命や未来が、どのように転んでいくのかが見えない以上。手を出さない方が良いと思います。

愛する事は別に、恋愛だけではないはずですから…」


ムロンさんはやんわりと言ってくれたけど。

その時の私が欲しかった言葉じゃなくて、少し落胆してしまった…


もう………聖女となったら、攻略キャラと恋愛をしないといけないの?関わらないといけないの?


……

………。


 小さく小さく蹲っていると、後ろからか細い声が聞こえてきて、空耳かと思っていたが。

念の為振り向くと、小さな金髪碧眼のルドガーが心配そうに覗き込んできていた。

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