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試練なんです

 頭がただでさえ沸騰したように熱いのに、熱故の幻覚で聞き間違えているのかと錯覚してしまう。

ドリームパーク?そんなもの、このゲーム(エバーテイル)で聞いたこともない言葉!


もしかしてエバーテイルにまた転生したと思っていたけど、実はそんな事なくて…エバーテイルに似た何かに転生していたとか?


それとも私が髪飾りをてにした事で物語が大きく変動してしまったと!?


確かに1回目ではずっとその場に流されるように生きていたと思う。シュナプシュに誤解から虐められ、メイド達のぞんざいな扱いに耐え、父と母に見向きもされないでミルキィにありもしない嘘をでっち上げられて肩身狭くなったり…


攻略キャラ達から魔王を復活させたのだと誤解され、ひどい扱いを受けて処刑………なんか考えるだけでも落ち込む。


それが2回目から私は聖女になって?ドリームパーク?を復活?なにそれ?


「まあ混乱するのも無理はありません。

本来人間には役が決まられ、聖女さまを成長させる為に生きていくのが運命。悪役令嬢はまさしく!

聖女さまの障害物として精神的に強くしてもらうための…!」


「いやいや!悪役令嬢ってただの物語を盛り上げるだけのヒール役!ヴィランなんだよ!そんなだいそれた役じゃないって!

てかいちいちメタい事言うなっ!!」


「め、メタ?」


ムロンさんはとてもすました顔でさも当然!と言った態度から、胸元に小さな板っぱを取り出し、指で板をツンツンと…


「待って!それってスマフォ!?」


異世界からスマフォを見る事は無かったので、一時スマフォ依存が加速して苦しんでいたところだ!

ムロンさんの手元を力強く引き寄せ、久々にスマフォを触ると、かなり大きめのスマフォで。画面に映る「メタ 意味」を見ることが出来た!


「ああお嬢様。余り検索履歴見ないでーーー」


「おお!おお!懐かしい!やっぱりスマフォがこの世界に必要だよね!ほしいー!」


「これは精霊専用端末ですよ!あっ、待って開かないで……馬鹿野郎っ!アプリ開こうとするなあああ!!」


これ以上中を覗くと、プライベートが筒抜けにしてしまうので、程々にして返した。ムロンさんはミニスカが好み…っと。


イケメン顔が瞬く間に怒りで崩れているのが親しみを感じて、クスリと笑ってしまう内に。ムロンさんの目線がメイド達の奥を見つめた。

奥の奥…綺麗で何もない、ヨーロッパ風の建築で作られた廊下は、高級ホテルや博物館内のように埃ひとつないくらい綺麗なものだったのに。ジワジワと黒い汚れが蠢き、それが大きくなっていく。


黒い霧の中に細長い“足”が角からでてくる。

その足が何本も何本も出てきて、たぶん頭部が、出てきた。

頭部は黒くて長い髪の毛で覆われて、地面を引きずってこうべを垂れる姿に、人間を感じた。


私の肌に不快な痺れが全身へ駆け巡り、自然と「逃げないと!」と本能が叫ぶ。


「お嬢様!逃げましょう!」


重い体で苦しんでいたのを忘れて、全力で体を動かし、大きく広がるスカートを捲し上げて、見た目など気にする余裕も何も気にならなくなった!

不意に確認して後ろを見てしまった。そこには大きく立ち上がる、あの悪夢に何度も出てきた不気味な蜘蛛がコチラをジロリと真っ直ぐに見て、私を捕らえようと動き出す。


「あれ…!あの、蜘蛛!夢の中で出てきた!」


()()()()()()()()()()()ですか?きっとチュートリアルに関係する魔物かも知れません!

お嬢様が風邪ではなく、知恵熱のようなものです!」


「知恵、熱?」


「悪役令嬢というキャラが、新しく生まれ変わるのに体が負担になっているのですよ!

そうですね、アップデートと例えた方がわかりやすいと思います!チュートリアルは3つ!

なんとしてでも生きて聖女として覚醒しましょう!」


 か。覚醒って…!ムロンさんがいつの間にか狐耳イケメンから小動物に変幻していた!可愛らしい狐とリスの中間みたいな可愛らしい生き物になっていた。


「ねえ!本当に私が、聖女に!?あの髪飾りは…お店で貰ったプレゼント…!」


「まだ疑っているのですか!?まあいずれ聖女としての自覚が生まれるでしょう!お嬢様!障害物をまたがる…ジャンプする時は△ボタンです!」


「いらねええええええ!必要ないっ!」


廊下を走るとメイドが荷物を広げて道を塞いでいるのがあるのを跨り、脚立が倒れそうになっていたところを屈んで避けたりして上手く進んでいく!


ゲームだったら楽しい展開だったが、この世界に肉体が入ると面倒くさくてまどろっこしい!

何よりイライラするって!


「お嬢様!一階に行きましょう!大きな矢印が浮上している場所がチュートリアル2を終わらせることができる終着点です!頑張りましょう!」


「簡単にっ、言うなぁ!」


体力がもう持たなくて、蜘蛛との距離が近づく!

逃げたい逃げたい!と気持ちがあるのに出来ない自分に苦しさと悔しさが責め立てる。


(嫌だ…!また死にたくない!)


首を落とした時の強烈な痛みと、死の恐怖が蘇る!死んだらまた繰り返しになるのだろうか?

やっとまともになったと思ったのに!


私の足が限界だった!膝がきて、地面に両手をついた!ムロンさんの必死な声が聞こえ、グッと!力が入る!体が石のように固まり…動き出せない…


「グレース!」


 まさかそんな…!


ここで聞こえる訳が無い。


顔を上げると赤いバラの花びらが舞い散り、顔を上げると…父が蜘蛛相手に大剣を振りかざし、私を守ってくれた!!


「お父様っ!」


「ぐっ…くそっ!」


蜘蛛を払い除け、一撃、二撃と撃ち込んだ。

蜘蛛から火花が散って、魔物の肉体は鉄で出来ていると察する!私は頼もしい父の背中を見て圧巻に撮られた…!その横で強く抱きしめてくれた強いてがかかる。

ハッと横を見たら、棍棒を持って、汗をかいていたジルがそこにいた!


「すみませんグレースさま!遅くなりました!」

「ジル…!助けに来てくれてありがとうっ!」


「コレは例の魔物か!?」


父が例のと。

そういえば…父が最初にあの髪飾りを見た時、複雑そうな顔をしていた気がする…


父は………


「戦闘をお願いします!私も力をお貸しいたします!」


「カーバンクル!」


ムロンさんの額にある大きな石が七色に輝き出し、父とジルの肉体を輝かせた!これはもしかして…!


「強化魔法!?」


「はい!私はキャラ達の肉体を向上させ、力を高める事ができます!」


「カーバンクル!こいつやっちゃっていいんですよねー!」

「勿論だ。グレースを傷つけてきたのだからな」


ジルと父は蜘蛛に目掛けて武器を振りかざした!

まさしくゲームの…熱い展開を思い出す。

私が小さなスマフォの中で、現実では見ることができない光り輝く魔法と剣術の戦い!


(そうだ……私がこの乙女ゲームを好きになった理由のひとつが、主人公の為に攻略キャラ達が戦ってくれた。あの熱い姿に惚れて好きになったんだ…!


そしてつい、この世界に生きたいと思った事もあったんだ。)


「ファイヤーボール!」 「切り裂け…五月雨!」


ジルが小さく「わっ」と声が漏れた。父の技と比べたら弱く。邪魔でしかないとためらってしまったからだ。しかし、父の「五月雨」がファイヤーボールをかき消すことも無く、あろうことか。

ファイヤーボールを隕石のように増やして、蜘蛛に雨を降らせた!


蜘蛛は大量の炎に当てられ、火だるまになり。

苦しみで悶えながら断末魔と共に小さくなって消えていった。


「ひゃあー…勝ったー?」


「…そのようだな」


「よ…よかっ………た………」


糸が切れて、頭から倒れた。でも誰かに支えられ、私は目を閉じた………

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