チュートリアル②!?
熱がどんどん上がり、あの夢が次第に色濃くなっていく。ボロボロの遊園地、攻略キャラ、妖精たち。
そして不気味な蜘蛛。
蜘蛛の「おかえり」と言って何も近寄られ、恐怖と不快感と共に無理やり私を起こさせる連続だ。
ジルは悪夢にうなされ、汗びっしょりしている私を懸命に看病してくれて、着替えはメイドを呼んでの行動だけど、無事に済んでいた。
ジルが見ている範囲ではメイドも悪さできないらしく、ジルは私の事を守ってくれているんだと、ゆっくりとさりげなく。彼の有り難みと頼もしさを感じていた。
(しかも要望してくれたらお味噌汁に白いご飯。そして…カレー?を作ってくれて嬉しい…!)
なんだかスープの器に、すごくサラサラしたターメリックのスープ?でやや満足出来る料理も出してくれて、食事のレパートリーが増えてきていた。
食欲はそれなりにあるようで、最初はさっぱりしたものだけじゃ足りなくなり、ガッツリしたものが欲しくなってきた。それでも体調が心配だからと、さっぱり系を食べてから、足りないと思ったら追加で食べていく方が良いという流れになり。
三時のおやつをおやつにはせず、食べていくようになった。
(食べてて太りそうなのに、体重は減ってるし、お腹がめちゃくちゃすいて、めちゃくちゃ食べまくれる…筋肉落ちて軽くなってるじゃないよね?最後に残ったものが脂肪だけじゃないよね?)
すこしゾッとし、そろそろ体を動かしたいと思い立つ。頭がボーっとしながらゆっくりと立ち上がり、すこし散歩するかと動き出した。
目的はないけど、部屋でジッとするばかりじゃいけない。扉を開けて左を見たら、メイド2人が重たい掃除道具をカートに乗せてコチラに向かっているのがわかり、2人と目が合ってしまった。
2人は楽しく笑いあっていたのに、私を見るなりムスッとした顔に変わる。メイドの1人はヒソヒソと語る。
「なによ。元気に動けてるじゃない」
「どうせ仮病でしょ?家庭教師がもうきたから、風邪だと嘘ついて食っちゃ寝してるのよ」
「汚いわね。本当に皇女なの?」
「ヤブ医者が子供を取り替えたとか、獣が人間に化けて生まれたとかって話でしょ?イヤね…あんなのを皇女として面倒見なきゃいけないなんて」
「聞こえてるんだけど。そこ!」
怒りながら彼女らに注意をしたら、余計に睨まれ、皇女に対しての態度から外していく。
今にも殴りかからない程の殺伐とした空気。
「なんでしょうか皇女さま。」
「わたくしたちは皇女さまのお話をしてませんが?」
「だとしても、人前でコソコソと耳打ちして、感じ悪いと思わないの?」
「なんです?耳打ちする自由もダメなのですか?」
「それだけでわたくしたちもクビにするつもりですか?ロロナさんみたいに」
「ロロナは隣国に差別的発言をした。そして反省する様子もないからクビにしたまで!貴方たちも差別されて傷つくでしょ?」
「ヴァン帝国は差別されるだけの事を今までしてきた功績があります!
罪のないケルビン人を虐殺し、無償で分け与える程も水を持っていながら、ケルビンに謝罪として水を献上する事もなく!コチラにあれこれと要求してくる浅ましさ…!差別を受けているのは私たちです!」
「そうです!どうして私たちが我慢を強いられなければいけないのですか!おかしいですよ!」
虐殺って…戦争は常に“罪のない人々が犠牲になる”。それが戦争だと認識していたんだけど、ケルビンの戦い方は“罪のない人々は殺さない”戦争をしていたと言うのだろうか?
それに謝罪をするにしても。無償なんてケルビン…もといヘイドリック陛下ですらそんな戦略は取らないだろう…水は命だ。水はどの生き物にとって必ず必要な資源。
それを簡単に赤の他人に無償でなんて、お人好しを通り越して馬鹿がする事…無償で使えるということは、その国がもしも、水を止めるだとか。自分の物だと決められたら水を与えていた国がその国に、お金でも、変わりの資源でもあげないと飲めなくなる可能性がでてきてしまうじゃないか!
馬鹿な私だけど、そうなると考えつくのだから、頭がいい人間がそこに気が付かない訳が無い。
「お嬢様、そんなにお暇でしたらドブ掃除をしますか?ネズミ退治得意でしたよね?お嬢様がおやすみされている間私達が代わりに対応しているんです。
体を動かすと体調が良くなると思いますよ?」
クスクスと馬鹿が馬鹿にして笑っている。
そして言いたいことだけ言って、持ち場に戻るでなく、グイグイと連れて行こうとする。
やっと動けるようになったのに、メイドたちの力が入ってバランスが崩れそうになった!
グッと目をつぶっていると、ふわりと私を抱きかかえる存在がいると感じ⋯目を開けた。そこには新しく入った家庭教師が優しく笑っていた。
「大丈夫ですかお嬢様。」
「確か…ムロン、さん。え!?」
私は目を丸くし、固まる。
いや、彼らと比べたら固まるという言葉は合っていない。
ふざけていたメイドたちはニヤニヤした顔で固まり、そればかりか…服も、髪の毛も…外で羽ばたく鳥さえもその場所で固まっていた。
それはまさしく一時停止された世界!
ゾワゾワと鳥肌だけが私を動かし、ムロンさんはその光景を理解しているのか。ああ…と眉を潜める。
「グレースお嬢様。チュートリアル②が開始されちゃいましたね」
「チュートリアルって…ムロンさん、貴方はいったい…!」
私は今やっとムロンというキャラクターが、今まで出会った乙女ゲームのキャラクターとは一味違う存在だと確信を持って問ただした!
好感度とか、チュートリアルとかを口にするキャラクターはどんな奴なのかを知っている!乙女ゲームの主人公にこのゲームの説明と、チュートリアルと言って、操作方法を教えてくれる存在がいた。
主人公の場合父親だったけどーーー
「もしかして…精霊。ですか?」
「ーーー御名答です、グレースお嬢様。」
父親はイフリートだった、炎の精霊。
人前では人間として化けているけど、本当はドラゴンの姿をしている強大なキャラクター!
そんな存在は決まって主人公のサポートに周り、魔法をより強力にしてくれる…
「やはり貴方さまが、女神に選ばれた聖女だから。わかってしまうのですね!素晴らしいですっ!」
髪で隠していた場所をかき上げると。おでこにキラキラと輝くまぶしいルビーが星のように光り輝く!
ムロンにキツネのような耳としっぽも生え出し、人外を主張する!
「では改めて、私は花の精霊と言われている「カーバンクル」と申します。我々はこの世界に生まれ落ちた聖女さまと共に、世界の救済をする為、会いに来ました。
今女神の加護により、チュートリアルが開催されています。この試練を克服し、未来より降りかかる災難から………」
「待って、まてまてまて!!聖女…私が…!?」
「はい!女神の髪飾り、確かに貴方さまの物ですよね?我々はその髪飾りを目印に、聖女さまを御守りする使命があります!
その髪飾りでドリームパークを復活させましょう!!」
「は?はああああああああああああああ!?」




