Ⅱー33
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翌日ルクト様に再び転移させられ、世界の狭間へと移動すると、……何か知りませんが熱いですね。遠くを見遣ると炎の巨人が居ます。……アレはヴェノム=ラーヴァと呼ばれる方の眷属……ですかね。ヴェノムは毒だし、ラーヴァは幼神だし、なのに何故炎なのかと言う話ですが、……まあ、良いか。辺りが熱いのは彼、で良いのかな、が原因ですね。眷属はミアさんと話して居ます。暫く待ちますか。
待つ間にヴェノム=ラーヴァに付いて少し話します。
昔、ヴェノム=ラーヴァは炎と熱の化身と言われていましたが、今は極熱の化身と名乗っている様です。……多分地獄の名称が元ネタ、ですかね。
彼等の住んでいる世界は通常の人間に取って正しく地獄ですし、彼等には熱気が沢山有る環境の方が都合は良いのです。都合が良い環境を整地する為に世界を造り独立したと言うレベルの筋金入りです。
その世界の名は【タルヴァ・ゲート】確か延々と燃え続ける油田の関連単語を集め捩り付けられた名前、でしたかね。
次に辺りが熱い理由、これは単純で、炎熱の塊が居るから熱く成っている……まあ、そうなるのは未熟な眷属の制御力不足や威圧目的で熱を解放している場合、な、はず、なのですが、……何を話して居るのやら。
ちなみに割と最下層扱いの眷属でも熱を解放するだけで野球ドーム二つ分くらいのエリアの温度を十度や二十度くらいなら継続的に上げられる、だとか何とかなので、雪山でそれをやられたら雪雪崩不可避です。まあ、範囲を絞ればちょっとした雪山での凍死予防くらいには使えるでしょう。
勘違い無きよう再度言いますが、最強の奴の話ではなく、最下層扱いの奴の話です。
わざわざ専用の世界が必要に成るレベルの炎熱を用意する必要が有った奴等が居る事は間違いないですが、……まあ、当然通常の人間は同じ場所に居るだけで死ぬレベルなのは想像に難くないですね。
他にも重力神とかも独立して世界を組んで居るらしいですが、其方は詳しくは知りません。
……と、議論が白熱していますね。……あー、いや、これアレだ、【タルヴァ・ゲート】の世界との兼ね合いの擦り合わせだこれ。
……じゃあ、他にも因子神とか重力神側とかからの来客もほぼ確定ルートですかこれ?……頭痛く成ってきました。明らかに私の実力が足りてないのですけどぉっ。
……いや、穏便に済ませば良い、穏便に済ませば。まあ、【タルヴァ・ゲート】は成立環境が生存に適してなさ過ぎて侵略する流れに成っても御免被りますけど。
其処で眷族さんが辺りを見回すと、私を見てこう言います。
「其処の、ええと、海原さん、少し俺と戦って見るか」
「……やる必要有りますか?」
「いや、ちょっとした興味だ」
「……良いですけど、私、一応エアデーさんから力貰っていますよ?」
「……ほう、つまり、幻力を使えるか。構わん、使ってこい」
「いや、見破ったら死ぬ奴ですよ?使って良いのですか?」
「そもそも解脱を人間の種族以外もするって設定は軽く調べた程度じゃ出ない訳だがな」
「……つまり解脱は人外には効かない、と?」
「具体的にはちゃんと理屈は有るけど、雑に言えばね。だから使って来て良いよ」
「なら行かせて貰いますね。少し場所を変えましょうか」
「良かろう」
それで開けた場所に移動すると眷族さんがミアさんに開始の合図を頼み、ミアさんが開始の合図をしたので、私は自分の分身を幻力で出します。
「はっはぁ、無駄、無駄」
眷族さんは他の分身には目も暮れず本体の私の方へと直径2メートルくらいの太さの光熱線を放って来た為、壁を幻力で出し、ガードします。
「ちょっと、これで死んだらどうするつもりだったのですか?」
「いや、此処にわざわざ呼ばれた奴だ。なのにそれぐらいで死んだらそれこそ問題だろ、と、ま、最低限の実力は有る見たいだな」
「……何で本体が解るのですか?」
「いや、そもそも分身の再現度が甘いし。まあ、強制解脱をさせられる相手には見破られる前提の罠としては有りだろうがな」
「……見た目は完璧なはずなのですが」
「見た目だけしか重視してないからだよ。例えばサーモグラフィーゴーグルとか有ったら一発で解るぞ?」
ああ、此処で言う再現度が低いとはつまり、見て得られる知覚情報の量の差が分身と本体とで有った為、丸分かりだったと。
「……ぐぬぬ、体温の再現までは確かにしてなかったですね」
「一応能力的に此方は熱エネルギーの知覚くらい余裕だから、ね」
「……満足頂けましたか?」
「いやはや、最低限は有るだろうが、事前に聞いた通り、エアデーとかに比べると練度が低いな」
「そもそも使い方を全部把握していませんしね」
「……まあ、それで良いなら良いけど、それはともかくとして、【タルヴァ・ゲート】付近に世界を拡張してくるなよ?先に警告したから熱エネルギーの余波で焼け死んでも責任は取らんぞ」
「……なんて厄介な世界を……」
「身内に都合のいい環境(物理)且つそのまま奪った所で他所者や通常の奴に取って旨味が無い環境(物理)の世界、……と言うコンセプト。重力神とか自立した世界を造っている奴は割とそう言う傾向が強い。略奪者対策って奴だ」
「……シンプルに凄く便利な世界を造るのでは駄目だったのですか?」
「流石にそれをやった際に敵に回す奴の量が多過ぎる。……昔のルド様の様な真似を出来る戦力はうちには無い」
「……独立出来るだけの力は有るのですよね?」
「だからと万能で便利な世界とか造ったら造ったで奪う為に武力だけは有る脳筋が莫大に来ても残当だが」
「……」
「最後に、独自で幻力をやって居るそうだが、幻術の実体化の理屈は斥力?反発係数?磁界?それとも単純にエネルギーの塊を物理化させただけ? 後々……」
「……何でも良いじゃ無いですか」
「そうかい」
「只、手段にこだわらないバリエーションとしては有りかもしれませんが、最後の奴は物理的に生成していて、もう幻術とは言えないと思います」
「まあ、それは確かに、さて、じゃあ、俺は帰るとする」
「なら此方も最後に、眷族さんの名前は?」
「ヴェノム=シャトラー。外交役なので雨戸が名前に成っている訳だ」
「……ふむ、それでは機会が有ったらまた会いましょう」
「そんじゃあな」
そしてシャトラーさんは世界から離脱して行きました。




