Ⅱー28
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朝が来てカラオケ店から出る所でネイトさんに言われます。
「海原さん、付き合ってくれて今日はありがとうね」
「いえいえ、これくらいは」
「……ルド様に色々押し付けられて以降、普通に接してくれる人は真面目に貴重よ?」
「つまり、それ以前からの友人しか信用出来ない、と言う奴ですか?」
「まあ、そんな所。……私自身が出来る事と世間的な意味での評価が乖離していて、過大評価を前提に過剰に命だって狙われるし……」
「……代わりに色々な人から沢山力を貰ったのですから、やっかみや嫉妬とかは確かにされていそうですね」
「暗殺されかける日々への対策で渡されただけなのだけどね」
「ですが、暗殺されかける日々を終わりにする代わりに力をネイトさんの力は全部没収ね?とか言われて承諾出来ます?」
「それは無理ね」
「まあ、ですよね。あ、そうだ。今付喪神に関する検案で少し動いて居るのですが、ネイトさん、聞きます?」
「デモ関連なら勘弁してね」
「いえ、そうでは無く、付喪神が妖怪に変じるケースが有るがどうした物か、と言う物です」
「……詳しく」
「付喪神絵巻では付喪神は百年くらいで産まれるとされているのですが、条件次第で造られる迄の期間は前後します」
「……百年くらい、か。孫くらいには関係有りそうね。でもそれがどうしたの?」
「付喪神絵巻基準だと付喪神が産まれるのを嫌がった方々が器物を捨てるのですが、捨てた器物に妖怪、正確に言うなら妖物が発生するそうです」
「……表立っての妖怪の被害も無いのに、人に害なす妖怪が沢山居るって言うのも変だし、ヤバイ奴なんてそんなに居ない気がするけど」
「ポイントは付喪神が産まれるのを嫌がった方々が器物を捨てた物が妖物化する、です。つまり付喪神の発生する迄の必要な期間より前に何かしらは器物に宿って居る事に成ります」
「其処は疑うポイントではないかな。神話とかで万物に宿る系の神とかも居るし。でも、大した問題には成らないから表立って被害も出てない気がするけど」
「……建物の倒壊とかポルターガイストとか別件で処理されている物なら有るかと」
「んー、つまり付喪神を避ける為に星を捨てるとかしたら不味い、と」
「おそらくは」
「既存ベースだけで考えると、ちょっとした事故で片付く様なレベルの事しかしない妖物が大抵だろうに其処までビビる必要あるの?」
「……地脈龍様みたいな奴が敵に回らない保証も無いですよ?」
「古くから存在していれば成立すると言うなら、付喪神の定義的な意味では地脈龍様を越える奴とか隕石で降ってくる以外ではこの星には存在しなくない?」
「とは言いますがね」
「仮に一例だけ突然変異的な物が産まれても、最悪地脈龍様に丸投げすれば処理出来る範疇なはず。少なくともこの星起因なら、だけど」
「ですが、ね」
「重ねて言うけど、前提条件上、他の星なり他の世界なりを持ってこない限り、どんな奴が出て来ようが付喪神としての格的な意味で地脈龍様単体だけで処理は可能なはず」
「……時間を操る能力とか出たらアレじゃ無いですか?」
「それに付いては対策済み」
「……そうですか。今調査中の検案が有るのですが……」
「妖怪……と言うか、妖物の?」
「はい。調べたらある程度危険な奴は居ました。只、オーロラ的に記録媒体に残りにくい性質が有るため、それを喧伝するにはもう一押し欲しい感じです」
「……うーん。スプリンガーに頼んで調整して貰いたい所だけど、それはルド様との間でアレだし、ルド様に連絡してみるから少し待って」
するとネイトさんはルド様へと電話を掛けました。それで暫く待つと連絡を切るなりネイトは言います。
「うん、大体解った。無理だわ」
「……無理とは?」
「世界中の全てを誰かの制御下に先に置く事で、他所の奴がリソースをノーリスクで簡単に奪う機会を潰す為、みたい」
「侵略者対策、ですか?」
「そう。この世界では価値は無いけど、他の世界では価値の有る類いの物の流出防止対策」
「……価値が無い物なら売り渡しても良くないですか?」
「たぶんこの世界の住人が使い道を解ってないだけのヤバイ物質とかも有る……と言う意味だと思います。今後入り用に成らない保証も無いので、どうでも良い物なら幾らでも盗られて良い……と言うスタンスも何か違う気がしますし」
「……付喪神がセーフティ、ですか」
「星の意思と伝説の武器が知性持ちだとかの根拠として付喪神が概念として有用だからね、だ、そうです」
「……なんでもかんでも付喪神起因とか付喪神特効の能力とか造られたらどうするのですか?」
「ファンタジーのテンプレ種族なんて様々な創作で腐るほどメタられているけど、問題無く使って居る所も有るでしょう?」
「いやメタられて居ようが構わず使うしと言う事が聞きたいのではなく、付喪神への専門メタをされたらどうするのかと言う話ですよ?」
「付喪神の概念が他の奴の説明上便利と言うだけで、全部全く同じ構造です……と言う話ではないですが」
「いや、付喪神を冠する訳ですし……付喪神の専門メタは不味いですよね」
「そもそもスプリンガーさん的には付喪神最強処かメタを張る対象物だから付喪神最強……とかそもそもそう言う主張はしてないですけど」
「根幹メタは不味いのでは?」
「それを言うなら魔力とか霊力とか精神力とか名前はどうでも良いから特殊な力を使えるありとあらゆる特殊なエネルギーの全てを潰すシステムが実装されていないだけ温情ですよ?」
「……そんな事出来るわけ無いですよね?」
「専用の仕様の世界が造れるのに何故造れないと成るのですかね? まあ、いわゆる神域だの領域だの界だの、コストが掛かりすぎてずっとは無理とか言う輩は空間を生成したのでは無く、エネルギーで専用空間を一時的に用意しているだけでしか無く、世界創造からはワンランク落ちますが」
「……そもそもやれないではなく、やらないだけの方もついでにディスってません?」
「能力で空間を用意する、なんていわゆるストレージを用意する能力的な物も含めれば数多の創作物に腐るほど存在して居るレベルの能力では有るかと」
「内容が違うじゃ無いですか。…と言うかそう言う能力が作中ではレア扱いされている奴も結構有りますよ? あくまで創作物は創作物です。現実には無いですよ」
「……そう言う奴等への反論用の手法として、過去の技術革新は○○のお陰とか、ごく一部の奴しか使えない且つ喧伝する事に対して縛りが有るとか、釣りスレが事実だったとか、今まで貴方が知らなかっただけで現実と共存していても可笑しくない理屈が有る物が、リアリティが有るとか言われるのだと思います」
「……反論として現実基準を持ち込む事が話の否定には成らない構築の話、ですか。反論材料を潰してしまえば必ず正しいとは限らないと思うのですが」
「そもそもルクトさんのパワーストーンだって眉唾物扱いされていたとしても一応周知されている物です。捏造を堂々と喧伝しているのでも無ければ多少の効果は元から有るかと」
「ルクト様の能力無しで、ですか? もし効果が無くとも有ると信じ切って居る人には確かにプラシーボ効果的な意味で効果はある程度有るとは思います。信じない奴には効果は無いですが」
「ふふ、いわゆる信じる物は救われるって奴ですね。効果の大きさはともかくとしてプラシーボ効果的な意味で科学的に多少は事実では有る、と」
「はい。故に対象を自己に限定するなら強い信仰は実際に多少なら効果が有ります。劇的には無いですけど、それは科学的にも事実です。神が居るからではなく、自分自身の意思の力ですけどね」
「なら強い信仰によって相手のプラシーボ効果を強制的に引き起こす、とかすれば信者相手には治療も可能かもね。教主様に治療を受けた。だからもう大丈夫だ、……と言うプラシーボ効果を起こせば良いのだし……流石に即座に怪我は治せないだろうけど」
「その理屈で考えるなら、パワーストーンとはプラシーボ効果を起こす上での理由付けの為の物です。プラシーボ効果により意思の力でパワーストーンに効果が有ると信じているなら、効果の程度はともかくとして実際に効果は有るのです。故に信者以外には何ら効果は有りません」
「……本来なら胡散臭いって言う所だろうけど、その理屈だとパワーストーンに特殊な力が宿っている必要は無い形ですしね……」
……まあ、昔の免罪符を人々に買わせて云々とかも免罪符を買った、だから大丈夫だ天国に行ける……と言うプラシーボ効果を自分に掛けられる程信じていたら精神的には大層効果は有ると思います。信者以外の人は買うだけ無駄金ですけどね。
「海原さん、後、ついでに言えば、普通の人には其処まで信じられないので効果は無い……って聞くと、信者は只の手品を信じ込ませているだけでは? って成る気もしますけど」
「パワーストーンに実際に力が有るか無いかはさて置き、自己暗示を補強する為のアイテムに求めすぎるのもどうかと思いますがね」
「効果が有ると思えば有るし、無いと思えば無い。理屈は宗教臭いけど、科学的にも根拠は有る事だものね……さて、話は此処で切り上げるとして、調査に進展が有ったら教えてね。問題が有るようならどうにかするから」
「解りました。そう言う事でお願いします……最後にしますが、付喪神を悪く言って良かったのですか?」
「世論的にはそう言う物だから。……地脈龍様からの恩恵を只の当たり前と勘違いしている人々に取っては」
「……」
「また連絡してね。それじゃあ、今はまたね」
「はい、また連絡します。では」
ネイトさん達と別れ、出勤時間前に一時間だけ自室で寝る事にしました。




