Ⅱー2
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マンションの自室に帰って居た所で隣の部屋に住むネイトさんが訪ねて来ます。極光役者に依って見た目はマーメイドドレスを赤のリボンで飾り付けた感じの服を着た萌黄色の髪で桜色の目をした女性、です。何の用事ですかね?
「あ、海原さん、お帰りなさい。……何か追加で力でも手に入れた?」
「はい、ルクト様にパワーストーンを一つ戴きました」
「感じる気配的にはそれで得た能力は、拡大解釈をしまくれると思います。具体的にどう出来るかと言われると厳しいけど」
「……貴女の方が力ヤバイと思いますが、皮肉か何か?」
「いや嫌味とか皮肉とかじゃ無くて、その能力は異常に化ける気配を感じます。ちゃんと使い熟す為の鍛錬を怠らない事を勧めます」
「……解りました。なら今からどっか行きませんか? 少し今から暇でして」
「あー、じゃあ一緒に遊びに」
と、其処で少し離れた所でからイケメンの男性が少し大声で慌てて止めに入ります。
『ネイト? 仕事まだ終わって無いだろ? 此処には荷物を取りに来ただけだってば』
「……煩いな、スプリンガーさん。大体私が居なくても話が回る様にはしたし、二、三時間くらい別に良いでしょう?」
『……はぁ……頭痛いな。シェリーさんとの打ち合わせとかも控えているから一時間くらいな』
「はーい。じゃあそう言う事で。……じゃあ、海原さん、能力に付いて聞こうか。具体的にアドバイスしてあげますよ」
「……お願いします。じゃあ、部屋にどうぞ」
それでネイトさんを自室に上げ、防音結界が張られた後相談する事にすると……。
「軽く聞いただけでも生命の木の力が理解力や解析力に多少だけ補正……なんて程度で終わる訳ないし、理解や解析出来る対象の定義が通常よりぶっ飛んでそう。何より拡大解釈皆無な性能しか無いなら鑑定系能力にすら劣りますし、メタ視点的にも天使がその程度とか残念過ぎます。通常は理解出来ない事も理解出来るくらいはして貰わないと」
「……少し試してみますね」
普通私が理解出来ない事を理解出来る様にする力、か。今私が理解すべきなのは、私がどうやったら強く成れるか、です。それに能力を行使して。……理解しました。いや、出来てしまった、と言うべきですかね。
「解りました。多少条件や行使方法に工夫が必要な様ですが、技量で説明が付く物を理解しようとしたら即座に全部習得出来ます」
「へぇ、技量で説明出来る物を理解しようとしたら全部習得出来る、か。やっぱりやばかったですね。しかも、資料を見る必要すら無いと言う事は実力さえ追い付く相手なら敵の倒し方とかも全部簡単に理解出来そう。特殊能力を習得する方法とかも理解してみては?零から後付け習得出来る奴は全部習得出来るかも」
「うわ、ありがとうございます。……ぶっ壊れ過ぎますね」
「只、エネルギー量ゴリ押しとかされたらまだ無理でしょう? 格上には普通に処理されると思います」
「エネルギー量ゴリ押し対策、か……能力を行使して……あれ? ……習得出来ませんね……」
「あはは、当然ですよ。エネルギー量の水掛け論解決を目指すには海原さん自身のキャパシティ側が無理でしょうし」
……そう言えばそもそも私は能力に依る交信で得たエネルギーのデメリットを無理矢理抑え付けて居る身です。アンバーの力で抑え付けられる以上のエネルギー量を体内に貯め込むのは現状無理ゲー、と言う所でしょうか。……なら問題無くする為の耐性を付けるには……。ええ……。思わず私は乾いた笑いを挙げてしまいました。
「調べたら何かヤバイ奴でも引っ掛かった?」
「……天使に現状より自分を明け渡せばキャパシティ側の上限を明け渡した分を元に上乗せして貰える、だ、そうで」
「それ、やって居る事は悪魔の間違いですか?」
「いえ、天使を今より自分の身体に定着させる事で、体質改善を行えば良いそうで」
「悪魔の契約みたいに成りそうだし、それはおすすめし無いかな」
「……こんな強能力が何で大当たり扱いじゃ無いのですかね?」
「ん? ああ、ルクトさんにそう言われたの?」
「はい、そんな所です」
「理由としては強い奴の力を手に入れたからって、それを得た奴がフルに出力出来るとは限らないから、だと思うよ。私はルクトさんから力を貰った訳じゃ無いから推測でしかないけどね」
つまり、天使のエネルギーを沢山受け入れられるかの壁、エネルギーを受け入れる事に依るダメージの緩和策の壁、交信する天使の種類の壁、得た力をちゃんと使えるかの壁、……そりゃ成功率も低いですよね。
「海原さん、細かく更にレクチャーしたい所だけど、時間切れ、なので、また今度ね」
「あ、はい。ありがとうございます。それではまた」
それでネイトさんが帰った後、荷物整理をして、これからの事を考えます。……普通知り得ない事を理解する能力、と考えると知識チートとしてはよくある奴な気がするので、差異点を探しますか。普通知り得ない事、知り得ない事……普通有り得ない条件設定を考えて……そうだ。どうせなら現状不可能な事を。私が二次元の推しとイチャラブな性行為をした際に得られる快楽情報に付いて、私は理解する。……そう願った瞬間、私はお見せ出来ない様な状態に成った為、賢者タイムに成った後に後片付けをしました。
『……お主……人に契約でエロ系は止めろと言って置いてこれか?』
『普通私がどうやっても知り得ない情報を知ると言う検証、ですから』
『……とりあえず、説明しておくと、本人と実際にやった訳じゃ無いからな。今回の場合、対象のパーソナルデータを元にエミュレートしたパーソナルデータの個体と性行為をした場合に得られる快楽をシミュレートして理解したと言うだけだし』
『それでも物理的に本来やるのが不可能な相手ですから、ありがたいですね。狂人染みては居ますけど、自慰行為を一度もした事が無い人でも無いと文句を言われる筋合いは無いかと』
『……何だかなぁ』
『物理的に不可能でも可能と言うのはシミュレートとして優秀ですね』
『今回の場合、二次元のキャラのパーソナルデータが有ったから、それを元に手を尽くした結果で、無理矢理再現しただけでしかなく、無理な物は無理だが』
『……能力にも最低限の発動条件は有る、か……伏兵がヤバイ能力ぶっぱなししてくるのを予測不可能とかだとアレですね』
『あくまでも既存情報を元に理解する物なのだから、未来予知は思いっきり領分からして違うが?』
『……うーん、つまり既存情報から推測出来る事は把握出来ても、初出しの伏せ札の事前把握は無理……。……シミュレーターの性能が良くても、そもそも入力されていない変数は考慮されない。過信したら足元を掬われますね……』
『XRの仕事で疑似新規モンスターと戦わされるとかも度々有るだろうし、まあ、鍛錬は気楽に行こう』
『ですね』
私は諸々の準備を終え、翌日、仕事を始める事にしました。