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近くにいて遠い人  作者: HIKARI
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運命の出会い

なだらかな坂が続く道にはずらりと人が歩いていく。

その合間をぬって小さなバイクに乗り駆け上がっていく2人。

「もう始まるね」

彼がそう話した瞬間にドンっと大きな音が鳴り響いた。

彼の腰に回していた手に力が入った。

空には大きな花火があがり、

わぁ!と歓声があがった。


2人で見上げたこの空を私は今でも鮮明に覚えている。

大きな背中に手を回して、

今ここに2人が存在していることを噛み締めていた。

私たちが出会ったのは運命だったのだろうか。

それなら神様、私は彼と生きていきたい。


―2003年春―

一つ歳上の彼との出会いは高校入学式の日だった。

第一希望で入った念願の学校だったが、

友達は出来そうになかった。

駅までの道をとぼとぼ歩いていると、

少し派手な2人組の男子が横を通り過ぎた。

周りには楽しそうに話す学生たちの姿もあった。

なんだか1人取り残されたようで、

明日からの不安が募った。


駅まで歩いていくと、

先程の2人組が楽しそうに話している。

フッと見えた彼の笑った横顔に、

私は見惚れてしまった。

その瞬間、彼もこちらを見て目が合った。

私は目が離せなくなった。

彼は驚いた私に微笑み、じっと見つめ返してきた。

少しして目を逸らすと、

彼は一緒にいた友人になにか話しかけて立ち上がり、

こちらに向かって歩いてくる。

私は心臓が飛び出すのではないかと思うほど、

ドキドキが止まらなくなった。

『え、なに⁈』

心の声が漏れそうだった。


彼は目の前で立ち止まり、

私は下げていた目線を上にあげた。

「一年生?俺も一年!仲良くしてください」

「えっ、あ、あぁ、はい!よろしくお願いします!」

彼はなんとも言えない笑顔で微笑んだ。

そうだった…

私はこの笑顔が大好きだったんだ。

いつも私を包み込んでくれるその笑顔が。

彼と私は番号を交換して、

「また明日ね」と同じ方向の電車に乗り、

彼は残してきた友人の元へ戻り私は1人で席に着いた。

さっきの彼の笑顔を思い出すと、

少しニヤけてしまいそうだったので、

必死に表情を保った。


この時の私たちはお互いが強く惹かれ合うことを知らなかった。

そして、苦しく長い別れが訪れることも知らなかった。

時間を戻すことが出来るなら、

私は今すぐあなたと過ごした日々に戻りたい。

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