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第八十三話 終戦


「ガァァァッッ!!!」


 首を刎ねたはずの陰術の悪魔が、大きな声を上げる。

 リッチとなった陰術の悪魔は不死者アンデッドなので、首を刎ねただけでは死なない。しかし、ダメージを受けない訳ではない。当然、不死者でも体力を0にされたら生きていられない。いや、まあすでに死んではいるのだが…。

 そして今回、特効を持つ剣で首を刎ねた。それで確実に体力を削り切ったはず。それで何故動くのか。


「グガァァッッ!!」


 先ほどまでとは異なり、明らかにそこに理性や知性というものが存在していない。つまり、これはすでに陰術の悪魔ではないということだ。

 恐らくだが、奴の体に入った悪魔の呪い(デモンズカース)だけが生き延びたのだろう。それでもダメージはかなり受けているようで、苦しんでいるのだ。


「消えろ」

「グガッ!」


 悪魔に対して特効を持つ方の剣で、叫び続ける頭を貫く。

 悪魔の呪いもようやく体力が尽きたらしい。一撃で静かになった。

 城内へと戻り、リーラ達の様子を見に行く。

 その道中で彼女達と出会った。どうやら俺が様子を見に行く必要はなかったらしい。自分達だけで片を付けてしまったようだ。

 彼女達もかなり頼もしくなった。出会った当時は、それほど強くもない魔物相手に死闘を繰り広げていたというのに……。


「それでは、私達は他の者達を探しに行ってまいります」

「任せました」

「「「はっ!」」」


 リーラの護衛兼世話役として侍女の一人が残り、それ以外の者達が他の王族や使用人を探しに向かう。その間に俺とリーラは、別の用事を進める必要がある。

 それが今回、俺が途中から考えていた計画。

 リーラを女王として玉座に収める計画だ。彼女は魔物憑きとして城を追い出された。しかし、間違いなく王族の血を持つ存在である。彼女がこの国の王になるのは、可能であった。反乱ではあるが、この国は間違いなく帝国に負ける。つまり、敗戦国となる。

 その責任は国王が取る必要があり、彼女が国王に成り替わるにはタイミングが良い。間違いなく他の貴族達は騒ぐだろうが、それも最初だけだろう。この後の帝国との話し合いを、できるだけ損失を少なくするよう交渉を進める。

 それを見せれば、彼女を国王として認めるに違いない。いや、認めざる追えないだろう。彼女の力で交渉が上手くいくということは、下手に楯突くと自分達がその損失の代わりにされる可能性がでてくるからだ。

 なので相当頭が悪い者でない限りは大丈夫だ。それに頭が悪い者達は害にしかならない。それならば帝国との交渉材料として切った方が、国の役に立つし良いだろう。

 帝国との交渉の場には、俺達も出向くつもりだ。勿論オーレン王国側として。

 元々帝国の後ろ盾を得るために帝国側に付いた。だが、国王を倒すならば話が変わる。リーラがこの国の王になれば、王が仲間ということになる。他の貴族共は兎も角、トップに関しては帝国よりも信用ができる。

 それに何より、帝国と敵対する訳ではない。俺達がオーレン王国とオルレア帝国との懸け橋となるのだ。そうすれば帝国とも王国とも繋がることができる。まさに一石二鳥の計画だった。


「私が王に……認めてもらえるでしょうか?」


 自分が魔物憑きと呼ばれる存在であるからこそ、彼女は国民に認められるかの心配をしているようだ。


「問題ない。国王の首もあるし、これを帝国との交渉材料にすれば良い」


 それならば、国民からしてみれば自分達のために…この国のために王を討った存在となる。ただの反乱ではなく、正当な理由がある戦いとなる。


「それに殆どの王子、王女が死んだだろうからな」


 そう。今回の戦争は、殆どの王子や王女が戦場へと出向いていた。恐らく邪魔な者達を始末するために陰術の悪魔が命令したのだろうが、こちらにとっても好都合だった。今残っているのは、戦場に向かえない程の幼い者達ばかり。

 生き残った王子や王女がいても、彼等は死刑にしてしまえばいい。当然だが、残しておくなんてことはできない。何処かの貴族が反乱の旗頭にする可能性があるからだ。

 戦勝国となる帝国に差し出すというのもありかもしれないな。

 どちらにしろ、これからかなり忙しくなる。

 オルレア帝国へと向かった軍を戻さなければならないし、リーラが女王となった旨を国民に知らせなければならない。

 戴冠式は……流石にやっている暇はないだろう。

 オルレア帝国の軍がこの戦争でどれだけの被害を受けたかは知らない。だが、オーレン王国まで攻め入って来る可能性は大いにある。オルレア帝国は戦争で大きくなった国だからだ。

 そのためオルレア帝国との話し合いの席も、できるだけ早く設ける必要がある。まあ、こちらはすでに手を打っている。

 使者から受け取った俺の手紙を読み、皇帝がどう動いているかにもよるが…。

 早ければ一か月もしない内に話し合いの場を設けることができるだろう。

 そして一番厄介なのが、西方にある国だ。オーレン王国の周辺でも、西方の国はオルレア帝国から遠い。なので、今回の戦争には不参加だった。

 オーレン王国がかなりの規模の戦力を出していることは知っているはず。それで負けたということを知れば、嬉々として攻め入って来る可能性がある。

 オーレン王国の戦力は今、底辺と言っていい所にまで低下しているはずだ。軍を戻しても、ある程度国内の戦力が回復するまでは注意する必要がある。

 オーレン王国を守るのに、俺達も力を尽くすつもりではある。この国の王がリーラになるということは、この国は彼女のもの。

 仲間を守るためならば、それこそオルレア帝国が敵に回ったとしても全力で潰す。

 因みにこの計画をリーラに話した際、俺を国王にすると彼女は言い出した。俺には王族の血が流れていないとはいえ、今回は反乱という形で国を取る。なので、正直に言ってしまえば誰が国王になっても問題はないのだ。その後の面倒事の大きさが変わるということを除けば…。

 だが、俺は王には向かない。

 俺は他人のことはどうでもいいと思っている。仲間さえ、大事な者達だけ守れればそれでいいと。

 王は百を助けるために、一を犠牲にする判断が必要となる。しかし俺はその百を助けるよりも、仲間一人のためならば百を犠牲にする判断を下す。

 だから俺は王にはならない。


「こちらは終わりました」


 書簡に王印を押していたリーラが一息吐く。取り敢えず、各所に事態を伝えるための書簡が用意できたようだ。

 こうして戦場でだけでなく、オーレン王国内でも慌ただしく事態は動いていった。

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