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第八十話 王国の悪魔達


 城の中へと入るが、やはり誰もいない。

 見張りや門番すらいない状況なので、別にその程度で驚いたりはしない。だが、使用人が一人もいないということには少しばかり驚いた。


「やはりこの城はすでに……」

「リーラ様…」


 リーラが悲しみを含んだ呟きを漏らし、近くの者がその言葉に反応する。


「大丈夫です」


 自身の弱音を聞かれたからか、少し顔を赤くして答える。彼女の様子に無理しているような感じはしない。悲しいのは確かだが、言葉通り本当に大丈夫なのだろう。


「それにしても、他の者達は何処に?」

「すでに……いえ…」


 リーラの後ろで、侍女二人が話し合っている。

 彼女達はリーラと共に城を出た者達だ。当然それまでは、城で侍女として暮らしていた。つまり、この城の他の使用人達とは知り合いだったということだ。

 全員とは言わないが、何人か仲の良い友達等もいたことだろう。気になったことは仕方がない。

 そして彼女達は、途中で言葉を止めたが他の者はすでに全員処分されたと思っているようだ。

 城から追い出す。数人程度ならば問題ないだろうが、何人もいる使用人達を全員追い出せばそれだけで目立つ。シルベーヌがそのような情報を見逃すはずはない。なので、使用人達が追い出されたという訳ではない。

 その考えから内密に処分されたと考えたのだろう。

 生きているのならば、まだこの城にいるのか。そう考えた時、他に確実に生きている者達を思い出す。

 他の…戦争に出ていない王族達だ。

 彼等は他の王子達が戦場へ向かう際に顔を見せている。つまり、その時までは無事だったのだ。その後は見かけなくなったようだが、殺された様子はないとのこと。

 何処かで幽閉されているだけだとすれば、彼等が死なないように世話をしている者達がいるだろう。そこに使用人達が、彼等の世話役として配置されているのではないのと考える。

 これはあくまでも俺の仮説だが、わざわざ他の王族を殺さずにいるのだ。ほとんどこれが正解だろうと思える。


「国王がいるのは?」

「こちらです」


 さっさと終わらせるため、国王の下へと向かう。国王がいるのは自室だろうということで、案内の下まずはそこへと向かっている。

 別に間違いだったとしても、その時は他の場所へ探しに行けばいいだけだ。


「!? 来るぞ!」


 俺の言葉に、即座に反応するリーラ達。全員が武器を手に取り、リーラを守るために男二人が彼女の前に出る。

 流石は高レベル…というよりも、自衛できるようにリリアが鍛えただけはある。彼等の素早い動きは、戦闘慣れしている者達のそれと変わらない。


「「「排除」」」


 ただそう小さく、そして暗く呟いた三人。

 それぞれが手に剣を持ち、床ではなく壁を走って来る。


「くっ! こいつら、人間じゃない!!」


 リーラの前に出て、盾を構えていた男。彼は咄嗟に盾を前に突き出し、敵の剣を辛うじて防ぐ。

 その一撃を受け止め、敵の力強さに驚いているようだ。


「言ってあっただろう。魔物か何かの可能性が高いと」


 俺は冷静にそう言いながら、敵の剣を大剣で防ぐ。かなり一撃が重い。それは明らかに、弟のバンと同等かそれ以上の一撃。

 こいつらも悪魔の呪い(デモンズカース)に憑りつかれた者達だった。それも今回は、バンのような非戦闘者ではない。

 このオーレン王国の兵士である。悪魔の呪いに憑かれた者は皆、能力がかなり向上する。強者であれば強者である程、危険度は跳ね上がる。

 当然だ。スキルをいくつか使える悪魔憑きと何も使えない悪魔憑き、どちらが危険かと言えば、前者の方だと十人いれば十人が答えるだろう。

 ただ身体能力が高いだけの雑に暴れる存在より、身体能力が高く技術もある者の方が強さは跳ね上がるというものだ。

 三人いる内、二人がリーラ達の方へと向かった。

 護衛を務めていた二人が防御重視の職業である聖騎士のため、しっかりと攻撃を防げば問題ない様子だ。

 侍女二人とリーラは戦闘王なので、装備もどちらかと言えば攻撃寄り。集中して狙われると少し危ないかもしれない。

 それでも、聖騎士二人が攻撃を受け、残り三人が攻撃に回ることができる。これならば、二人を倒すことはそれほど難しくないはず。

 こちらも流石にリーラ達の支援を今すぐにすることはできない。相手は俺と互角か、俺よりも身体能力が高い悪魔憑きだ。

 倒すことは難しくないが、急いで倒すとなると話が変わってくる。時間をかけずに倒すならば、かなり攻撃重視の動きとなる。それは当然、自分の防御を捨てるということ。

 回復魔術が使えるため、傷を負いながら相手を倒しても問題ない。問題はないのだが、わざわざそのような危険を負ってまで急ぐ必要もないだろう。治ると言っても、傷を負えば痛いものは痛いのだ。


「先に行ってください!」


 俺が着実にダメージを与えていると、リーラが俺と敵との間に割り込んできた。

 そして俺と交代するかのように、悪魔憑きへと剣を振り下ろす。


「リーラ様!?」

「危険です!」


 侍女二人がその様子を見て、こちらへ駆けて来ようとする。

 護衛二人も敵の攻撃を防ぐだけで手一杯といった様子だが、言葉と侍女の様子で大方の状況は悟ったのだろう。目の前の敵に集中できていない様子だった。


「先にその二人を倒せ!!」


 リーラの大声。それも普段の優しい言葉ではなく、完全に命令する言葉。彼女が王族として、従者達へと強く命令する。


「……かしこまりました」

「……すぐにそちらへ参ります」


 侍女二人はそう言い、二人へ攻撃を開始した。それは猛攻とも呼べる程激しい攻撃。完全に防御を捨て、素早く倒すことだけを考えているもの。

 攻撃は最大の防御。そう言えるほど、敵は甘くない。高レベルとなり、彼女達は身体能力が高い。それでもなお、悪魔憑きとなった相手の方が身体能力は上。

 侍女達の攻撃を防ぎつつも、しっかりと反撃を繰り出せる余裕は残っている。

 それを聖騎士の二人で防いでいるが、前へ前へと出ようとする侍女二人に合わせるのに大変そうだ。


「はぁぁぁっ!!」


 俺がそんな感じで男二人に同情の視線を向けていると、リーラも俺から敵を離すように前へ前へと出る。

 実はこの五人の中で、リーラが一番レベルが高い。

 それに従者と同じでは格好が付かないということで、彼等の希望により彼女には少し良い装備を与えている。それも他の者より彼女が強い要因だ。

 と言っても、それほどレベルの差自体はないのだが…。

 リーラ一人が相手であれば、悪魔憑きを止めることはできなかっただろう。しかし、今回はすでに俺と戦い、かなり手傷を負っている。

 動きが鈍り、彼女一人でも問題なく戦えていた。


「任せるぞ」

「はい!」


 俺に任せられたからか、嬉しそうに答える彼女。

 彼女は追い出されたとはいえ、一応王族なのだが……。俺の露払いみたいなことをして、喜んでいていいのだろうか…。

 そう思いながらも彼女の意思を尊重して、口には出さず先へと進むことにした。

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