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第七十二話 単独行動


 やはり、大群で動けば嫌でも目立つ。

 俺は入り込んでいたオーレン王国の者達を倒した後、先に進んでいたリリア達を追った。

 彼等は歩いて進んでいる。馬を駆れば一気に彼等との距離を縮めることができる。そして現在、彼方先に蠢く人影が見えていた。

 まだ馬を走らせても数時間以上掛かる距離にいるのだが、それでもやはり見える。敵に気付かれることなく奇襲を掛けるならば、やはり少人数の方がいいだろう。蠢く影を見て、改めてそれを確信する。

 オーレン王国から入って来ていた者達は、少人数で動いた後に集まっていた。目立たないように動くのであれば、それも一つの手だろう。しかし、今回みたいに誰かが見つかれば芋蔓式に全員見つかる恐れもある。

 こういったことを考えるのはやはり難しい。俺には指揮官等の才能がないのだろう。


「情報も得られたことだし、さっさと合流するか…」


 これから俺は少し、単独で動こうと思っている。そのためには、皇帝に一つ手紙を出す必要がある。勝手に行動をする分には、それほど問題はない。俺達は雇われている傭兵とは違うからだ。だが、俺が考えていることをするならば、皇帝にも話を通しておく必要がある。

 先を目指す群衆を追って、俺は馬を走らせ続けた。






「よくやってくれた! まさかそれほど侵入してきていたとは」


 リリア達と合流できた俺は、早速騎士団長に報告していた。話すのは賊の処理。彼等が魔王信奉者ということや、すでにオーレン王国は魔物に入り込まれているということは話していない。

 証拠がないということもあるが、今回は国の防衛のために戦場に出て来ている。オーレン王国に攻め込む訳ではないので、関係がない話なのだ。

 証拠があれば、オーレン王国に協力している周辺国を止めることができるのだが…。

 ない物を言っても、仕方のないことだ。


「リリア、ちょっといいか?」


 俺はリリアを呼び、早速考えを伝える。

 俺の話を聞いて、最初は少し渋っていたリリアだったが、最後には納得してくれた。

 後はリリアから、デール達に伝えておいてくれるだろう。

 その間に俺は、皇帝に送る手紙を書く。そこにはオーレン王国の者が、オルレア帝国の領土へ入り込んでいた旨も書き記してある。

 というよりも、本来はそちらの方が手紙で伝える内容なのだ。

 他にも入り込んでいる者がいるかもしれないので、用心してほしい。そのような内容の手紙に、これから俺がしようとしていること、これから皇帝にしてほしいことを書いておく。


「それでは、頼んだぞ」

「はい!」


 騎士団長に選ばれた兵士が馬に乗って駆けて行く。彼は…彼等は乗馬の腕を見込まれて兵士となった者達だ。

 戦場では馬に乗り、騎馬隊として戦ったり、各地へ伝令を送ったりする役割を持つ。なので彼等が使う馬も、かなり足が速くスタミナもある良い馬だ。

 そして俺も、再び馬に乗って先へ進む。騎士団長には馬をまだ借りること、一人で先に行くことの許可を取ってある。

 こうして俺は一人、オーレン王国を目指して先に進んだ。






 一人で進んでいるため、あまり目立つことはない。なので見つかることなく、ライアスラに入り込むことができた。

 再びライアスラまで帰ってくることになるとは…。当然、いつかは再び訪れることになるかもしれないとは思っていた。だがしかし、ここまで早く帰って来るのは予想外だったのだ。


「流石にこれ以上は、見つからないように進むのは無理だろうな」


 戦争前ということもあり、何処もかなり警戒している。戦場となるであろう国境付近には、かなりの数の兵士がすでにいた。彼等は、オルレア帝国の兵士達の動向を監視するために配置されているのだろう。

 そしてその周辺の町では、オーレン王国の本隊とも言える集団も目撃している。 

 色々な町や村に分かれて滞在しているようで、数は騎士団長が率いる集団よりも少なく見えた。だが、見つからないようにするにはかなり遠回りをする必要がある。

 それも人目に付かないようなルートは、逆に今は警戒されて監視がいる。

 俺の取った行動は、ヒローへと向かうことだった。国の中に唯一ダンジョンが存在する街、ヒロー。冒険者が集まり、今でも戦争を気にすることもなく平常運転している街だ。

 ここには元々冒険者が沢山いるため、兵士が滞在しているということはない。

 冒険者ギルドは人間同士の戦争に関与しない。冒険者達は傭兵として参加している者達がいるが、全員有志であり、傭兵として雇ってもらえる金に目が眩んで参加している。これに関しては自由なので、冒険者ギルドも何も言わない。

 今街に残っている冒険者達は、戦争に興味がない者達である。この国がどちらに転ぼうと、自分達は別の国へと向かえばそれで済む話だからだ。

 なので今でも平常運転。

 俺は冒険者登録をしているので、この町にいても何一つおかしなことはない。アリステラ等は俺がこの街を出たことを知っている。しかし、殆どの者は知らないのだ。

 特に訓練校の卒業の証も持っているので、兵士がいてもそれを見せればこの街にいた証明になる。わざわざこの街を出るのに、訓練校へ通う者は少ないからだ。

 そしてヒローから出ている乗合馬車に乗るか、それについて行く。商人の護衛依頼を受けてもいいだろう。これで俺は何一つ怪しまれることなく、ライアスラの中を移動できる。

 後は国境へと向かい、オーレン王国に侵入すればいい。オーレン王国は殆どの戦力を出しているため、そこまで辿り着けば簡単に侵入できるはずだ。


「これは…」


 冒険者ギルドで俺が見つけた依頼は、所謂お遣いと呼ばれる依頼だった。

 今回の依頼は、簡単に言えば荷物運びだ。この街の冒険者は、基本的に街を出たがらない。依頼等で街の外に出たとしても、ヒロー周辺で済む依頼を受ける。

 それだけ冒険者にとって、この街は動き易いのだ。他の町等が動き難いだけということもあるだろうが…。

 ダンジョンが一つしかなく、殆どの冒険者が集まるということは、稼ぎやすい依頼もここに集まる。離れたくないというのも分かる話しだ。

 そして今回依頼で荷物を運ぶ村は、国境からかなり近い場所。つまり、この国の端に存在する村だ。普段から人気のない依頼なのだが、いつもは商人がついでに運んでくれるという。

 だが今は、商人も戦争という稼げる場所が存在する。なので、街にあまり商人が残っていないのだとか…。

 わざわざあまり旨みのない依頼を受けた俺に、受付嬢は不思議そうな、怪訝な表情を浮かべていた。だがいつもの受付嬢が来た後は、普通に接してくれていた。

 俺はこの街の冒険者ギルドの職員達には、少しばかり名が知られている。担当した受付嬢は知らなかったようだが、それでも少し説明すれば分かってもらえたようだ。

 俺は塩漬けの依頼と呼ばれる、誰も受けたがらないマッドウルフの討伐を受けた。そしてその討伐数、さらには冒険者ギルドを騒がせたマッドウルフの大量発生を知らせたこと。これが冒険者ギルドの職員達の間で、かなり噂になっていたのだ。


「それでは、お気をつけて」


 受付嬢に笑顔で見送られる。その表情には、少しばかり期待が混じっていた。もしかすると、また何か発見するのではと思われているのかもしれない。

 だが生憎、今回は依頼を終えた後はオーレン王国へと向かう。この街には、戦争が終わるまでは帰って来ることないだろう。

 依頼に関しては、その村で達成の報酬がもらえる。なんと小さな村にも関わらず、冒険者ギルドが存在するらしいのだ。

 ない訳ではないが、小さな村に冒険者ギルドがあるのはかなり珍しい。

 しかし、そのおかげで往復する必要がないのは有難いことだ。

 俺は乗って来た馬で、そのまま荷物の配達へと向かう。

 予想していたように途中で兵士に止められたが、依頼の紙を見せればそのまま通ることができたのだった。

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