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第六十九話 進展


 俺がデール達から話を聞き終え会議室へと帰ると、すぐに休憩を終えて皇帝達が顔付を変える。どうやら、俺の話が終わるまで待っていてくれたようだ。


「それで、どうだったのだ」

「まずは…」


 俺はデール達から得た情報を彼等へと話す。

 全てを話した訳ではない。

 俺が敢えて話さなかったことは、近衛兵までもが戦争に駆り出されてるということ。そして、オーレン王国の王城には王を守る兵士が三人しかいないということである。

 相手が三人とはいえ、未知の存在。それもわざわざ味方にも存在を隠すような相手だ。何があるか分かったものではない。

 だが当然ながら、それだけ兵士を出しているならばということで、王城が手薄になるはずと指摘した者達がいた。そして彼等は、王の首を取ればいいと言う。

 そう簡単に行くとは思えない。そもそも戦場に出てくるならば兎も角、城の中にいる相手を狙うのは難しい。

 近衛兵がたった三人とはいえ、他にも城で働く者は沢山いる。その者達の目を全て掻い潜りながら王の下まで向かうのは不可能に近い。

 見つかってしまえば、すぐに捕まるだろう。捕まらないように戦力を増やせば、それだけ目立つことになる。そうなれば、隠密などせずに正面から突破する必要が出てくる。

 皇帝もそのようなこと考えていたようだ。考えを述べて彼等の話を流した。俺が城に残る兵士の数を言っていないのも、理由の一つだろうが。

 彼等は少ないとはいえ、流石に三人だけで城を守っているとは思っていないはずなのだから。


「やはり敵の侵攻を止めるしかないか」

「だがどうやって…」


 再びその問題へと戻って来る。

 仕方がない。そろそろ助け舟を出すとしよう。このままでは、いつまで経っても会議が終わりそうにないからな。


「俺達が先陣を切る。そして、敵の部隊を一気に崩す」


 俺がそう発言すると、皆がこちらを見ながら黙り込む。殆どの者達が、何を言っているんだ? という表情を浮かべていた。

 ドンと机を叩く音が、室内に響き渡る。


「ふざけるな! これは戦争だ! 決闘等ではないのだぞ!!」


 宰相がキレた。怒りの表情を浮かべ、こちらへ捲し立ててくる。


「分かっている」

「お前達がいくら強いと言っても、少数で突っ込んで勝てる訳がないだろう!! 戦争を舐め過ぎだ! どうせ戦争を経験したこともないのだろう!」


 確かに俺は戦争を経験したことがない。だがそれでも、集団戦は何度も経験している。ゲームでも、この世界に来てからも。

 数の差を覆すのは、単純に難しい。どれだけ単独で強くとも、一人で一度に倒せる数には限界があるからだ。

 これは魔導士でも同様。魔術は集団戦においてかなり強力な武器になるが、魔力を消費する。そして魔力がなくなれば、回復するまでもう魔術は使えない。

 だから魔導士は魔術部隊のような組織で動く。一人では限界があり、魔力を失った魔導士を失うことになるからだ。


「可能なのか?」

「なっ!? 陛下!」


 俺を見て、そう尋ねてくる皇帝。皇帝のその質問に宰相が驚いているが、彼は俺だけを見ている。


「何か想定外のことが起きない限りはな」

「そうか。だが、戦争では想定外のことは起きるものだぞ?」

「それなら、分からないな」

「ふははっ!」


 俺の返しに、皇帝が突然笑い出す。何が彼の琴線に触れたのだろうか?

 俺には全く分からない。


「そうかそうか。それならば、セイン達に任せても良いか?」

「任せておけ」


 元々俺達は、この戦争を手伝うつもりでこの国に来たのだ。本来の目的は大きな後ろ盾を得ること。この国が壊滅してしまうのは、俺にとっても不都合である。


「ただ、戦争に勝つためには俺達だけの力では無理だ」


 流石に戦場の兵士を全て倒すこと等できない。俺達が全員で一箇所を担当すれば可能かもしれないが…。

 兎に角、敵を崩した後は彼等に頑張ってもらう必要がある。


「それは分かっているさ。その辺りのことは頼むよ」

「はっ!」


 皇帝の視線を受け、騎士団長が声を上げる。


「北、西、南の何処へ仲間の誰を配置するかは、こちらで決めても問題ないな?」

「ああ。そこは構わないよ。仲間の力は、セインが一番よく知っているだろうからね」


 許可は取った。これで俺達は背後にオルレア帝国の兵士を擁しつつ、自由に動くことができる。彼も兵士達をバランス良く配置してくれることだろう。

 会議は一度そこでお開きとなった。

 何時間も同じ問題を考えていたのだ。それが解決したので、他の細かな話は次回へと持ち越されることとなった。

 俺はその後の会議には参加しない。別に呼ばれていない訳ではないが、出る必要がないからだ。

 ここから先、俺達は先陣としてどう動くのかを考える。

 皇帝達は、その後にどう戦うのかを考える。

 それぞれの役割ができたため、最後に話をすり合わせるだけでいい。

 それに彼等にとっても、先陣を切るのが俺達なのは丁度いいはず。彼等は俺が作った武器を戦場で使うはず。

 これはある程度の範囲に効果があるため、味方がいる付近には使えない。つまり、先陣が多ければ多い程、使い辛くなる。

 しかし、俺達ならば超少人数。これほど相性が良い者は他にいないだろう。







 会議が終わり、帰ると室内には誰もいなかった。

 リリアとヒーロは剣の特訓だろう。だが、他の者達が誰もいないのは珍しい。

 特にデール達も今はこちらに来ている。いや、来たばかりだから全員で買い物か散策へと向かったのだろうか?

 これから誰が何処へ向かうか話し合おうと思っていたのだが、それは皆が帰って来るまで待つ必要があるな。


「帰ったぞ…て、アタシ達の方が早かったか…」

「セインお兄ちゃん」


 フィンとルゥが帰って来た。彼女達の言葉から、やはり他の者達は何処かへ出掛けているのだろう。そしてこの二人は別行動をしていたと。


「セインお兄ちゃん、沢山狩って来た」


 そう言ってルゥは、持っていた袋を開く。そこには大量の野鳥の死体があった。狩って、血抜きをしただけのようだ。


「突然どうしたんだ?」

「デール達が来たからな。今日は豪華な食事を、とイルが」


 俺の問いに答えたのはフィンだった。なるほど、イルが計画したのか。

 いつもリリアが気を回すから目立たないが、彼女もこういったことに良く気が回る。特にリリアは俺に対してばかり気を回すので、他の者達へのフォローはイルがすることが多い。

 それに何より、彼女はこういったイベント事。食べて飲んでと、騒ぐことが好きなのだ。今回は、ある意味自分のためでもあるかもしれない。


「野鳥はデッドペッパーと合いそうだって言ってました」


 ルゥが一羽の鳥を片手にしながら言う。

 イルはよく分かっている。鳥肉は…いや、他の肉もだが辛い味付けが合う。特に酒を飲むならば、なおさらだろう。


「他の皆は街中で買い物か?」

「そうです。どうせならば、オルレア帝国ならではの食材も使いたいと」


 あまり変な料理ができなければいいのだが…。まあ、その時は俺が料理をしよう。

 鳥肉をデッドペッパーと絡めて焼く程度ならば、簡単だからな。


「帰ったっす」

「セイン、ただいま!」


 丁度イル達も戻って来た。そして、その後ろには…。


「パパ! 今日は御馳走だって!」


 嬉しそうにしているヒーロの姿もある。


「途中で一緒になったもので」


 ヒーロと共にいたであろうリリアが、そう説明してくれた。

 これで全員揃った。配置の話ができる。

 できるのだが…、皆これから宴会だと楽しそうにしている。今その話をする必要はないだろう。

 俺は皆に混じり、宴会の準備を進めるのだった。

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